危険ドラッグ等の乱用薬物に関する分析情報の収集及び危害影響予測のための研究

文献情報

文献番号
201824008A
報告書区分
総括
研究課題名
危険ドラッグ等の乱用薬物に関する分析情報の収集及び危害影響予測のための研究
課題番号
H30-医薬-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
花尻 瑠理(木倉 瑠理)(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 理恵( 国立医薬品食品衛生研究所 生薬部 )
  • 緒方 潤( 国立医薬品食品衛生研究所 生薬部 )
  • 諫田 泰成( 国立医薬品食品衛生研究所 薬理部 )
  • 出水 庸介( 国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部 )
  • 石井 祐次(九州大学 大学院薬学研究院)
  • 森 友久(星薬科大学 薬理学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
8,890,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
指定薬物制度に対応し,具体的な化合物や植物を指定薬物として指定する際に考えられる問題点を科学的に解決し,規制化に必要な評価手法及び科学的データを監視指導・麻薬行政に提供することを目的とする.
研究方法
新規流通危険ドラッグについて,国連等の国際公的機関が発信する海外薬物情報を広く収集するとともに,問題となりうる製品を入手し,新規流通化合物の構造決定及び分析用標品の準備,各種分析データの整備,識別法等を検討した.一方,危険ドラッグの中枢神経系への影響を検討するために,in vitro及びin vivoの新規評価法を検討した.また,危険ドラッグのマウス脳メタボロームに及ぼす影響を解析した.さらに,危険ドラッグ市場に流通する植物製品のDNA分析による基原種同定及び活性成分分析を行った.
結果と考察
危険ドラッグ製品から,新規流通5化合物(トリプタミン系2化合物及びスマートドラッグの構造類似体3化合物)を検出し,各種測定データを取得した.近年,欧米で健康被害が深刻な問題となっているフェンタニル誘導体12化合物の合成を行い,分析用標品として確保した.包括規制が導入され880化合物以上が指定薬物もしくは麻薬として規制されている合成カンナビノイドについて,インドールもしくはインダゾール構造にフルオロペンチル基を有する合成カンナビノイド44化合物に着目し,GC-CI-Q-TOF-MS及びLC-Q-TOF-MSを用いて,マススペクトルによる規制薬物と未規制位置異性体との識別法を開発した.世界的に新規出現数が急増し問題となっているフェンタニル誘導体143化合物を対象として,LC-Q-TOF-MSにイオンモビリティー分離IMSを組み合わせたLC-Q-IMS-TOF-MSにより,化合物の保持時間,プロトン化分子イオン及びフラグメントイオンに,衝突断面積値を加えた化合物ライブラリーを構築して,生体試料中フェンタニル誘導体のスクリーニング法を開発した.1H-qNMR法は標準品不要の定量法として注目されているが,今年度は2種類以上の化合物を含む粉末状危険ドラッグ3製品について, 1H-qNMR法による定量を検討した.
一方,危険ドラッグの中枢作用を科学的に評価することを目的として,新規活性評価法を検討した.マウス小脳スライス標本とパッチクランプ法を用いて,F-Phenibutの中枢作用性を定量評価した結果,F-Phenibutは海外承認医薬品Phenibut の60倍のGABA(B)アゴニスト作用を有することが明らかとなった.ラット大脳皮質神経細胞及びヒトiPS細胞由来神経細胞を用いて,スループット性および再現性の高い多点電極アレイシステムによる危険ドラッグ評価系を検討した.今年度は,ラット大脳皮質神経細胞を用いて陽性対照化合物および陰性対照化合物を暴露して,多点電極アレイシステムによるネットワーク評価を行い,解析パラメーターの検討を行った.また,種差の問題を克服するために,ヒトiPS細胞由来神経細胞の評価に関しても着手した.合成カンナビノイドにより引き起される生体応答のメカニズム理解のために, 前年度までの研究において,メタボローム解析で示唆されたJWH-018による内因性カンナビノイトレベルの上昇について,用量依存的に増加するか検証した.また,国内外で多くの健康被害を引き起こしたMDMB-CHMICAを用いてマウス脳内のメタボロミクス解析を実施した結果,内因性カンナビノイド2-AGの増加と,N-acetyl-aspartateの低下が認められた.マウスを用いた行動薬理試験で,幻覚を誘発する4薬物における感覚上の類似性を検討することにより,幻覚誘発薬の感覚の機序ならびに区分けを試みた.
植物由来危険ドラッグ製品については,DMT含有32製品のDNA分析を実施した結果,29製品からマメ科ソウシジュAcacia confusa のDNAが検出された.本研究において解析したAcacia confusa のDNA塩基配列情報を,新たに国際塩基配列データベースに登録した.また,植物由来危険ドラッグ34製品に含有されるDMT,NMT及び5-MeO-DMTの定量分析を行ったところ,近年,国内への流入が急増しているAcacia confusa製品には相当量のDMT及びNMTが含まれており,乱用時の健康被害が危惧された.
結論
指定薬物総数は平成31年3月末時点で2376となった.本研究成果の一部は,平成30年度に5回実施された指定薬物指定の根拠資料の一部として用いらた.また,分析データは監視指導・麻薬対策課長通知として発出されるとともに,国立衛研違法ドラッグ閲覧システムに登録され公開された.本研究結果は危険ドラッグの規制化に有用な情報を提供し,国の監視指導行政に直接貢献するものである.

公開日・更新日

公開日
2019-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201824008Z