食品中残留農薬等の分析法に関する研究

文献情報

文献番号
201823002A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中残留農薬等の分析法に関する研究
課題番号
H28-食品-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
根本 了(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
研究分担者(所属機関)
  • 坂井 隆敏(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
  • 志田 静夏(齊藤 静夏)(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
  • 菊地 博之(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品中に残留する農薬等の分析法開発に資する以下の5課題について実施する。30年度は課題2、課題4及び課題5について実施した。
課題1:欧米等における残留農薬等の公定試験法の開発手法の調査(28~29年度実施)
欧米等の残留農薬等の分析法開発の方針及び評価基準等について調査し、技術的な観点から、日本の試験法開発への適用の必要性などについてまとめる。
課題2:食品中アミノグリコシド系抗生物質分析法の開発
極めて極性が高いため分析が困難なアミノグリコシド系抗生物質の畜水産物を対象とした、簡易・迅速、高精度かつ高感度な分析法を開発する。
課題3:試料調製方法の検討(28年度実施)
試料量を減らす事により分析時間の短縮が期待できる事から、試料量と分析値のばらつきの関係を求め、精確な分析値を得るのに必要な最小試料量を明らかにする事を目的とした。
課題4:スクリーニング分析法のガイドライン策定のための基礎的検討(29~30年度実施)
スクリーニング分析法のガイドラインを作成するため、海外のガイドラインについて調査するとともに、偽陰性・偽陽性が少ないスクリーニング分析法とするための要件について分析データを基に明らかにし、スクリーニング分析法の性能評価方法及び性能基準を確立する。
課題5:抗生物質の系統的分析法に関する評価研究
食品中の残留抗生物質の試験は、バイオアッセイ法からLC-MS/MS法等の機器分析への移行が進んでいるが、低コストで簡便であるなどの理由から、バイオアッセイ法が現在も汎用されている。そこで、バイオアッセイ法及びLC-MS/MS法の特性を踏まえ、効率的かつ国際的な整合性を考慮した抗生物質の試験体系・試験法を提案する。
研究方法
課題2:カートリッジカラムを用いた精製方法を改良した後、これまでに検討した抽出法と精製法を組み合わせて分析法を構築し、畜産物を用いた添加回収試験により構築した分析法の適用性を評価した。
課題4:EUの残留動物用医薬品のスクリーニング分析法の性能評価に関するガイドラインCRLs 2010を参考に、スクリーニング分析の性能評価方法をまとめた。また、27年度に行ったLC-TOF-MSを用いた動物用医薬品一斉分析法の妥当性評価試験データを用いて、策定した性能評価方法への分析データの適用検討を行った。
課題5:簡易検査法の高感度化について、残留基準値を超過する最低濃度の抗生物質を添加した牛の筋肉を検体として、抽出液の濃度及び試験菌を変更して検討した。
結果と考察
課題2:ギ酸アンモニウムを添加して2 mol/L塩酸及びメタノール(1:1)混液で抽出し、弱酸性陽イオン交換カートリッジカラムで精製する方法を構築した。構築した分析法を用いて畜産物を対象に添加回収試験を実施した結果、一部の食品と化合物の組み合わせでは良好な真度が得られなかったものの、概ね50%以上の真度が得られ、併行精度は良好であった。
課題4:分析データをCRLs 2010に示されている性能評価方法へ適用して検討し、評価指標に標準溶液に対するピーク面積比を用い、偽陰性率1%未満及び偽陽性率5%未満となるカットオフ値を設定するなどの変更をした上で、スクリーニング分析法の性能評価方法及び性能要件を提案した。
課題5: 2倍濃い抽出液を用いても現行の簡易試験法の検査結果とほぼ同様の結果であった。また、米国の公定法で使用されている試験菌に変更して検討した結果、多くの化合物で阻止円は形成されなかったことから、当該試験菌を用いる際には、培地のpHが結果に大きな影響を与えると考えられた。
結論
課題2:構築した分析法は畜産物中のアミノグリコシド系抗生物質のスクリーニング分析法として有用であり、本法の実施により残留が疑われる場合には、精製法を工夫することにより効率的な畜産食品中アミノグリコシド系抗生物質の分析が可能と考えられた。
課題4:CRLs 2010を参考にして、残留濃度が基準値の1/2以上の試料を「陽性」と判定(偽陰性率1%未満及び偽陽性率5%未満)できるように性能評価方法及び性能要件を設定した。本法によって評価した分析法でスクリーニング分析を行い、基準値超過の疑いがある検体のみ、精確に定量可能な分析法で確定試験を行えば、検査の迅速化・効率化を図ることができると考えられた。
課題5:簡易検査法の高感度化について検討(抽出液の濃度、試験菌)したが、良好な結果は得られなかった。簡易検査法の高感度化には、抽出方法、精製方法等を含めて大幅な見直しが必要と考えられた。簡易検査法をスクリーニング検査法として用いる場合には、抗生物質の検出感度等の確認を十分に行った上で、運用すべきであると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2019-12-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-12-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201823002B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中残留農薬等の分析法に関する研究
課題番号
