診療ガイドラインにおける画像検査の推奨度の決定基準についての研究

文献情報

文献番号
201821062A
報告書区分
総括
研究課題名
診療ガイドラインにおける画像検査の推奨度の決定基準についての研究
課題番号
H30-医療-指定-024
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
隈丸 加奈子(順天堂大学 医学部 放射線診断学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 片岡 正子(京都大学・医学研究科)
  • 伊良波 裕子(琉球大学医学部附属 病院・放射線科)
  • 東 美菜子(宮崎大学・医学部)
  • 藤井 進也(鳥取大学医学部・画像 診断治療学分野)
  • 石神 康生(琉球大学医学部附属 病院・放射線科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 治療に関する診療ガイドラインは、システマティックレビューや、益と害のバランスの考慮、患者の視点の取り入れなど、近年その作成手法が徐々に確立しつつある。しかし診断領域、特に画像検査に関しては、多くの診療ガイドラインに登場するにも関わらず、推奨度の決定方法が定まっていない。また、検査機器の普及率や疾病構造によって最適な検査が異なるため、海外のガイドラインの推奨度を直接適用することが困難であることも報告されている(隈丸. H27厚生科研「日本における画像検査利用の適正基準に関する研究」)。現在本邦では、診療ガイドライン間で画像検査の推奨度に乖離がある状況が発生していることに加え、現場における画像検査ガイドラインの定着率も低いことが知られている(Kumamaru KK. Jpn J Radiol 2017)。結果として、画像検査は、その利点が最大化されるような使い方がなされておらず、本邦の豊富にある検査機器が十分活用できているとは言い難い。
 本研究が目指す最終的なゴールは、画像検査の利点欠点を十分把握した上で、画像検査が国民の健康に最も寄与するように適切に推奨度が設定されたガイドラインが広く定着することである。そのゴールに向かって、現在の診療ガイドライン間で、画像検査の推奨度にどの程度乖離が生じているかを調査し、齟齬の要因を抽出することである。その結果を踏まえ、来年度以降、診療ガイドライン内の画像検査の推奨度が統一的なものになるための指針策定を行う。
研究方法
 臓器・領域別に下記の6つの研究グループを置き、個別のテーマについて研究を進めた。
本研究は既に発行されている診療ガイドラインの内容について検討するものであり、人権擁護上の配慮などを含む倫理面の問題は一切含まない。

[1] 乳腺領域
[2] 胸部領域
[3] 脳神経・頭頚部領域
[4] 腹部領域
[5] 骨盤領域(婦人科疾患・泌尿器疾患)
[6] 心血管領域、骨軟部領域

 それぞれの領域において、関連するガイドライン計69から画像検査に関するCQを抽出し、推奨度の齟齬を分析した。
結果と考察
 のべ321のCQが解析対象となり、そのうち7.5%である24個のCQにおいて、画像検査の推奨度に明らかな齟齬が認められた。主要な齟齬要因として下記のものが抽出された。
                                    
1)推奨度決定に際し用いる手法の相違(MIDNS,GRADE etc)
2)CQ(Clinial question)とFQ(Future question)の境界ラインの相違
3)ガイドライン改定時期の相違。特に新たに大きな研究やメタアナリシスが出版された年の前か後か、等
4)PICOのOutcomeの定義が曖昧。「診断に有用か?」という問いで、鑑別(除外)診断や原因検索を含めた「診断」と捉えるか、「確定診断」と捉えるか
5)PICOのInterventionの定義が曖昧。撮影プロトコル、造影剤の投与方法の記載が曖昧で、ガイドライン間で論じている検査手法が異なる
6)PICOのPatientの定義が曖昧。例)膵液瘻の診断にCTは有用か?というCQにおいて、手術後の膵液瘻を指すのか、慢性膵炎の合併症を指すのか
7)PICOのComparisonの定義が曖昧。無検査を対照とするのか、標準検査を対照とするのか
8)コストを考慮する対象者の相違。患者1人1人か、公衆か、あるいは病院経営か(とある診療ガイドラインでは、MRI装置の導入、保守、運用にかかる費用も考慮していた)。また、保険適用外の検査をどう扱うか。
9)検査閾値の設定の相違。どの程度の検査前確率で検査が必要と判断するか
10)検査施行に必要な設備や体制の考え方 (小児麻酔に対するハードルの高さなど)
11)ガイドライン作成に放射線科医が関わっている程度、パブコメの周知度等
12)読影者レベル設定の相違
結論
合計69個の診療ガイドラインを分析したところ、合計321のCQのうち、画像検査の推奨度に明らかな齟齬があるものが24個(7.5%)認めれらた。その主要な原因として12個の要因が抽出された。
来年度はこの分析結果を基に、今後の政策等にどのように反映すべきか、有識者会議等での検討を経た上で指針作りに取り組む。

公開日・更新日

公開日
2020-01-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201821062Z