文献情報
文献番号
201824002A
報告書区分
総括
研究課題名
麻薬・向精神薬、法規制植物等の規制薬物の鑑別等に関する研究
課題番号
H28-医薬-一般-006
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
田中 理恵(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究分担者(所属機関)
- 花尻 瑠理(木倉 瑠理)(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
- 出水 庸介(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
- 長谷川 弘太郎(国立大学法人浜松医科大学医学部・法医学講座)
- 緒方 潤(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
- 小林 典裕(神戸薬科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は,麻薬・向精神薬取締法,覚せい剤取締法,大麻取締法及びあへん法などで厳しく規制される薬物及び植物の効果的な鑑別法を薬物取締行政に提示するために実施する.平成31年3月時点で,医薬品医療機器等法下,指定薬物として規制されている薬物は2376種類となった.また,指定薬物から麻薬に規制強化された薬物は45種類にも及ぶ.これら薬物は,所持・使用が禁止されているが,構造類似体が多く存在し,また,ほとんどの薬物において代謝物情報が未知であるため,特に,生体試料中薬物の鑑別は困難を極めている.そこで,この研究では,主に生体試料中規制薬物及び代謝物の迅速で高感度,かつ選択性の高い鑑別法開発に焦点をあて,新規に開発された質量分析装置等を用いた検討を行う.また乱用される植物について,成分分析及び遺伝子分析による鑑別法の開発を行う.以上,本研究は,法規制薬物及び植物について効果的な鑑別を行うための手法を確立することを目的としている.
研究方法
ヒト毛髪試料中の薬物分析を,超臨界抽出装置と超臨界クロマトグラフを三連四重極質量分析装置に直列に接続した装置,SFE-SFC-MS/MSを用いて検討した.覚せい剤及びその構造異性体のLC-MSによる識別法を検討した.LC-MSによる尿中違法薬物の分析法について検討した.経静脈投与事例でのzolpidem及びその主代謝物の体液・組織試料中の死後体内分布・再分布を調べた.指定薬物から麻薬として規制されたFuranylfentanylの合成を行った.国内在来種の大麻草について,含有する主なカンナビノイドの定量分析をLC-QTOFMSを用いて行なった.大麻草各部位におけるカンナビノイドの局在をDESI-TOF MSイメージングによって調べた.大麻草とちぎしろのカンナビノイド含有量を調べ,大麻濃縮物であるBHOの作成を検討した.大麻についてSTRマーカー12種を用い,隔離栽培集団のアレルパターンを調査した.麻薬原料植物の簡易鑑別法開発を目的として,キノコの幻覚成分であるシロシンに特異的なモノクローナル抗体の産生を試みた.
結果と考察
法規制薬物の鑑別に関する研究では,ヒト毛髪試料中の合成カンナビノイド及び代謝物の分析をSFE-SFC-MS/MSで行ない従来法と比較した結果,両法において測定対象13化合物のうち4化合物が検出され,測定値に大きな違いは認められなかった.また従来法では検出されなかったSulpiride(定型抗精神病薬)も検出された.覚せい剤及びその構造異性体のLC-MSによる識別法の検討では測定対象20化合物のうちBMPEA及びphenpromethamineはマススペクトルから覚醒剤との識別が困難であった.これらは誘導体化で覚醒剤との識別が可能となった.この方法は3種類の異なるLC/MS装置で再現性が確認された.LC-MSによる尿中違法薬物の分析法を検討した結果,THC-COOHはアセトニトリル中で効率よくDansyl誘導体化され,LC-MSの検出感度が向上することがわかった.経静脈投与事例でのzolpidem及びその主代謝物の体液・組織試料中の死後体内分布・再分布をLC-MS/MSで検討した結果,いずれの試料からも極めて高濃度のzolpidemと代謝物が検出された.Furanylfentanylを合成により高純度の標品として得ることができた.
法規制植物の鑑別に関する研究では,大麻草(国内在来種)の各部位・器官に含有されるカンナビノイド類のLC-QTOFMSによるプロファイル分析を行ない,部位による異同を検討した.その結果,THCAが主カンナビノイドとして苞葉に2.300%,花穂に0.637%,葉に0.089—0.155%含まれていることがわかった.大麻草各部位におけるカンナビノイドの局在をDESI-TOF MSイメージングで調べた.その結果,主に花穂,苞葉,葉でTHCAまたはCBDA由来と考えられるイオンの分布が観察された.大麻草(とちぎしろ)のカンナビノイド含有量を調べたところ,THCが検出された.またブタンガスで葉からTHC,CBDを効率良く抽出し,大麻濃縮物であるBHOを作成することが可能であった.一方,大麻についてSTRマーカー12種を用い,隔離栽培集団のアレルパターンを調査した結果,各集団内の類似性が明らかとなり,集団間の差異を明確化できた.マジックマッシュルームの幻覚成分であるシロシンに特異的なモノクローナル抗体の3種が得られた.
法規制植物の鑑別に関する研究では,大麻草(国内在来種)の各部位・器官に含有されるカンナビノイド類のLC-QTOFMSによるプロファイル分析を行ない,部位による異同を検討した.その結果,THCAが主カンナビノイドとして苞葉に2.300%,花穂に0.637%,葉に0.089—0.155%含まれていることがわかった.大麻草各部位におけるカンナビノイドの局在をDESI-TOF MSイメージングで調べた.その結果,主に花穂,苞葉,葉でTHCAまたはCBDA由来と考えられるイオンの分布が観察された.大麻草(とちぎしろ)のカンナビノイド含有量を調べたところ,THCが検出された.またブタンガスで葉からTHC,CBDを効率良く抽出し,大麻濃縮物であるBHOを作成することが可能であった.一方,大麻についてSTRマーカー12種を用い,隔離栽培集団のアレルパターンを調査した結果,各集団内の類似性が明らかとなり,集団間の差異を明確化できた.マジックマッシュルームの幻覚成分であるシロシンに特異的なモノクローナル抗体の3種が得られた.
結論
本研究は,厚生労働省の薬物取締行政に直接貢献する研究であり,国の乱用薬物対策に即したものである.また今後出現しうる新規の乱用薬物の鑑別についても有用であると考えられる.
公開日・更新日
公開日
2019-05-29
更新日
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