H28-食品-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
根本 了(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
研究分担者(所属機関)
  • 坂井 隆敏(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
  • 志田 静夏(齊藤 静夏)(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
  • 菊地 博之(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品中に残留する農薬等の分析法開発に資する以下の5課題について実施した。
課題1:欧米等における残留農薬等の公定試験法の開発手法の調査(28~29年度実施)
欧米等の残留農薬等の分析法開発の方針及び評価基準等について調査し、技術的な観点から、日本の試験法開発への適用の必要性などについてまとめる。
課題2:食品中アミノグリコシド系抗生物質分析法の開発
極めて極性が高いため分析が困難なアミノグリコシド系抗生物質の畜水産物を対象とした、簡易・迅速、高精度かつ高感度な分析法を開発する。
課題3:試料調製方法の検討(28年度実施)
試料量を減らす事により分析時間の短縮が期待できる事から、試料量と分析値のばらつきの関係を求め、精確な分析値を得るのに必要な最小試料量を明らかにする。
課題4:スクリーニング分析法のガイドライン策定のための基礎的検討(29~30年度実施)
欧米等の食品中残留農薬等のスクリーニング分析法のガイドラインについて調査するとともに、偽陰性・偽陽性が少ないスクリーニング分析法の性能評価方法及び性能基準を確立する。
課題5:抗生物質の系統的分析法に関する評価研究
食品中残留抗生物質の試験ではバイオアッセイ法が汎用されているが、バイオアッセイ法の特性を踏まえ、効率的かつ国際的な整合性を考慮した抗生物質の試験体系・試験法を提案する。
研究方法
課題1:残留農薬等の分析法開発に関する欧米等のガイドライン等について調査し、分析法の開発方針及び評価基準についてまとめた。
課題2:誘導体化等を必要としないLC-MS/MS測定法を検討した後、効率的な抽出法及び精製法について検討して分析法を構築し、畜産物の残留分析法としての適用性について検討した。
課題3:常温磨砕又は凍結粉砕により試料を調製して通知のLC/MS一斉試験法Ⅰ(農産物)で分析し、試料量と分析値のばらつきとの関係を求めた。
課題4:欧米等のスクリーニング分析法のガイドラインについて調査しまとめた。LC-TOF-MSを用いた一斉分析法のデータを用いて、スクリーニング分析法の性能評価方法を検討した。
課題5:欧米等のバイオアッセイ法の実施状況を調査した。牛の筋肉等を用いて我が国のバイオアッセイ法である簡易検査法とLC-MS/MS法を比較するとともに簡易検査法の高感度化について検討した。
結果と考察
課題1:抽出効率(抽出法)が残留濃度を求めるうえで最も重要な要素であり、欧米等で示されている抽出法に関するガイドラインを中心に分析法開発の方針を整理した。分析法の評価パラメータは各国・機関で概ね同じであるが、目標値については異なる場合があった。
課題2:ギ酸アンモニウムを添加して塩酸及びメタノール混液で抽出し、弱酸性陽イオン交換カラムで精製し、LC-MS/MSで定量する方法を構築した。構築した方法は、一部の食品と化合物の組み合わせを除き真度は概ね50%以上であり、併行精度は良好であった。
課題3:①試料調製方法によっては試料の均質性は大きく異なること、②均質化が比較的困難な食品では、試料量を5 g以下とすると分析値のばらつきが大きくなる場合があることが示された。
課題4: EUの性能評価方法を参考にして、標準溶液に対するピーク面積比を用いて評価し、偽陰性率1%未満及び偽陽性率5%未満となるカットオフ値を設定した性能評価方法を提案した。
課題5:バイオアッセイ法は米国等においてもスクリーニング法として用いられていたが、LC-MS/MS法との比較から簡易検査法では多くの抗生物質で偽陰性となる可能性が極めて高いことが示された。
結論
課題1:残留分析法開発では、抽出効率が重要な要素である。検査機関等において抽出法を変更する場合には、添加回収試験が最も採用可能な方法であるが、添加回収試験は実際の抽出効率を反映しない場合があることに留意し、慎重に行う必要がある。
課題2:畜産物中のアミノグリコシド系抗生物質分析法として、誘導体化やイオンペア試薬を使用せずにLC-MS/MS測定可能な効率的な分析法を構築した。
課題3:均質化が比較的困難な食品では、試料量を5 g以下とすると分析値のばらつきが大きくなる場合があったことから、試料量(野菜・果実の場合)は10±0.1 gが適切と考えられた。
課題4:残留濃度が基準値の1/2以上の試料を「陽性」と判定(偽陰性率1%未満及び偽陽性率5%未満)できるスクリーニング分析法の性能評価方法及び性能要件を設定した。
課題5:バイオアッセイ法は、マトリックスの影響により誤判定となる可能性や検出感度が低く基準値判定には適用できない等の課題が認められ、簡易検査では多くの抗生物質で偽陰性となる可能性が極めて高いことが示された。今後は、機器分析法の導入も併せて検討する必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2019-12-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-12-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201823002C

収支報告書

文献番号
201823002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,832,327円
人件費・謝金 0円
旅費 542,170円
その他 1,625,503円
間接経費 0円
合計 10,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-10-02
更新日
-