野生鳥獣由来食肉の安全性の確保とリスク管理のための研究

文献情報

文献番号
201823016A
報告書区分
総括
研究課題名
野生鳥獣由来食肉の安全性の確保とリスク管理のための研究
課題番号
H30-食品-一般-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
高井 伸二(北里大学 獣医学部 獣医衛生学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 前田 健(山口大学 共同獣医学部 獣医微生物学研究室)
  • 壁谷 英則(日本大学 生物資源科学部 獣医公衆衛生学研究室)
  • 杉山 広(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
12,530,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は1)野生鳥獣が保有する病原体の汚染状況に関する課題、2)処理施設における解体処理工程での病原体汚染防止に関する課題、3)食品製造や調理段階における食品リスクの軽減に関する課題について、1)全国で捕獲されたイノシシとシカなどの野生動物における病原体汚染状況を3年間継続的に調査し、最終年度にはリスクプロファイルに取り纏め、2)その間に得られた情報を順次、ジビエと体の病原体汚染リスク軽減措置に適用して、その上で3年目には有効性を実証すると共に、3) 加工調理段階での衛生管理実態の把握と危害工程の抽出(1年目:猪肉、2年目:熟成工程等)並びに複数の加熱調理法を通じた微生物汚染低減効果の検証により適切な調理の在り方を提示する(2~3年目)。その成果として、1)全国規模の病原体保有状況の把握、2)狩猟者、解体処理者のバイオセキュリティの向上、3)カラーアトラスの充実、4)処理施設の衛生管理指針の充実、5)ジビエ肉の加工調理ガイドライン等の提供を可能とする。
研究方法
①野生鳥獣が保有する病原体(細菌・ウイルス)の汚染状況に関する研究【分担:前田 健 他】1)野外調査計画(ウイルス:前田、細菌:安藤他、病理:岡林)全国調査を展開する。2)E型肝炎ウイルスの実験室内解析法の確立(前田)3)狩猟者および鳥獣肉を取扱者の感染症対策:野生鳥獣の血液および寄生マダニ中のヒト病原性リケッチア・コクシエラの保有状況・遺伝子検出および抗体検出(安藤) 
②野生鳥獣が保有する病原体(寄生虫)の汚染状況に関する研究【分担:杉山 広 他】1)野外調査計画 ニホンジカの旋毛虫や住肉胞子虫等の寄生虫の汚染状況について調査する。2)実験室内解析:温度感受性の検討および遺伝子検査法を確立する。
③食品製造や調理段階における食品リスクの軽減に関する研究)【分担:朝倉 宏 他】猪肉加工施設における衛生管理実態に関する知見の集積と、当該食肉における腸管出血性大腸菌及びサルモネラ属菌の加熱調理に伴う挙動を定量評価した。
④ わが国の野生鳥獣肉処理施設で処理された枝肉の拭き取り調査【分担:壁谷 英則 他】野生鳥獣肉処理施設の枝肉について拭き取りを実施し、剥皮・内臓摘出の作業順、剥皮方法、食道結紮、肛門結紮の有無、皮膚洗浄方法、枝肉洗浄方法の別に比較した。
結果と考察
1) E型肝炎ウイルスは国内の多くの県のイノシシに感染している。特に、関東近辺では抗体陽性率が高いことが確認された。しかし、検査空白県もあるので協力者を拡大する必要がある。
2)30kg以下の子イノシシがHEVに感染しているリスクが高いことが再確認された。
3)SFTSウイルスのリスクは西日本だけでなく、患者の発生していない中部地方や関東地方にも存在することが確認された。特に、関東A地域では陽性率が高いことが確認された。
4)狩猟者はHEVやSFTSウイルスだけでなく、アナプラズマ科細菌などを含む人獣共通感染症を引き起こす病原体を野生動物が保有していることを認識し、解体時は手袋の着用は必須である。
5)Hepatozoon apriは本邦の多くのイノシシの筋肉に感染・寄生している可能性がある。 
6)厚労省が野生鳥獣肉の加熱に求める75℃で1分以上と同等とされる65℃・15分で旋毛虫食中毒の病因Trichinella T9幼虫を処理したところ感染性が完全に消失した。
7)本研究で対象としたわが国の野生鳥獣肉処理施設で処理された猪枝肉は、家畜(豚)と比べても同程度の衛生状態であった。
8) 猪肉缶詰製品の製造加工工程を通じた微生物動態を検証し、衛生的な原料肉を確保する重要性と、十分な加熱殺菌工程を経ることで、安全性を確保しうることを示した。
結論
1) 地方自治体の協力の下に、全国調査が展開され、イノシシにおけるE型肝炎ウイルスの抗体陽性率情報の充実が図られた。
2) 狩猟者はHEVやSFTSウイルスだけでなくアナプラズマ科細菌などマダニ媒介感染症にも注意が必要である。
3) Hepatozoon apriは本邦の多くのイノシシに感染している可能性がある。 
4) 2018年北海道で発生したクマ肉集団食中毒事例の原因を旋毛虫Trichinella spiralis の近縁種Trichinella T9であると明らかにした。
5) 野生鳥獣肉処理施設で処理された猪枝肉は適切な処理が実施されいることを確認した。
6) 野生鳥獣由来食肉の製造加工工程並びに適切な加熱調理条件の妥当性推定法を検証し、安全性を確保しうる具体的な条件を例示した。

公開日・更新日

公開日
2019-10-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-10-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201823016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 10,712,816円
人件費・謝金 347,100円
旅費 793,502円
その他 676,595円
間接経費 2,470,000円
合計 15,000,013円

備考

備考
利息分の13円が差異として発生した。

公開日・更新日

公開日
2021-10-13
更新日
-