生活習慣病の一次予防のための地域特性に対応した効果的教育システムの開発

文献情報

文献番号
199800702A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣病の一次予防のための地域特性に対応した効果的教育システムの開発
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 志真子(女子栄養大学)
研究分担者(所属機関)
  • 下光輝一(東京医科大学)
  • 仲眞美子((財)東京都健康推進財団東京都健康づくり推進センター)
  • 松島康(医療法人浦川会勝田病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
栄養・運動・休養の総合的生活習慣病問診システムおよびその結果と連動した視聴覚メディアを活用した中高年者向きの地域密着型教育ソフトより成る効果的健康教育システムを開発することを目的とする。
本システムの特徴は次のとおりである。①健診結果に対応した医学的な根拠のあるシステムとする。②回答率が高く、自己負担の少ない問診システムにより生活習慣の改善優先度を提示する。③地域の特性を活かした生活密着型の情報を視聴覚に訴えて提示する。④以上3項をふまえた上で認知学習理論を取り入れた本人参加型の教育システムとする。
研究方法
生活習慣病予防教育システム開発の全体計画としては、大都市(100名)と中山村地域(三重県宮川村 人口4700名、分担研究者松島が健康管理医)で各年実施する地域住民約600名の健康診査結果の理学的、生化学的情報を活用し各年健康度測定を行う。
初年度に栄養問診の実施と運動問診システムの論理設計と教育システムに必要なマルチメディア情報の収集をおこなう。
2年度に休養問診システムの開発と利用および教育システムのプロトタイプ設計、最終年度に教育システムの完成と利用および効果の測定を行う。
平成10年度 ①現地視察(松島、仲、武藤)当該地域の協力を得て資料および画像データ収集するとともに家庭訪問し対象者の生活実態を把握した。②栄養の問診を実施し、その結果を各人に返送し、事後指導した。 ③運動の問診ならびに検査値と組み合わせた論理設計をおこない問診表を作製して(下光、仲)システムの開発を委託した。④教育システムに必要な画像素材を蓄積した(武藤、地域の食品、料理、外食および地域の食材を用いた料理を調理し撮影してコンピュータに取り込む)。⑤健康度の測定に基づいた健康相談の実施(松島、仲)⑥食生活改善推進員との話し合いおよび住民に対する講演会の実施 ⑦健康度と栄養との関連についての統計的解析(武藤)を行った。
結果と考察
宮川村において今回調査対象となった552例のうち65歳以上は305例(55%)であり、比較的食生活における地域特性を反映しやすい対象が多く選択されたものと考える。
食事の総合評価をランク別に検討した結果、評価が悪くなるに従い乳製品の充足率が落ち菓子アルコールなど嗜好品の摂取量が上昇することから今後の食事指導項目として最も重点をおくべき点と考えられた。大都市においては、男性のアルコール摂取が今後の食事指導項目として最も重点をおくべき点と考えられた。食品群のうち野菜充足率は宮川村、大都市とも低く算出され、増やしたい食品の1位であった。しかし、宮川村において調査後の個人評価を通知した後で再度聞き取り調査を行ったところ、対象者に野菜摂取不足の認識はあまりなく、野菜摂取量の認識と実際の摂取量との間にずれが生じている。今後調査質問内容の検討を含めた、野菜摂取に対する認識の教育と再評価が必要であると考えられた。
大都市に比較し宮川村では塩分量が多かった。減塩に効果的な教育媒体を作成する必要があることが確認された。
検査結果から大都市は肥満と高脂血症が問題であり、宮川村では高血圧が最も問題である。宮川村の男性においては、肥満、高血圧、高尿酸血症、γ-GTP、高動脈硬化指数および高コレステロルについては、食事評価ランクが良い群ほど異常者の出現が遅い年齢となっている。とくに高コレステロルについては、食事評価ランクが1ランク良くなると高コレステロール者の出現が10年遅い年齢となる傾向が見られた。これは、仲、武藤らが大都市の対象者についてすでに報告した結果と同様の結果であり、栄養と生活習慣病との関連の深さが示唆された。女性では高血糖についてのみ上記の傾向がみられた。従って、性別の教育媒体の開発が必要である。
なお、生活・食習慣のアドバイスとして、よく噛むことおよび運動があげられており、運動・休養を加味した総合的問診教育システムの今後の開発の必要性を示唆するものであった。
結論
宮川村および都市部を対象に栄養問診表を用いた調査を行い、健診時に得られた検査値とあわせて食事評価を行った。宮川村では乳製品と嗜好品が、大都市では男性のアルコールが今後の最重点食事指導項目である。また、野菜摂取に対する認識の教育と再評価が必要である。宮川村男性の肥満、高血圧、高尿酸血症、γ-GTP、高動脈硬化指数と高コレステロル、および女性の高血糖は、食事評価ランクが良い群ほど異常者の出現年齢が遅くなっている。栄養と生活習慣病との関連の深さが示唆された。対象者の4分の1が運動が習慣改善の最重点課題であり、運動と休養を加味した総合的問診教育システムの必要性が確認されたので、生活背景をふまえた運動問診票を作製した。

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