既存添加物の品質確保のための評価手法に関する研究

文献情報

文献番号
201823012A
報告書区分
総括
研究課題名
既存添加物の品質確保のための評価手法に関する研究
課題番号
H29-食品-一般-007
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
杉本 直樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 増本 直子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部 )
  • 天倉 吉章(松山大学 薬学部)
  • 井之上 浩一(立命館大学 薬学部)
  • 永津 明人(金城学院大学 薬学部)
  • 大槻 崇(日本大学 生物資源科学部 )
  • 出水 庸介(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
9,380,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存添加物365品目(枝番込み382品目,但し,香辛料抽出物を1品目(74基原)とする)の内,第9版食品添加物公定書には217品目の成分規格が収載される.しかし,残り164品目と香辛料抽出物1品目の成分規格が未設定であり,全品目の内,国の成分規格が設定されるものは実質的に未だ半数以下に過ぎない.また,自主規格が設定されている品目についても,検証試験が不十分で信頼性が低い,有効性と有効成分が解明できていないもの等もあり,基原同定及び成分分析等を継続し,更に新しい概念に基づく評価・分析手法の導入を行う以外に,成分規格試験の設定,既存添加物の品質確保は困難な状況にある.このような背景から,本研究は,自主規格等の調査,規格試験に資する評価手法の基礎検討及び応用研究を通じて既存添加物の成分規格に資する情報を収集することを目的としている.
研究方法
成分規格が未設定の品目の規格案作成のため,国内外の規格情報,香辛料抽出物の基原情報,酵素基原の同定法等を検討した.また,含量規格の設定が困難な既存添加物への対応のため,13C-qNMRの手法を検討すると共に,指標成分と同一の若しくは代替物質の定性用又は定量用標品の全合成ルートを検討した.さらに,分析対象の標品を必要としない相対モル感度(RMS)を利用した簡便且つ高精度な新規分析法を開発し,既存添加物の規格試験法への応用を引き続き検討した.
結果と考察
成分規格が未設定の既存添加物の情報(第3者検証,国内外規格,安全性評価等の状況)を調査した.酵素の基原としての微生物について分類学の発達に伴う呼称の変更等への留意点をまとめた.ペプチドを指標とした酵素の基原同定法について検討した.香辛料抽出物74基原について天然香料の基原と比較した他,海外規格の有無を調査した.13C-qNMRの手法開発のため基礎検討を行った.既存添加物カキ色素,ベニバナ黄色素及びチャ抽出物の成分解析を行った.酵素処理ナリンジン,シソを原材料とする既存添加物のRMSを利用した新規分析法を検討した.クミン種子及びフェヌグリークを原材料とした既存添加物の1H-qNMRを用いた定量法を検討した.カロテノイド系色素であるリコペン,クチナシ色素のクロシン及びウコン色素のクルクミンの全合成ルートを検討した.

結論
既存添加物に関する情報を収集した結果,得られた情報量により規格作成の優先順位を検討するべきと考えられた.酵素品目については,基原の呼称変更等への対応及び留意点等を策定していく上で,最新の科学技術による基原同定に関する情報をどのように考慮すべきか引き続き検討する必要があると考えられた.13C-qNMRの基礎的検討の結果,13C-qNMRではS/N比を向上させても 約5 %のばらつきが生じることから精確な絶対定量には困難であったが,類似化合物の混合物から目的成分を単離せずに直接定量が可能であることがわかった.香辛料抽出物74基原の名称から予想される天然香料の和名及び学名の妥当性を検討したところ,半数程度が全く同じ植物種を基原としていることが明らかとなった.前年度・今年度の調査で,基原によっては規格案作成の際に詳細な検討が必要と思われるものが浮き彫りになった.シソ由来のペリルアルデヒドの定量について,ジフェニルスルホンを基準物質としたRMS法を複数の機関で検討し,正確なRMSが算出されれば,分析対象物質の認証標準物質等を必要とせずに,1H-qNMRと同等のHPLCによる定量分析が可能であると考えられた.カキ色素の含有成分を精査した結果,フラボノイドやタンニンに由来するものではなく別の化合物であることが示唆され,更に検討が必要であった.ベニバナ黄色素の主色素成分がサフロミンA及びBであることが確認できた.チャ抽出物におけるカテキン類の含有解析及び定量分析をHPLC-UV-FLにより実施した結果,ガロカテキン, エピガロカテキンガレート, エピカテキン, ガロカテキンガレート,エピカテキンガレート,カテキン及びエピカテキンが定量可能であると考えられた.1H-qNMR 法でトリゴネリンの定量を行うことで,フェヌグリークを原材料する香辛料抽出物の成分規格の策定ができる可能性が示された.酵素処理ナリンジン製品中のナリンジン及び糖転位ナリンジンを対象としたRMS法による定量法を検討した結果,従来法(各測定対象を標品とした絶対検量線法)より得られた含量と有意な差は認められなかった.ただし,どの糖鎖長の糖転位ナリンジンまでを定量対象とするか明確にする必要があると考えられた.カロテノイド系色素であるリコペン,クチナシ果実等に含まれるクロシン,ウコン等に含まれる色素であるクルクミンを対象とした合成ルートを確立した.これらの成果は既存添加物の成分規格設定に応用される予定である.

公開日・更新日

公開日
2019-09-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-09-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201823012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,640,000円
(2)補助金確定額
7,628,000円
差引額 [(1)-(2)]
12,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,331,989円
人件費・謝金 249,600円
旅費 671,035円
その他 1,375,586円
間接経費 0円
合計 7,628,210円

備考

備考
厚生労働科学研究費補助金の規定により1000円単位で返納する必要があり、自己負担金210円の入金処理を行ったため、収入の「(2)補助金確定額」と支出の「合計」に差異がある。

公開日・更新日

公開日
2020-10-02
更新日
-