繊維状粒子の自動測定装置の精度の検証及び作業環境における測定手法

文献情報

文献番号
201822013A
報告書区分
総括
研究課題名
繊維状粒子の自動測定装置の精度の検証及び作業環境における測定手法
課題番号
H29-労働-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
小野 真理子(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 作業環境研究グループ)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,930,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、リフラクトリーセラミックファイバー(RCF)エアロゾルを様々な現場において曝露評価するために、繊維状物質自動計測装置や他のリアルタイム測定装置(リアルタイムモニター)を利用する方法を検証する。そのために、繊維状物質のエアロゾルを安定して連続発生して、リアルタイムモニターの応答について情報を得るとともに、実際の現場での応用法を確立するための要素を明らかにすることを目的とする。RCFは有害性が高いため、基本的な実験は有害性の低い繊維状物質を用いて実施する。
研究方法
初年度で確立した繊維状物質エアロゾルの安定発生法を用いて、グラスウールエアロゾルをボルテックスシェーカー法により発生し、粒子状物質測定用のオプティカルセンサー(OPS)やエアロダイナミックパーティクルサイザー(APS)の繊維状物質に対する応答を調べた。また、粒子をフィルター捕集してから走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い、自動的に粒子形状や個数を測定する方法を導入して、機器の応答について考察した。
結果と考察
測定により得られた全粒径での個数濃度ではOPSとAPSでの測定値に大きな差は見られなかった。しかしながら、詳細に粒径を観察し、SEM画像から得られる粒子の形状、投影面積等を考慮して見ると、OPSとAPSの応答には違いがあった。3種の測定法を比較すると、SEM観察から求めた円相当径とAPSで求めた空気力学径にはある程度の一致が見られた。光散乱径では違いが見られたが、その理由については明確ではない。リアルタイムモニターは、繊維状物質自動計測装置と同様に標準粒子を元に校正して装置内のプログラムにより測定値を示す。ユーザーが繊維状物質で校正することは難しいため、現場に持ち込めるサイズのリアルタイムモニターで校正が容易な装置があるならば、RCFの現場測定に使用できるが、更なる検討が必要な可能性が示された。
結論
本研究ではボルテックスシェーカー法を用いて安定した繊維状粒子グラスウールのエアロゾルを発生し、そのエアロゾルを使用して、OPS, APS及びSEM観察による粒径分布を評価した。更なる検証が必要であるが、迅速にSEM画像を評価できれば、繊維状物質をリアルタイムモニターで測定する際の粒子分別を可能にすることができる可能性が示唆された。非定常作業等で使用可能な簡便な曝露測定への可能性も示唆された。また、SEMを用いた自動計数が可能になると、PCMで取りこぼす細い繊維についても十分な計測が可能になり、RCFの製品の歴史の短さから来るばく露情報の少なさを新しい手法でデータを増やすことができる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2019-06-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-06-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201822013B
報告書区分
総合
研究課題名
繊維状粒子の自動測定装置の精度の検証及び作業環境における測定手法
課題番号
H29-労働-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
小野 真理子(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 作業環境研究グループ)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、作業現場においてリフラクトリーセラミックファイバー(RCF)エアロゾルをばく露評価するために、可搬型のリアルタイム粒子測定装置(以下、リアルタイムモニターとする)を利用する方法を検証する。そのために、繊維状物質のエアロゾルを安定して連続発生して、リアルタイムモニターの応答を確認し、実際の現場での応用法を提案することを目的とする。また、RCFの作業環境における測定法は、フィルター捕集した粒子状物質を位相差顕微鏡で計測するのが公定法として提案されているが、走査型電子顕微鏡(SEM)により粒子を観察し、自動計測による迅速な計測法を検討する。実際の実験ではRCFはヒトへの発がんの可能性がある物質であるため、基本的な実験は有害性の低い繊維状物質を用いて実施する。
研究方法
初年度は繊維状物質エアロゾルの安定発生法のプロトコルを、グラスウールを用いて確立することを目的とし、グラスウールエアロゾルをボルテックスシェーカー法で発生する方法を検討した。
第二(最終)年度は長時間連続して発生したエアロゾルについて、2種のリアルタイムモニターを用いて濃度測定を実施した。SEM観察画像から繊維状物質の形状を評価し、応答の違いに対する影響を考察した。
結果と考察
初年度は発生条件を調整することで、一定の粒径分布を示す、一定濃度のエアロゾルを発生できることを確認した。粒径分布はシャープではなかったが、これは製品繊維のサイズ分布に依存して、繊維径や繊維長に分布が見られることが電子顕微鏡観察から明らかであった。安定して発生した粒子の個数濃度は100個/cm3程度であり、モニターの検証時に要求される低濃度にするためには、更に希釈法を検討する必要がある。
また、測定により得られた全粒径での個数濃度ではOPSとAPSでの測定値に大きな差は見られなかったが、SEM画像から得られる粒子の形状、投影面積等を考慮して見ると、OPSとAPSの応答には違いが見られた。3種の測定法を比較すると、SEM観察から求めた円相当径とAPSで求めた空気力学径にはある程度の一致が見られた。光散乱径では違いが見られたが、その理由については明確ではない。観察画像からソフトウェア的に繊維を自動計測する方法を検討し、作業環境測定が適さない職場で個人ばく露測定する方法として、SEMを用いた迅速な測定法やリアルタイムモニターが活用できる可能性が示唆された
結論
本研究ではボルテックスシェーカー法を用いて安定した繊維状粒子グラスウールのエアロゾルを発生し、そのエアロゾルを使用して、OPS, APS及びSEM観察による粒径分布を評価した。更なる検証が必要であるが、迅速にSEM画像を評価できれば、繊維状物質をリアルタイムモニターで測定する際の粒子分別を可能にすることができる可能性が示唆された。非定常作業等で使用可能な簡便な曝露測定への可能性も示唆された。また、SEMを用いた自動計数が可能になると、PCMで取りこぼす細い繊維についても十分な計測が可能になり、RCFの製品の歴史の短さから来るばく露情報の少なさを、新しい手法でデータを増やすことができる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2019-06-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201822013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
小さなスケールで繊維状物質エアロゾルの安定発生ができる系を確立し、粒径分布に関する情報を得た。バルクの繊維とエアロゾル粒径分布の関連性や、希釈エアロゾルの調製にさらなる研究が必要である。また、汎用性のある、比較的小型のリアルタイムモニターや走査型電子顕微鏡観察像を用いた自動係数を繊維状物質測定に応用できる可能性が示唆された。
臨床的観点からの成果
該当しない
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2019-06-17
更新日
2023-05-25

収支報告書

文献番号
201822013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,800,000円
(2)補助金確定額
1,932,937円
差引額 [(1)-(2)]
1,867,063円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 697,359円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 365,578円
間接経費 870,000円
合計 1,932,937円

備考

備考
リフラクトリーセラミックファイバーを取り扱う職場、特に非定常作業の現場でのリアルタイム測定装置による実測を目標としていたが、適当な作業場を見つけることができず、消耗品や旅費を使用することができなかった。また、有害性が高いとされているRCFを安全に発生する施設を準備できなかったため、所有しているグラスウールによる検討にとどまったこと、実験補助者を採用できなかったこと、は反省点である。

公開日・更新日

公開日
2020-02-20
更新日
-