テトロドトキシンのリスク管理のための研究

文献情報

文献番号
201823017A
報告書区分
総括
研究課題名
テトロドトキシンのリスク管理のための研究
課題番号
H30-食品-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 敏之(国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所 水産物応用開発研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 及川 寛(国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所 水産物応用開発研究センター )
  • 松嶋 良次(国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所 水産物応用開発研究センター)
  • 渡邊 龍一(国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所 水産物応用開発研究センター)
  • 内田 肇(国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所 水産物応用開発研究センター)
  • 大城 直雅(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 北嶋 聡(国立医薬品食品衛生研究所 毒性部)
  • 山下 まり(四津 まり)(東北大学 農学研究科)
  • 此木 敬一(東北大学 農学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
15,302,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
フグの安全性確保については、現行のフグに係る規制の遵守により食中毒の発生を防止している。しかし、基準値についての科学的な妥当性については十分に検証されていない。本研究では、(1)定量NMR法(qNMR)によるフグ毒テトロドトキシン(TTX)やTTX類縁体の正確な定量法を開発し(H30)、(2)正確に定量したTTXを用いて、TTX濃度を合わせた上で、この溶解液と、マウス検定法で使用されるTTXを含むフグ粗毒原液(肝、卵巣、筋肉由来)由来の調整液との急性毒性のハザード(毒力)を、マウス毒性試験(腹腔内投与及び経口毒性)により比較し明らかにする。(H31,32)。(3)TTX類縁体の毒性評価については、qNMRなどで正確に値付けした類縁体を用いて、ナトリウムチャンネル阻害試験などにより、TTXに対する比毒性を評価する(H31)。(4)TTXを対象としたLC/MS/MS法を用いてフグ糠漬けに含まれるTTXやTTX類縁体含量を定量して、わが国のフグに係る規制の妥当性を確認する(H32)。(5)以上の知見に基づき、フグ卵巣の糠漬けなど長期間塩蔵処理することにより人の健康を損なうおそれがないと認められるフグの部位を対象とした10MU/gの基準値の妥当性について検証する(H32)。
研究方法
1.フグ毒TTXのqNMR法の開発と標準毒の調製
 qNMR法の測定条件等について検討し、TTXを正確に定量できる定量法を開発する。そして、開発したqNMR法により、正確な値付けを行う。また、値付けしたTTXの一部は機器分析法の標準物質として保管し、標準物質の保管条件等を検証しながら1年程度の安定性試験を行う。主要なTTX類縁体である11-oxoTTX、4-epiTTX、11-deoxyTTX 、5,6,11-trideoxyTTX、4,9-andydroTTX, 11-norTTX-6(S)-olについてLC/MS/MS法などによる定量法を検討する。
2.フグ毒TTX標準品とフグ粗毒原液の毒力の「マウス毒性試験」(急性)(腹腔内及び経口投与)による比較
 市販品TTXを用いてマウス急性毒性評価(腹腔内及び経口投与)に向けた予備試験を実施する。
3.TTX類縁体の毒性等価係数の検討
 主要なTTX類縁体である11-oxoTTX、4-epiTTX、11-norTTX-6(S)-olについて、ナトリウムチャンネル阻害試験を行うための純品の精製を行う。 TTX類縁体のナトリウムチャンネル阻害活性を評価する方法を検討する。
結果と考察
 TTX標準毒の正確な値付け手法の開発(qNMR法)と分析用標準毒の調製、フグやフグ糠漬けに含まれるTTXとその類縁体含量を測定できる迅速なLC/MS/MS法を開発した。
 TTXの毒性評価試験として、本年度は予備実験としてTTX市販品を用いて動物試験用投与液を調製(溶媒:0.1%酢酸液)し、ddY雄性マウス(4週齢)に腹腔内投与した際の、マウスユニット算出法の検討をおこなった。1.82 MUと予想されたTTXの0.40 μg/mlの投与液を用いて検討した結果、この毒力は1.92 MUと算出され、概ね予想される結果が得られた。また7週齢のマウスを用いて、強制経口投与による用量設定予備実験(0, 100, 300, 500, 700 μg/kg)(各群3匹)を実施した。その結果、500および700 μg/kg投与群では、各3匹全例の死亡が認められた。一方、300μg/kg以下の投与群では死亡例が認められなかった。したがってこの実験結果からは半数致死量(LD50値)は、300以上500未満 μg/kgと考えられた。
 TTX類縁体の毒性を評価するために、11-oxoTTX、4-epiTTX、11-norTTX-6(S)-olをフグやイモリ、および化学反応生成物から高度に精製する方法を確立し、LC-MSやNMRで純度を確認した。さらに、TTX類縁体のナトリウムチャンネル阻害活性を評価する方法を検討し、マウス神経芽細胞腫Neuro 2Aを用いて、電気生理実験装置にて電位依存性ナトリウムチャネルの観測に成功した。
結論
 qNMRによるTTXの正確な濃度決定法を開発するとともに、フグやフグ糠漬けに含まれるTTXとその類縁体含量を測定できる迅速なLC/MS/MS法を開発した。さらにTTX毒性試験に用いる高純度なTTXを調製し、qNMRにより濃度決定した。TTX毒性評価の予備実験として、市販TTXを用いてマウス腹腔内投与毒性や経口毒性を調べた結果、既往の知見と概ね一致した。TTX類縁体を精製するとともに、マウス神経芽細胞腫Neuro 2Aを用いて、電気生理実験装置にて電位依存性ナトリウムチャネルの観測に成功した。

公開日・更新日

公開日
2019-12-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-12-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201823017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,090,000円
(2)補助金確定額
18,090,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,449,058円
人件費・謝金 3,992,407円
旅費 1,523,690円
その他 336,845円
間接経費 2,788,000円
合計 18,090,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-07-03
更新日
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