文献情報
文献番号
201821044A
報告書区分
総括
研究課題名
革新的なバイオ医薬品等の創出に向けた研究開発環境の整備に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H30-医療-指定-006
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
坂巻 弘之(東京理科大学 経営学部)
研究分担者(所属機関)
- 豊島 聡(公益財団法人日本薬剤師研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
4,300,000円
研究者交替、所属機関変更
該当しない。
研究報告書(概要版)
研究目的
近年、抗体医薬品等だけではなく、バイオ医薬品に続く領域の中心として、核酸・ペプチド医薬品等のいわゆる中分子医薬品や、遺伝子治療用や細胞組織利用医薬品など、新たな領域(モダリティ)の開発が広がっている。モダリティごとに、探索研究、開発研究、製造、特許、市場(価格設定や市販後の規制、マーケティングなど)、サプライチェーンなど、経営的なリスクは異なることが予想され、産業政策のあり方もそれぞれの検討が必要である。そこで、本研究では、各モダリティの開発状況、使用状況等を公表資料、企業アンケート等をもとに調査し、企業ヒアリング等を通して、それぞれのモダリティの開発、製造、市場等の課題を明らかにし、産業振興の論点について検討を行った。
一方、バイオシミラー(以下BSという)の発売品目数が増えるなかで、製薬企業のBS事業に対する取り組みや医療関係者のBSへの意識も変化しているものと推察される。そこで、ジェネリック製薬企業のBS事業の取り組み状況と医療関係者のBSに関する意識について現状を把握し、BS研究開発、製造、使用促進に関わる課題を明らかとすることを目的とした。
一方、バイオシミラー(以下BSという)の発売品目数が増えるなかで、製薬企業のBS事業に対する取り組みや医療関係者のBSへの意識も変化しているものと推察される。そこで、ジェネリック製薬企業のBS事業の取り組み状況と医療関係者のBSに関する意識について現状を把握し、BS研究開発、製造、使用促進に関わる課題を明らかとすることを目的とした。
研究方法
新モダリティ開発、使用に関わる現状調査について、企業決算資料、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)、先行研究の公表資料等を用い、新モダリティ開発への取り組み、バイオ医薬品使用状況を調査した。ついで、製薬協バイオ委員会の協力によりアンケート調査を実施し、新モダリティ研究開発過程における課題、意思決定などを調査・分析した。また、バイオ医薬品、核酸、ペプチド医薬品、細胞治療などの新モダリティの開発、製造を行っている企業、医薬品卸へのヒアリングを行い、モダリティごとの開発、生産、物流に関わる課題を検討した。
BSについては、ジェネリック製薬企業のBS事業取り組み状況ならびに課題についての調査、医療関係者のBSに関する意識調査を実施した。BS企業調査は、日本ジェネリック製薬協会、バイオシミラー協議会の協力により調査を行った。アンケート調査の一部ならびに公表資料の調査は、業務委託先である矢野経済研究所が実施した。以上の資料をもとに研究班会議において産業振興策について議論し、取りまとめた。
BSについては、ジェネリック製薬企業のBS事業取り組み状況ならびに課題についての調査、医療関係者のBSに関する意識調査を実施した。BS企業調査は、日本ジェネリック製薬協会、バイオシミラー協議会の協力により調査を行った。アンケート調査の一部ならびに公表資料の調査は、業務委託先である矢野経済研究所が実施した。以上の資料をもとに研究班会議において産業振興策について議論し、取りまとめた。
結果と考察
遺伝子組み換えのバイオ医薬品については、近年、抗体医薬品が増加してきている。また、BSについては、2019年3月までに、17品目が承認され、いずれも国内で臨床使用可能な製品の数は着実に増加している。わが国においても多様なモダリティの開発が進んでおり、抗体改変医薬品や核酸医薬品、ペプチド医薬品、遺伝子治療などの開発を手がける企業数も増えており、受託製造組織(CMO)等の利用の増加が見込まれている。その一方で、海外との比較で見ると、企業数の違いもあって、わが国での新モダリティ開発プロジェクト数は少ないことや、海外企業と比べて、相対的に低分子化合物の割合が高いなどの特徴も示された。BSに関する調査の結果、ジェネリック企業においてBS事業の拡大、新たなBS事業への参入などの積極化が明らかであった。医療関係者(病院薬剤師)への調査では、BS採用の理由として「医療費削減」、「医療機関の経営的メリット」、「患者の自己負担軽減」が上位であるが、採用における懸念点としては、「有効性や安全性の同等/同質性への疑問」、「適応症の違い」が指摘されていた。
モダリティごとの主な課題としては、①抗体医薬品では、新たな抗原の探索、製造や開発のための初期投資の大きさ、②核酸医薬品、③ペプチド医薬品では、開発のための病態モデル、生体内で安定して標的に到達させるための技術、製造コスト、品質管理ハーモナイゼーション、④細胞治療・再生医療・遺伝子治療については、探索研究のための産官学の基礎研究システム、極めて高額な開発・製造コスト、価格政策のあり方、サプライチェーンの仕組みなどが考えられた。BS事業に関わる課題としては、製造や研究の大半を海外技術に依存していることや、コストなどの問題が大きいと考えられた。
モダリティごとの主な課題としては、①抗体医薬品では、新たな抗原の探索、製造や開発のための初期投資の大きさ、②核酸医薬品、③ペプチド医薬品では、開発のための病態モデル、生体内で安定して標的に到達させるための技術、製造コスト、品質管理ハーモナイゼーション、④細胞治療・再生医療・遺伝子治療については、探索研究のための産官学の基礎研究システム、極めて高額な開発・製造コスト、価格政策のあり方、サプライチェーンの仕組みなどが考えられた。BS事業に関わる課題としては、製造や研究の大半を海外技術に依存していることや、コストなどの問題が大きいと考えられた。
結論
今後、人材・技術交流の活性化、中分子における分析設計・候補物質最適化、高機能化、解析技術開発、それらの人材開発、企業の交流、イノベーション評価と財政のバランスを考慮した薬価制度、保険償還の仕組み、効率的なロジスティクス・サプライチェーンの構築などについて検討すべきであると考えられた。BSの普及については、保険制度におけるインセンティブに加え、医療関係者や患者に対する情報提供とあわせ、診療報酬などによる使用促進も検討すべきと考えられた。
以上から、モダリティ毎の開発等のハードルについて検討を行い、わが国での多様なモダリティ開発促進の議論が必要と考えられた。
以上から、モダリティ毎の開発等のハードルについて検討を行い、わが国での多様なモダリティ開発促進の議論が必要と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2020-07-06
更新日
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