地域における包括的な輸血管理体制構築に関する研究

文献情報

文献番号
201824005A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における包括的な輸血管理体制構築に関する研究
課題番号
H29-医薬-一般-010
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
田中 朝志(東京医科大学八王子医療センター 臨床検査医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 奥田 誠(東邦大学医療センター大森病院 輸血部)
  • 藤田 浩(東京都立墨東病院 輸血科)
  • 長井 一浩(長崎大学病院 細胞療法部)
  • 石田 明(埼玉医科大学国際医療センター 輸血・細胞移植科)
  • 北澤 淳一(福島県立医科大学 輸血・移植免疫学)
  • 高梨 一夫(日本赤十字社 血液事業本部 経営企画部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
2,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、小規模施設での輸血療法の実態をふまえ、地域の中核病院および日本赤十字社との連携強化や新たな血液製剤供給体制の検討などを通じて、安全かつ効率的な輸血医療の在り方を総合的に研究し、提言を作成することである。特に、小規模施設での輸血の安全性を高め、かつ適正使用・有効利用を推進するためのグランドデザインの構築を目標としており、小規模施設での輸血の実態調査による改善が必要な事項の抽出、RBC有効期限延長のシミュレーションによる廃棄率削減度の検証、離島でのブラッドローテーションのPilot Study、離島の医療機関見学による情報交換と医療従事者への教育などを通じて地域で望まれる輸血実施体制、供給体制への課題整理を行うものである。
研究方法
今年度は8地域での輸血実態調査と全国規模での在宅輸血の調査を行った。前者では、輸血患者の病態・ADL・Hbトリガ-値、輸血検査、血液製剤の保管・運搬、輸血の実施状況などを調査した。後者では、在宅輸血の実施率、連携医療機関等、血液製剤の管理体制、輸血実施体制、副作用の発生状況などを検討した。RBCの有効期限延長による廃棄率削減についての検討は全国の40病院で実施した。ATRでの血液製剤の保管による品質管理についての検討を行った。長崎県離島でのブラッドロ-テーションは関連医療施設並びに血液センターの協力の下、Pilot Studyを行った。また離島での医療機関視察と医療従事者への輸血講演会を鹿児島県奄美大島で行った。
結果と考察
今年度は全国8地域の輸血実態調査より、患者は80歳台、ADLレベルは様々ながら「寝たきり」が最も多く、基礎疾患(病態)は血液疾患、手術を要する外科系疾患、悪性疾患、透析の順に多かった。血液製剤としては赤血球製剤(RBC)が93%を占め、その保管に血液専用保冷庫を使用していた施設は50%にとどまった。RBC輸血時のトリガー値は7g/dLが最も多く、使用指針に沿った使用法であった。輸血検査では不規則抗体検査の実施率が55%、血液型の検査回数が1回の施設が62%であった。また輸血実施マニュアルの整備率(84%)や使用指針改訂の情報共有実施率(74%)も低かった。在宅輸血実態調査の中間解析では、20床未満の小規模施設の中で在宅輸血の実施率は約12%で、1年間の症例数は5例以下が多く、血液専用保冷庫はほとんど整備されていなかった。中~大規模の40病院で廃棄血削減のための有効期限延長のシミュレーションを行ったところ、廃棄血を50%回避するために必要な有効期限延長日数は3日、90%回避に必要な日数は15日であった。離島の医療機関(三次救急指定)では、血液製剤の搬送が1日1~2便の日中の空路にほぼ限定されることから院内での運用に困難を来しており、血液製剤の有効期限切れや院内採血血液の運用などの問題点が確認された。在宅輸血を想定した血液製剤の保管にactive transport refrigerator(ATR)を用いた検討を行い、通常の血液専用保冷庫と遜色ない検査データが確認された。長崎県の離島ではブラッドローテーションのPilot Studyを開始し、製剤供給の円滑化と廃棄率抑制、並びに再出庫された製剤の適切な使用についての検証を実施している。
結論
輸血実態調査の解析により、高齢の慢性疾患(血液疾患・悪性疾患)患者へのRBC輸血について、輸血検査・血液製剤の運搬、管理・輸血実施体制の向上が重要であることが明らかとなった。診療所での在宅輸血実施率は約1割で、1施設当たりの症例数は少なく、血液専用保冷庫が整備されていない状況が判明してきた。大・中規模病院でのシミュレーションにより、RBCの有効期限延長により、期限切れ廃棄血を大幅に削減できる可能性が示された。離島でのブラッドローテーションは血液製剤の有効利用促進に有効と考えられた。。以上のように地域での輸血医療の実態を把握し、それに見合う新たな管理体制を導入し、さらに関係者の連携を強化することが包括的な輸血管理体制の構築に繋がると期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-01-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-09-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201824005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,700,000円
(2)補助金確定額
3,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 476,305円
人件費・謝金 222,889円
旅費 1,224,770円
その他 780,879円
間接経費 853,000円
合計 3,557,843円

備考

備考
研究分担者の研究実施において、予想よりも消耗品費の支出が少なかったため。

公開日・更新日

公開日
2021-01-06
更新日
-