保健機能食品に関する専門家と非専門家のリスク認知の差を解消した効果的なリスクコミュニケーション推進を目的とした研究

文献情報

文献番号
201823038A
報告書区分
総括
研究課題名
保健機能食品に関する専門家と非専門家のリスク認知の差を解消した効果的なリスクコミュニケーション推進を目的とした研究
課題番号
H30-食品-若手-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
種村 菜奈枝(慶應義塾大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 景一(和歌山県立医科大学 医学部附属病院)
  • 長 雄一郎(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 中谷 英仁(大阪大学 大学院医学研究科)
  • 小野寺 理恵(札幌医科大学 医学部)
  • 柿崎 真沙子(名古屋市立大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
1,540,000円
研究者交替、所属機関変更
■ 研究分担者(削除) 山本 景一(2018/4/1-2018/6/10) 長 雄一郎(2018/4/1-2018/9/30) 中谷 英仁(2018/4/1-2018/8/31) ■ 研究分担者(追加) 小野寺 理恵(2018/10/1-2019/3/31) 柿崎 真沙子(2018/11/1-2019/3/31)

研究報告書(概要版)

研究目的
専門家と非専門家の効果的なリスクコミュニケーション推進のため、消費者への伝達方法、及びベネフィット情報の質のあり方を提言する。

■ 分担研究1: 誤誘導の解消に向けた検討に関する研究
本年度は、機能性表示食品の届出表示や表示見本等とその科学的根拠に関する実態を調査することを目的とした。

■ 分担研究2: 基盤の違いを補足するための伝達方法の検討に関する研究
ミス・コミュニケーションが生じる原因として、一般消費者と専門家との間における共通基盤の違いがある。この違いを平準化するため、難解語を特定し、平易化することが重要である。しかし、機能性表示食品の一般消費者向け情報に含まれる難解語を特定するための形態素解析用辞書はない。そこで、形態素解析用辞書の作成およびその精度評価を目的とした。
研究方法
■ 分担研究1
本調査開始時点(2018年7月)までに消費者庁へ届出された機能性表示食品1,408件のうち旧様式を除いた1,310件の届出資料及び表示見本を調査対象とした。保健の用途ライブラリを作成後、実際と表示可能な最大の保健の用途との間の乖離を「表示乖離割合」を用いて示した。また、調査対象となった届出食品1,310件のうち、各保健の用途で最新年の届出食品120食品を対象に届出表示における言語表現に対する「誤誘導判定」及び表示見本の「キャッチコピーに関する訴求要素の分析」を保健の用途毎に実施した。

■ 分担研究2
医学または臨床試験用語を収録する10種類の用語集(取得用語数973,895語)を用い、203,095通りの辞書を作成した。その後、機能性表示食品の一般消費者向け情報1,310件からランダムに66件(4.65%)抽出し、作成した全辞書の精度評価を行った(データ取得日2018年7月)。
結果と考察
■ 分担研究1
主な結果として、「f: 血圧のサポート(79.5%)」、「c: 中性脂肪を抑える(75%)」、「d: 血糖値の上昇を抑える(73.4%)」で、表示乖離割合が高かった。この理由として、1)複数の機能を有する同一の機能性関与成分を含む届出食品が存在すること、2) 事業者は商品開発戦略やその目的に応じた機能性の評価を実施する一方で、消費者はそれらに対応したベネフィット情報しか受け取ることが出来ないことが考えられた。最後に、表示見本の「キャッチコピーに関する訴求要素の分析」では、「機能性」や「食べ方」に関するキャッチコピーより「対象」を訴求したものが27.9%とかなり少ない傾向にあった。機能性関与成分が保有する「機能」である効果や届出食品の「食べ方」を消費者が理解して食品選択したとしても、その効果を享受すべき適切な対象集団に属する消費者でなければ期待される効果は得られない。よって、事業者によって開発された機能性関与成分の効果を存分に発揮するためにも、適した対象集団に属する消費者が食することが期待できる環境作りが必要であると考えられた。


■ 分担研究2
再現率が最も高かった「条件1」の形態素解析用辞書(抽出用語数:MeCab 1,725、マニュアル529、精度:適合性 0.283、再現性 0.924、F値 0.434)を用いた場合、F値は最大0.961となると推定された。一般消費者向け情報1,310件を対象に、この形態素解析用辞書を用いて形態素解析器MeCabで難解語3,691語を抽出した。明らかに医学または臨床試験用語である難解語候補とはならない用語が887語(例:が、ます)含まれていた。最終的に、摂取(15,232回)、評価(7,315回)、健康(4,885回)といった用語の他、計541語の難解語が抽出された。
結論
■ 分担研究1
本研究は、機能性表示食品の主にベネフィット情報に関する消費者伝達の現状とその課題を纏めたものである。次年度以降は、今年度の研究課題を通して抽出した課題およびその背景を議論の題材として、消費者および産官学でリスクコミュニケーションを行い、機能性表示食品のベネフィットに関する情報の質や伝達における論点を作成する予定である。


■ 分担研究2
我々は、機能性表示食品の機能性および安全性に関する一般消費者向け情報に含まれる医学または臨床試験用語を抽出するための新たな形態解析用辞書を作成した。今後、食のリスクコミュニケーション推進のための試みや臨床現場等での利活用に向け、本研究で作成した形態素解析用辞書の実証研究の実施が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2020-01-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-01-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201823038Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,000,000円
(2)補助金確定額
2,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 231,760円
人件費・謝金 657,430円
旅費 98,680円
その他 552,130円
間接経費 460,000円
合計 2,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-10-02
更新日
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