医療安全に資する病院情報システムの機能を普及させるための施策に関する研究

文献情報

文献番号
201821058A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全に資する病院情報システムの機能を普及させるための施策に関する研究
課題番号
H30-医療-指定-020
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
松村 泰志(大阪大学大学院医学系研究科 医療情報学)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 和江(大阪大学医学部附属病院 クオリティマネジメント部)
  • 大原 信(筑波大学 医学医療系)
  • 石田 博(山口大学大学院医学系研究科)
  • 澤 智博(帝京大学 医療情報システム研究センター)
  • 後 信(九州大学病院 医療安全管理部)
  • 美代 賢吾(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 医療情報管理部門)
  • 池田 和之(奈良県立医科大学附属病院 薬剤部)
  • 宇都 由美子(鹿児島大学大学院医歯総合研究科)
  • 松本 武浩(長崎大学 医歯薬学総合研究科(医学系))
  • 武田 理宏(大阪大学医学部附属病院 医療情報部)
  • 中村 京太(横浜市立大学附属市民総合医療センター 医療安全管理学)
  • 岡本 和也(京都大学 大学院医学研究科)
  • 北村 温美(大阪大学医学部附属病院 中央クオリティマネジメント部)
  • 滝沢 牧子(群馬大学大学院医学系研究科)
  • 田中 壽(大阪大学医学部附属病院 放射線部)
  • 玉本 哲郎(奈良県立医科大学附属病院 医療情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
画像検査を実施した際、目的の臓器以外の部位にがん等の所見が映し出されていることがあり、これに気づかず、更に、この所見が記載された画像レポートを見落としたために、がんの早期発見の機会を失い、次に発見された時には進行していた事例が複数報告され、大きな問題と認識されるようになった。この問題の解決には、医師への教育だけでは不十分であり、病院情報システムの支援機能を使った対策が有効となる。しかし、個々の医療機関でシステムを開発する方法では費用がかかり、対策システムが普及しにくくなる。そこで、本研究では、各システム開発ベンダーの次のバージョンのパッケージソフトに対策システムが組み込まれることを期待し、この問題の対策システムとして有効な機能を列挙し、システム機能仕様項目として整理することを目的とした。
研究方法
各分担研究者が担当する病院で実施されている、或いは計画されている対策についてレポートを作成して共有し、それ以外の病院の事例も収集した。更に、海外での対策内容を調査し、これらの情報に基づき、見落としが起こる原因、有効な対策、望まれるシステムの機能について議論した。この議論に基づき、本問題の対策の基本的な考え方、望まれるシステムの仕様項目として整理した。作成した各機能仕様項目について、保健医療福祉情報システム工業会、日本画像医療システム工業会に、システム作成上の難易度を尋ねた。また、統合的な機能仕様項目を提示することの意義、注意点について意見交換した。
結果と考察
画像レポート見落とし防止対策としては、まず重要なことは、医師への教育、二段目に、レポートの作成を知らせる機能の導入、三段目にレポートを読んだ際に既読を登録し、第三者が未読レポートを調べ、担当医や所属長に注意喚起する体制、四段目に、画像診断医が重要所見を含むレポートに重要フラグを付与し、第三者によるその患者の診療内容の確認、適切に対応されていない場合の連絡が基本となる。しかし、病院職員の配置、余力、考え方の違いにより、具体的な対策にはいくつものバリエーションがある。画像診断医による重要フラグの付与の有無、レポート作成通知をする対象レポートの範囲、既読登録について能動的に既読宣言をするか、レポートを開くと受動的に既読とするか、既読登録ができる医師の範囲、監査対象を全レポートとするか重要レポートのみとするか等である。システムは、これらのバリエーションをできるだけ一つのシステムで吸収し、設定の変更で対応できるようにすると、複数のタイプのシステムを開発する必要がなくなる。また、病院側でも、システム導入後に対策方針が変更された場合でも対応が可能となるので望ましい。そこで、対策システムとして求められる機能項目をできるだけ網羅し、その和集合を機能仕様項目としてまとめた。公表する資料として、レポート見落とし防止対策システムの機能の解説、レポート見落とし事例集、レポート見落とし防止対策システムの機能仕様項目の3つの文書を作成した。対策システムが複数のアプリケーションにまたがるため、アプリケーション単位でまとめた仕様項目の記載は分かりにくいため、解説書では、必要とする機能の単位にまとめ、仕様項目との対応を記載した。また、本問題の事例集を作成し、この問題の起こる原因が理解できるようにし、解説書に、これらの機能の必要性が理解できるように記載した。
これらが各医療機関、システム提供ベンダーで読まれることにより、本問題に対する対策の考え方が、医療機関とベンダー間で共有され、ベンダー側は目標が定まりシステムの開発がしやすくなること、病院側では、システムを利用した対策方法が理解でき、システムを利用した対策体制が整備しやすくなることを期待している。本対策システムの難しさは、対策機能が複数のアプリケーションの組み合わせで実現され、個々のアプリケーションは、異なるベンダーから提供される場合が多い点にある。本文書の発出をきっかけとして、システム開発ベンダー間で協議され、必要なインターフェイスが開発・共有されることを期待している。
結論
画像レポート見落とし問題の対策には、医師への教育に加え、病院情報システムを利用した対策が有効である。多くの事例から有効な対策の基本的な考え方を整理し、システムに望まれる機能を列挙し、「レポート見落とし防止対策システムの機能仕様項目」として整理した。この問題の必要な対策について、病院側とシステム提供ベンダー側が共通の理解を得ることで、開発ベンダーは対策システムを開発しやすくなり、病院側は、このシステムを導入して、有効な対策を実践できるようになることを期待している。

公開日・更新日

公開日
2019-08-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-08-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201821058Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,000,000円
(2)補助金確定額
4,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,764,148円
人件費・謝金 0円
旅費 1,183,360円
その他 129,492円
間接経費 923,000円
合計 4,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
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