食品を介する家畜・家禽疾病のリスク管理に関する研究

文献情報

文献番号
201823009A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介する家畜・家禽疾病のリスク管理に関する研究
課題番号
H29-食品-一般-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
堀内 基広(北海道大学 大学院獣医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 新 竜一郎(宮崎大学 医学部)
  • 柴田 宏昭(自治医科医大学 先端医療技術開発センター)
  • 萩原 健一(国立感染症研究所 細胞生化学部)
  • 飛梅 実(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 福田 茂夫(北海道総合研究機構 畜産試験場 基盤研究部)
  • 古岡 秀文(帯広畜産大学 畜産学部)
  • 松浦 裕一(農業食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門)
  • 保富 康宏(医薬基盤健康栄養研究所 霊長類医科学研究センター)
  • 壁谷 英則(日本大学 生物資源科学部)
  • 鎌田 洋一(甲子園大学  栄養学部)
  • 森田 幸雄(東京家政大学 家政学部)
  • 山崎 剛士(北海道大学・ 大学院獣医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
26,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
最近プリオン病の病態の再考を促す知見が集積しているため、プリオン病のリスク管理に資するさらなる知見が必要である。L-BSEは経口ルートでサルに感染するので、食品を介してヒトに感染するリスクがあるが、H-BSEのヒトへの伝達性は明らかでない。また、非定型BSEのみならず、プリオンが異種動物に伝播する過程で性状が変化してヒトへの感染性を獲得する可能性を含めて、感染リスクを判断する必要がある。
と畜場における衛生管理システムを科学的に評価する手法は、HACCP効果検証手法としても活用でき、国内のHACCP導入の推進につながる。そこで、欧米のと畜場で導入されている衛生指標菌を用いたHACCP効果検証手法を参考にしつつ、国内の肉牛、豚、ブロイラーのと畜・解体工程における衛生管理を総合的に評価するため衛生管理システム評価手法を作成する。
本研究では、と畜場の衛生管理対策とプリオン病に関する研究を進め、食品を介する家畜・家禽疾病のリスク管理の向上に資する知見を得ることを目的とする。
研究方法
1)RT-QuIC法の結果からH-およびL-BSEプリオンの感染価を推定する標準曲線を作製し、H-, L-BSE感染牛の各種組織におけるプリオン感染価を定量化した。
2)H-BSEを脳内または経口接種したカニクイザルの経過観察、高次脳機能試験を実施した。また、L-BSE経口摂取カニクイザルのPrPScの体内分布を調べた。
3)平成29年度の本研究の成果から、「と畜場・食鳥処理場HACCPシステムの妥当性検証試験プロトコール(案)」を作成し、これを上記施設で実施し結果を検証した。
4)牛、豚、および鶏の枝肉を使用し、拭取法は「枝肉の微生物検査実施要領(平成26年度)」(厚生労働省)に従い実施した。
結果と考察
1)H-BSE実験接種牛の末梢神経では、背根神経節で延髄の1/10から1/100程度の感染価、座骨神経や腕神経では延髄の1/1,000,から1/10,000程度の感染価があると推定された。H-BSE感染牛の骨格筋では咬筋から延髄の1/100,000程度のプリオンが検出された。他の組織では、H-BSE, L-BSE感染牛ともに空腸でRT-QuIC陽性となり、プリオンの存在が示唆された。H-BSE感染牛では延髄の1/100,000程度、L-BSE感染牛では1/1,000程度と推定された。L-BSE感染牛の副腎では延髄の1/1,000程度のプリオンの存在が推定された。

2)H-BSEウシ脳乳剤脳内接種ザル2頭は、接種後3年5ヶ月を経過したが、体重は順調に増加しており、運動障害、異常行動は認められず、神経および精神症状共に見られなかった。また、接種後3年4ヶ月に麻酔下で皮質脳波を測定したが、異常脳波は見られなかった。経口投与ザルも接種後3年5ヶ月を経過したが、運動障害、異常行動は認められず、神経および精神症状も共に認められていない。

3)作成した、と畜場・食鳥処理場HACCPシステムの妥当性検証試験プロトコールは実用可能であるが、下記の問題点を反映させた改善が必要であると思われた。(1)塩素中和剤の使用方法の説明、(2)各指標細菌毎の希釈倍率の設定、(3)結果報告書式の改善、(4)拭取法による採材の作業者による個人差、(5)内部検証における各施設の状況に応じた実施、(6)実施時期の検討(鶏施設では、鳥インフルエンザ流行期

4)拭取法で採取した検体に比べ、切除法により採取した検体の方が、ウシおよびブタでは一般細菌数、ニワトリでは一般生菌数、腸内細菌科菌群、大腸菌群数について高値を示し、定量的評価の精度を高めるためには、切除法による採材が好ましいと考えられた。
結論
・本研究で得られた定量的なプリオンの体内分布に関するデーターは、非定型BSEのヒトおよび動物への感染リスクを評価する上で重要な科学知見となる。
・H-BSEはL-BSEと比較して霊長類へ伝播はしにくい可能性が示唆された。
・本研究で施行したと畜場・食鳥処理場HACCPシステムの妥当性検証試験プロトコールは、改善点への対応をすることで実用できると思われる。
・プロトコールでは、採材者によるばらつきを低減し定量的評価の精度を高めるため、切除法による採材が好ましいと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2019-12-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201823009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,500,000円
(2)補助金確定額
17,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 10,373,329円
人件費・謝金 2,953,190円
旅費 1,608,110円
その他 565,371円
間接経費 2,000,000円
合計 17,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-10-02
更新日
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