死因究明等の推進に関する研究

文献情報

文献番号
201821053A
報告書区分
総括
研究課題名
死因究明等の推進に関する研究
課題番号
H30-医療-指定-015
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
今村 聡(公益社団法人 日本医師会)
研究分担者(所属機関)
  • 城守 国斗(公益社団法人 日本医師会)
  • 澤 倫太郎(公益社団法人 日本医師会)
  • 上野 智明(日本医師会ORCA管理機構株式会社)
  • 水谷 渉(公益社団法人 日本医師会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会の高齢化が進展するにつれ、在宅における孤独死等や大規模災害の発生時の検案等、死因を究明することが困難な事例も増加していくものと考えられる。こうした背景のもと政府は「死因究明等推進計画」を策定し(平成26年6月)、今後は死因究明の充実に向けた取り組みを進めることとされている。平成26年度より、本研究班において「死因究明等推進計画」の諸課題について研究に取り組んでおり、平成29年度までに一定の成果を収めた。その中では、死因情報を有効活用するために、死亡診断書(死体検案書)をクラウド上で電子的作成・交付できる仕組みを構築することの有用性・利便性についての提言も行った。そこで平成30年度の研究においては、将来的に死亡診断書(死体検案書)を電子的に提出することも想定し研究を進めるとともに、平成26~29年度の研究成果を踏まえつつ、死亡診断書(死体検案書)の制度全体に係る課題の整理及び課題解決に向けて研究班として議論を深めることにより、今後の死因究明体制の充実に向けた行政施策に資する成果を得ることを目的とした。
研究方法
今年度の研究では、様式を含めた死亡診断書(死体検案書)の在り方について前年度に引き続き検討を重ね、将来、死亡診断書(死体検案書)の電子的申請を行うことも視野に入れ、技術的、法的課題を整理し、死亡診断書(死体検案書)の制度全体に係る課題について検討を行った。諸課題の整理にあたっては関係府省の担当者及び妊産婦死亡に関する産婦人科領域の専門家を招聘し現状についての聴き取り、討議を行い、死亡診断書(死体検案書)の様式についても議論した。これを受けて、死亡診断書(死体検案書)作成支援ソフトの追加機能の検討と開発を行った。死亡時画像診断に特化したe-learningを含めた自己学習用の教材については、平成26~29年度に引き続き、症例の追加等により開発を継続した。また、平成26年度および平成28年度に実施した検案書発行料についてのアンケート調査結果をもとに、検案書発行料について一定の基準を設けるためのたたき台を策定した。
結果と考察
死亡診断書(死体検案書)の様式については、将来の電子的交付の可能性も踏まえつつ、その際に技術的、法的な障害となり得るものについて検討するうえで、関係府省より担当者を招聘し現状について聴き取りを行った。その結果、死亡診断書(死体検案書)上の死亡者情報と各市区町村における戸籍情報とを結び付けることによって、国民の諸手続の簡略化、市区町村における事務作業量の軽減等、多くのメリットがもたらされることがわかった。また、死亡診断書(死体検案書)作成支援ソフトにおいては、研究班会議で提案された、妊産婦の死亡原因について正しい統計収集を行うための妊娠に関するチェック項目機能の追加、および改元に対応したプログラム改修を行った。e-learningを含めた自己学習用の教材については、前年度までと同様、厚生労働省が日本医師会を委託先として実施している小児死亡例に対する死亡時画像診断のモデル事業で収集した症例5例を、e-learningシステムに追加し専用サイトの充実を図った。検案に際して行われる検査の費用や検案書発行料の費用負担のあり方については、最終的に具体的な料金提示をするまでには至らなかったものの、一定の基準を示すたたき台を提示することによって今後の具体的な料金設定について検討するための足掛かりとした。政府によって社会全体の諸手続上のデジタル化が進められるに伴い、近い将来、死亡診断書(死体検案書)についても電子的な作成・提出を取り入れることにより、それらの書類に含まれる情報と、市区町村における戸籍情報とを結びつけて、戸籍事務の効率化や死因究明の精緻化といった包括的な施策の実現が可能であることが考えられた。今後、特に法改正も含めて法令上の課題の検討が必要と考えられた。また、検案を担う医師が死亡時画像診断に習熟しやすい環境を整えるためにも、e-learningシステムについては、さらに読影の学習効果が高まる内容へと進化させる仕組みを模索する必要があると思われた。検案書発行料の検討においては、今回提示した一定基準を示すたたき台をもとに、具体的な算定根拠と料金を検討し、提言することを今後の目標としたい。
結論
様式を含めた死亡診断書(死体検案書)の制度の在り方について、死亡診断書(死体検案書)の電子化したうえでの書類提出に伴い、関係すると思われる省庁からヒヤリングを行なったことにより、行政手続におけるIT化に伴い、死亡診断書(死体検案書)の電子化の検討は急務であり、死因究明の精度向上に結びつくものであることがわかった。今後、省庁横断的な国による検討が開始されるべく、本研究においても、これまでの研究成果を踏まえ、政策の提言を試みたい。

公開日・更新日

公開日
2019-09-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201821053Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,500,000円
(2)補助金確定額
1,474,000円
差引額 [(1)-(2)]
26,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 140,000円
旅費 217,700円
その他 1,116,882円
間接経費 0円
合計 1,474,582円

備考

備考
582円は自己負担

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-