ワクチン等の品質確保を目的とした新たな国家検定システムの構築のための研究

文献情報

文献番号
201824007A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチン等の品質確保を目的とした新たな国家検定システムの構築のための研究
課題番号
H30-医薬-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
脇田 隆字(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 高橋 宜聖(国立感染症研究所 免疫部)
  • 石井 孝司(国立感染症研究所 品質保証・管理部)
  • 花木 賢一(国立感染症研究所 動物管理室)
  • 板村 繁之(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 染谷 雄一(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 森 茂太郎(国立感染症研究所 細菌第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国家検定は、ワクチン、血液製剤等の特に注意を要する医薬品に設けられている制度である。この制度は、WHOにおいても各国の規制当局が実施しなければならない必須要件と定めており、ワクチン、血液製剤等の品質確保において重要な役割を担っている。この一方で、ワクチン、血液製剤等の品質は向上しており、品質向上に合わせた柔軟な国家検定制度のあり方の検討は急務となってきている。本研究では、国家検定をより有効な制度に向上させるために必要な調査、研究を行う。
研究方法
本研究では、1)ワクチンの国家検定において既に導入されている製造・試験記録等要約書(SLP)審査制度の血液製剤、抗毒素製剤等への拡大、2)国家検定に用いられている動物実験について、試験精度、再現性等の改善及び動物愛護の観点からの3Rs対応、3)ワクチン等の品質に係るリスクを客観的に評価し、品質リスクに応じて試験頻度及び試験項目を変更可能な国家検定の仕組みの提案、を主として検討した。
結果と考察
1)血液製剤については、血液製剤の連産製造を考慮して血液製剤に特化したSLP作成指針を作成した。また、血漿分画製剤メーカーと協力してSLP基本様式案を定め、ロット数の多いグロブリン製剤である優先7品目について、製造販売承認書の内容を精読して各SLP様式案の作成を行い、SLP審査の試行に向けて準備を行った。抗毒素製剤についても、はぶウマ抗毒素、まむしウマ抗毒素の国家検定におけるSLP審査の導入を検討した。2)動物実験については、苦痛の軽減に関する事項について、人道的エンドポイントの設定と炭酸ガスによる安楽死法の改良について文献調査に基づき検討を行った。また、狂犬病ワクチン、B型肝炎ワクチン、セービン株由来不活化ポリオワクチン、破傷風トキソイドの力価試験について、実験動物を用いて評価するin vivo試験から抗原量を測定するin vitro試験等への移行のための検討を進めた。インフルエンザHAワクチンの力価試験では、その再現性について解析を行い、現在力価試験として実施されている一元放射免疫拡散試験は、事前に充分な試験条件の検討や測定基準を確立すると、かなり再現性の良い試験法であることが分かった。3)ワクチンのリスク評価に関しては、各評価項目の重要度による重み付けがより総合的リスクスコアに反映されるよう、各重要度に応じた係数を変更し再解析を行った。総合的リスクスコアは、昨年度までのリスク評価と同様に相対的に低リスクグループと相対的に高リスクグループの二峰性のピークを示すスコア分布となった。また、ワクチンのリスクを総合的に評価するためには、「GMP調査の状況」や「市販後の安全性状況」等を評価に組み入れることが妥当と考えられた。国家検定に要する期間の短縮については、検定実施期間を短縮することは困難であるが、併行検定の申請を柔軟に受け付けることにより、国家検定の質的な低下等を招くことなく、医薬品の製造後、市場への出荷までの期間を短縮し、製品によっては実質的な有効期間が延びると考えられ、有効な解決策の一つであると考えられた。
結論
血液製剤、抗毒素製剤等へのSLP審査制度の導入については、メーカー、行政と協議し、令和元年度中にSLP審査の試行を開始する予定である。SLP審査の導入により、国家検定の試験による品質確認に加えて、製品の製造管理及び品質管理が承認書に従い適切に実施されていることがロット毎に審査され、原材料、製造工程及び工程管理等を含めた総合的な品質確保が可能になることが期待される。一方で国家検定における試験の合格率は極めて高いこと、また国家検定の実施には多くのリソースと時間を要することから、全製品一律の国家検定から製品の品質リスクに応じて試験頻度を可変させる仕組みの導入を検討した。諸外国のリスク評価の実施例を参考にしつつ、ワクチンのSLP審査でこれまでに得られた情報を基に品質リスク評価の試行を行った。国家検定にリスク評価を導入し品質リスクに応じて試験を実施することで、限られたリソースの有効な活用が可能になると考えられた。国家検定に用いられる試験法の改良及び開発については、試験精度及び再現性等を改善し、実験動物に対する3Rs対応を進めた。

公開日・更新日

公開日
2020-07-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-07-08
更新日
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収支報告書

文献番号
201824007Z