外科領域における抜本的なタスクシフティングの手法についての研究

文献情報

文献番号
201821060A
報告書区分
総括
研究課題名
外科領域における抜本的なタスクシフティングの手法についての研究
課題番号
H30-医療-指定-021
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
馬場 秀夫(熊本大学大学院生命科学研究部消化器外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 宮田 裕章(東京大学医学部附属病院)
  • 掛地 吉弘(神戸大学大学院医学研究科外科学講座食道胃腸外科学分野)
  • 益田 宗孝(横浜市立大学医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 働き方改革実行計画 (平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)においては、医師も含めた全労働者に時間外労働等の上限規制を行うこととされ、平成30年通常国会において改正労働基準法が成立した。こうした中、特に、外科医の労働時間は極めて長く、その短縮は急務である一方で、外科医等が手術等の技術を維持、向上させるためには一定の症例数の確保等が必要である。このためには、手術等の外科医等にしかできない業務以外の周術期等の一連の業務等について、包括的なタスク・シフティング等が必要である。本研究においては、平成29年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針 2017」において、医療現場におけるタスク・シフティング(業務の移管)等を推進することとされていることも踏まえ、外科領域における抜本的なタスク・シフティングの手法について研究することで、外科医等の働き方改革を進めることを目的とする。
研究方法
 一般社団法人日本外科学会外科医労働環境改善委員会との連携及びNational Clinical Database(NCD)の登録データを活用することにより、タスクシフト推進に係る全国の医療機関の現状調査を実施する。さらに得られた結果を分析し、必要なタスクシフト推進案について検討する。また、周術期管理における包括指示書についても作成することとする。
結果と考察
 一般社団法人日本外科学会労働環境改善委員会と合同の会議を行い、特定行為を行う看護師(特定看護師)の外科術後病棟管理における研修内容のパッケージ化改定案を作成した。作成案は2018年12月5日に開催された第19回医道審議会保健師助産師看護師分科会看護師特定行為・研修部会で議論され、その後了承された(資料1)。パッケージ化された研修の推進により、外科術後病棟管理に関して現場で必須の手技を効率的に学ぶことができると思われ、特定看護師の増加が期待できる。
 NCDを用いた大規模なアンケート調査では、1,498施設診療科から回答が得られ(回答率:45.5%)、そのうち有効回答は1,459施設診療科であった。既に半数近くの診療科において、医師以外のメディカルスタッフが包括支持のもと実施している薬剤投与やCVポートの穿刺等においては、他の医療機関においても早期にタスクシフティングできる可能性がある。
一方で、ドレーン抜去等の該当する医療行為が必要な全ての症例に対して、医師が実施している割合が高かった術後管理に関する医療行為(特定行為を含む)については、病棟管理業務を医師以外のメディカルスタッフへタスクシフトすることが望ましい。そのためには、これらの医療行為を十分な知識と適切な技術を以て実施できるメディカルスタッフの育成が喫緊の課題であることが明らかとなった(資料2)。
 さらに、包括指示書については、公開されている手順書の先行事例等を参考にしながら、クリニカルパスをベースとした包括指示書(案)を作成した(資料3)。本研究班では、現在使用されている手順書やクリニカルパスをベースとしたたたき台のようなものを示すことにより、各施設における包括指示書作成についての検討も盛んになり、タスクシフトの推進へ向けた取組の活発化が期待できると考えた。
 また、各医療機関におけるタスクシフトへの理解及び取組も重要である。各学会での働き方改革のシンポジウムなどでの医師の働き方に関する講演の実施等による継続的な啓蒙活動を行うことで、各医療機関の理解が深まり、状況に応じたタスクシフトの実施につながるものと考えている。重要なことは患者への十分な安全を確保した上で、タスクシフトを着実に進めていくことである。研修内容の見直し、現場での指示出し・指示受けの確認体制、トラブル時の体制等、タスクシフトに必要な取組を速やかに進めていくことが求められる。
結論
 本研究で得られた各医療期間でのタスクシフトの状況を踏まえ、効率的な取組や対策を各施設、各関連団体及び行政と連携しながら行うことが望ましい。本研究班で作成した外科術後病棟管理領域のパッケージを用いた特定行為研修の推進や、施設毎の状況に応じて、本研究班で示しした包括指示書(案)等活用した各医療機関でのタスクシフトの推進が期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201821060C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究班で示した大規模アンケート調査に基づき、日本外科学会に関連する領域のタスクシフトは特定看護師の育成数増加など、具体的な進捗を認めている。更に、本研究班の成果に基づく日本外科学会でのタスクシフティングを参考に、整形外科領域と臨床工学技士会の連携を推進するためのアンケート等が多領域の学会で行われており、診療科を超えた施策の横展開が進んでいる。実際に、臨床工学技士や臨床検査技師等のタスクシフティングのための研修が既に実施されている。
臨床的観点からの成果
特定看護師の外科術後病棟管理における研修内容のパッケージ化が承認され、研修が開始された。特定行為研修を行う指定研修機関は令和5年3月の公表で360機関存在し、本研究班の成果物である「外科術後病棟管理領域」の領域別パッケージ研修が全国45か所で実施されている。実際、熊本大学では既に22名の外科パッケージ研修修了者を輩出している。研修数や修了者数が着実に年々増加していることから、外科医のタスクシフトの推進に大きく寄与していると考えられる。
ガイドライン等の開発
一般社団法人日本外科学会労働環境改善委員会と合同の会議を行い、特定行為を行う看護師の外科術後病棟管理における研修内容のパッケージ化改定案を作成した。2018年12月5日に開催された第19回医道審議会保健師助産師看護師分科会看護師特定行為・研修部会で当該作成案について議論され、その後了承された。
その他行政的観点からの成果
特定行為研修を行う指定研修機関は令和5年3月の公表で360機関存在し、本研究班の成果物である「外科術後病棟管理領域」の領域別パッケージ研修が全国36か所で実施されている。また、厚生労働省医政局から都道府県知事宛に「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について』(医政発0930第 16号 令和3年9月 30 日)とする、本研究班の成果物の内容も踏まえた事務連絡がなされており、医師のタスクシフトの推進に寄与している。
その他のインパクト
民間医局コネクト「Doctor’s Opinion 医師の働き方改革に思う」掲載、ならびに働き方改革TVによる「働き方改革、意識改革」について取材を受けた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
馬場秀夫 1.熊本県保険医協会勤務医部会定期総会 2.第47回日本外科系連合学会 3.第30回日本乳癌学会 4.第24回日本医療マネジメント学会 5.第73回日本気管食道科学会総会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
1.厚生労働省 医師の働き方改革におけるC-2 水準の申請にかかるモデル審査への協力
その他成果(普及・啓発活動)
2件
1.一般社団法人 全国医学部長病院長会議「医師の働き方改革検討委員会」委員長 2.厚生労働省「令和4年度勤務医等を対象とした働き方改革周知・啓発事業アドバイザリーボード」委員長

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-06-15
更新日
-

収支報告書

文献番号
201821060Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,500,000円
(2)補助金確定額
3,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,363,299円
人件費・謝金 172,984円
旅費 1,038,000円
その他 123,220円
間接経費 807,000円
合計 3,504,503円

備考

備考
差異4,503円については、自己資金有り

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-