安全な高吸収化機能性食品の開発支援を目指した、 安全性評価のための指標の抽出と標準化に向けた研究

文献情報

文献番号
201823036A
報告書区分
総括
研究課題名
安全な高吸収化機能性食品の開発支援を目指した、 安全性評価のための指標の抽出と標準化に向けた研究
課題番号
H30-食品-若手-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
長野 一也(大阪大学大学院 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
4,620,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、機能性食品の中でも、リスクに直結する可能性がある「吸収性を改善(曝露量が増加)した機能性食品」に着目し、独自の「物性-動態-毒性の連関解析手法」を適用することで、安全な高吸収化機能性食品を開発する際の指標(動態学的因子など)の抽出を目的とする。具体的には、独自処方の高吸収性非晶質クルクミンを開発する中で、吸収特性(水溶性/消失速度など)の異なる製剤を多数有しているため、それらの物性と動態、毒性を比較することで、高吸収化製剤の安全性を評価するうえでの指標を抽出し、開発する際の安全性評価の標準化・ガイドライン策定に資する知見の収集が期待される。
研究方法
分子間相互作用については、1H-NMRとIRにより評価した。製剤の安定性については、加速試験により評価した。動態学パラメーターは、コンパートメントモデル解析により算出した。組織分布の解析では、クルクミンを3ヶ月間自由飲水させて評価した。体重や臓器重量の変動では、28日間自由飲水後に評価した。血球成分の変動は、多項目自動血球分析装置:XT-2000iにより解析した。各種生化学マーカーの変動は、生化学自動分析装置:Fuji DRI-CHEM 4000Vにより解析した。
結果と考察
上記の目的を達成するため、初年度は、様々な非晶質体や市販品を比較するため、”物性”の観点から、分子間相互作用と製剤的安定性を解析するための系を構築した。すなわち、製剤の「水溶性」には、「分子間相互作用」が関連し、その品質や特性は、1H-NMR による半値幅やIRスペクトルの波形分離後の結晶性クルクミン(1510 cm-1のピーク)の残存性で評価可能なことが示唆された。また、様々な処方の製剤を加速試験で安定性を評価したところ、PGFEの配合によって固化し、外観の品質低下に繋がったものの、非晶質性には影響を与えないことが示唆された。次に、“動態”の観点からは、吸収・分布を解析するための系を構築した。具体的には、静脈内投与後の血中クルクミン濃度のプロファイルから、2コンパートメントモデルにフィッティングできることを明らかとし、吸収過程のみならず、消失過程もより詳細に評価可能となり、様々な処方の動態学的因子を比較するための基盤を構築することができた。また、水溶性の低い市販製剤と水溶性の高い独自処方を活用することで、吸収性に依存した組織分布プロファイルを収集でき、適切に評価できていることが示唆され、様々な処方の組織分布量・組織分布のプロファイルを比較するための基盤を構築することができた。最後に、“毒性”の観点からは、一般毒性を解析するための系を構築することができた。本試験では、非晶質クルクミン製剤を28日間摂取させることで、臓器重量などで、軽微な変動が観察されたものの、主要な臓器や主要な生化学マーカーに大きな影響は認められず、90日間の反復投与試験など、さらに詳細を検証することが示唆された。さらに、製剤的安定性の試験では先んじて、様々な非晶質製剤を比較することで、品質に関わる評価指標を探索することができた。
結論
当該研究では、吸収性や消失速度などの特性が異なる様々な非晶質製剤について、①物性(分子間相互作用/安定性)と②動態(吸収/分布/代謝/排泄)、③毒性(一般/特殊毒性)の観点から比較しつつ、各項目を紐づけて解析することで、高吸収化機能性食品を開発する際の安全性評価指標を抽出することを目的として、本年度は以下の知見を得た。
・ 相互作用:1H-NMRで半値幅を比較する系・IRでクルクミンピークのシフトの程度を比較する系を構築
・ 吸収:Bioavailability/α相とβ相における半減期や消失速度定数を比較する系を構築
・ 分布:各臓器に分布するクルクミン量を経時的に比較する系を構築
・ 一般毒性:反復摂取における臓器重量や生化学マーカーを比較する系を提唱
・ 安定性:加速試験後、試料の外観とハローピーク(X線回折)を比較する系を構築したうえで、PGFEは、非晶質性には影響を与えないものの、固化を促進し、安定性を低下
このように、各項目について解析するための系が構築でき、今後、実際に、様々な非晶質製剤を比較する準備を整えることができた。また、安定性については先んじて、様々な非晶質製剤を比較することで、品質に関わる評価指標を探索でき、対応策を含めた知見の収集を実施予定である。

公開日・更新日

公開日
2019-09-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201823036Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,000,000円
(2)補助金確定額
6,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,404,000円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 216,000円
間接経費 1,380,000円
合計 6,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-10-02
更新日
-