これからの地域保健のあり方保健婦の活動に関する研究

文献情報

文献番号
199800703A
報告書区分
総括
研究課題名
これからの地域保健のあり方保健婦の活動に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
湯澤 布矢子(宮城大学看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 北川定謙(埼玉県健康福祉部)
  • 植田悠紀子(国立公衆衛生院公衆衛生看護学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成9年度からの地域保健法全面施行により、市町村は身近なサービスの実施主体としての役割、保健所は専門的・技術的側面から機能強化を図った役割を担って新たな枠組みのもとで地域保健対策が展開されている。また、平成12年度からは介護保険制度が導入されるが、介護保険の目的の一つとして、民間活力の導入を積極的に図ることがあげられているが、公と民の役割分担をし、行政全体をスリム化することが喫急の課題となっている。このような状況の中、地域保健においても、21世紀に向けて地域保健の目指すべき方向性およびあり方について検討することが求められている。
以上をふまえ、本研究は地域保健対策を効果的に進めていく上で主要な役割を果たしている行政に所属する保健婦に焦点をあて、3つの研究組織から以下のことを明らかにした。
①地域保健の公的責任性と保健婦の保健活動の特徴と構成要素
②地域保健の主要な担い手である保健婦の必要数を算定の基礎資料作成のため、介護保険制度導入をふまえ、高齢者の保健ニーズに対応するサービス量と必要保健婦数
③保健所の企画調整機能の評価指標と企画調整部門における保健婦が果たす役割・機能
研究方法
①について:1)地域保健分野における公的セクターの役割や公的な責任についての先行研究の分析と先行研究者との論議により「地域保健における公的責任性」を集約した。2)帰納的アプローチにより、都市部と郡部の保健婦の実践活動4事例を分析し、保健婦の活動の特徴と構成要素を構造化した。
②について:全国市区町村のうち、無作為に抽出した162市区町村を対象として、介護保険制度が導入されたとき、介護認定において自立あるいは要支援と認定される高齢者の実態と必要サービス量等についてアンケート調査を実施した。
③について:全国の保健所の企画調整部門職員に対して、企画調整部門の現状及び望ましい要件等についてアンケート調査を実施した。
結果と考察
①について:地域保健における公的責任性については、以下のように集約された。まず、保健活動との関係では、行政主導の健康づくりではなく、住民主体の健康づくり、つまり、ヘルスプロモーションをどのように推進していくかが課題となる。次に、情報公開との関係では、保健サービスを実施する理由や明確化根拠とそれに対する説明が必要であり、また、このような情報を住民がいつでも見ることができるように情報公開していく必要がある。最後に、介護保険制度との関係では、今まで以上に「予防」が重要となってくる。具体的には、介護保険制度が適応されない虚弱高齢者に対し、どのような保健サービスを提供していくか、いかに寝たきり高齢者の発症を防止するかが課題となる。
保健婦の実践活動事例分析においては、保健活動の構成要素として、住民へのケアと地域全体を視野に入れた地域活動に大別でき、保健活動の展開過程は4つのプロセスが明らかになった。
②について:虚弱高齢者は、要介護状態になりやすく、閉じこもりや寝たきりを予防する活動が最も望まれる対象である。そのためには、閉じこもりや寝たきりを予防する観点から、保健婦等が月1~2回程度、状態観察および閉じこもり等を予防する活動や生活を継続するように奨励・動機づけを行うことと、その活動を行うマンパワーの確保が必要であることが明らかにされた。
③について:都道府県保健所の7割が企画調整部門を設置しているが、政令指定都市、政令市、特別区では4割程度の設置であった。一方、全国で企画調整部門に保健婦を配置していない保健所は2割近くあったが、そこでの主な保健婦の業務は、市町村との連携、情報提供、市町村職員の研修、調査研究などであった。企画調整機能は、保健婦の活動の重要な機能であったため、企画調整部門に保健婦を配置することによって、企画調整機能が発揮されることが明らかにされた。
また、企画調整機能の業務評価を実施した保健所は全国で1割程度であったが、企画調整部門の問題点が明らかになった。さらに、企画調整部門が機能を発揮するにあたっての望ましい要件(9項目)、評価指標となるべき事項(13項目)が抽出することができた。
結論
①について:地域保健の責任性および保健婦の活動方法論について、新たな枠組みが明らかになった。
②について:介護保険制度導入をふまえ、老人保健対策においては、一層予防活動が重要であり、そのために必要なサービス量と必要マンパワーを明らかにするための基礎資料が得られた。
③について:保健所の企画調整部門の現状と問題点を明らかにし、企画調整機能の評価指標を作成したことにより、企画調整部門の体制および機能の評価を行うことができる。

公開日・更新日

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