食品由来薬剤耐性菌のサーベイランスのための研究

文献情報

文献番号
201823018A
報告書区分
総括
研究課題名
食品由来薬剤耐性菌のサーベイランスのための研究
課題番号
H30-食品-一般-006
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 治雄(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 四宮博人(愛媛県立衛生環境研究所)
  • 菅井基行(国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター)
  • 大西 真(国立感染症研究所)
  • 朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 川西路子(農水省動物医薬品検査所)
  • 小西 典子(東京都健康安全研究センター)
  • 富田治芳(群馬大学大学院医学系研究科)
  • 浅井鉄夫(岐阜大学大学院連合獣医学研究科)
  • 石井良和(東邦大学医学部微生物・感染症学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
32,569,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
耐性菌の問題は健康危機管理としても重要な国際的課題である。WHOは耐性菌の世界的なコントロールをめざし、Global Action Planを、我が国も2016年にNational Action Planを作成した。“One Health”の観点から耐性菌のサーベイランスの構築を目指すことを掲げている。今まで体系的に集められていない食品由来細菌の耐性データの収集体制の整備とそのデータを取り込める体制を構築することを目的とした。食品由来耐性細菌については全国地方衛生研究所協議会に主な役割を担当してもらい、恒常的にデータの収集をする仕組みを整える方向性を付けることを目的としている。これらの体制により、国内で分離された臨床、食品および家畜由来耐性菌の動向の把握と、相互の比較解析から耐性菌のグローバルな循環を明らかにし、リスク評価および行政対策に供することができるようになるであろう。
研究方法
1)地方衛生研究所ネットワークを使い、ヒト及び食品由来のサルモネラおよび病原大腸菌について、薬剤感受性検査を実施する。我が国のワンヘルス動向調査の年次報告書およびWHO・GLASS への報告にも提供する.
2)牛及び豚の食肉処理施設において、枝肉等のふき取り材料から分離された細菌の分子疫学的解析を行って、交差汚染の状況とその要因を明らかにする。
3) ヒト、家畜、食品から分離された第3世代セファロスポリン系薬耐性を示した大腸菌について、細菌ゲノムの解析、 菌株遺伝型の型別、ResFinderによる薬剤耐性遺伝子の検出、およびPlasmid Finderによる保有プラスミドの型別解析を行い、菌株のメタデータと組み合わせた分子疫学解析を行う。
結果と考察
1)食品由来細菌の薬剤耐性のデータをワンヘルス動向調査の年次報告書に提供した。
2)サルモネラに関しては、2015~2018年に分離された患者由来の40.3%、及び食品由来の89.6%が、18剤中の1剤以上に耐性を示した。ヒト患者由来株のうち食品からも分離された血清型、S. Infantis、S. Schwarzengrund、S. Manhattan株ではヒト患者由来株と食品由来株の耐性傾向に強い類似性があり、食品由来耐性菌とヒト患者由来耐性菌との関連が強く示唆された。
3) 国内・外国産鶏肉から分離された大腸菌の耐性菌出現状況: ESBL/AmpC産生腸内細菌科細菌は、国内産鶏肉62%、輸入鶏肉からの29.1%から検出された。ブラジル産鶏肉1検体からVanA型VRE(E. faecium)株が検出された。国内産鶏肉からのVREの検出は認めなかった。
4)採卵鶏41農場で飼養された若齢鶏及び老齢鶏の鶏糞からESBL/AmpCβラクタマーゼ産生大腸菌がそれぞれ56%、29%検出された。CTX-M-1が40%と最も多く、次いでCMY-2が31%であった。また、食鳥処理段階における交差汚染に関する検討を行った結果、分離株の遺伝特性から、盲腸内容と鶏肉に分布する当該菌は同一のものであることが示された。上記検出状況から当該菌の鶏肉汚染は食鳥処理加工を通じた腸管内容の交差汚染によるものであることが改めて示された。
5) 耐性菌の遺伝学的解析:MiSeqによるWGS解析を実施した大腸菌から、blaCMY-2およびblaCTX-M-2が鶏および犬由来から検出された。 臨床由来株から検出されたプラスミド不和合性 (Inc type) は5種類で、IncFIIが11株、Colが9株、IncFIAが8株、IncFIBが2株、IncQ1が2株から検出された。
結論
家畜(JVRAN)-人(JANIS)の耐性菌の発生動向に加え、地方衛生研究所を中心とした食品由来耐性菌の動向を把握する体制を構築し、JANIS解析ソフト上にて一元的に把握できる体制を確立した。また、食鳥処理場における解体時の交差汚染による食肉への耐性菌伝播状況が遺伝学的にも確認できた。今後は最近問題となっているESBL産生大腸菌の家畜、食品、環境、ヒト株についてWGS分析手法を用いゲノムレベルで解析し、その循環経路を解明し、対策に活かす道を探ることである。

公開日・更新日

公開日
2019-10-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-10-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201823018Z