医療の質の評価・公表と医療情報提供の推進に関する研究

文献情報

文献番号
201821040A
報告書区分
総括
研究課題名
医療の質の評価・公表と医療情報提供の推進に関する研究
課題番号
H30-医療-指定-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
福井 次矢(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
研究分担者(所属機関)
  • 猪飼 宏(山口大学医学部附属病院)
  • 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
  • 今村 知明(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 嶋田 元(聖路加国際大学 情報システムセンター)
  • 高橋 理(聖路加国際大学 公衆衛生大学院)
  • 伏見 清秀(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 松田 晋哉(産業医科大学 公衆衛生学教室)
  • 大出 幸子(聖路加国際大学 公衆衛生大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医療の質を継続的に改善するためには、質指標(Quality Indicator:QI)を用いて医療の質の評価・公表を行うことが有用であり、その基盤構築が必要である。本研究では、厚生労働省が実施している「医療の質の評価・公表等推進事業」と「医療機能情報提供制度」の二つの制度について、事業内容の見直しを含む制度的対応に関する提言等を行うことを目的とする。

【医療の質の評価・公表等推進事業】
 質指標(Quality Indicator:QI)を用いた医療の質改善の全国展開に向けた研究の一環として、前年度に行った調査対象とは異なる2病院団体を対象に、共通QIセット*の活用結果を踏まえ、共通QIセットの有用性についてアンケート調査を行い、諸外国の動向等をも踏まえ、わが国の医療の質の評価・公表に関する制度的対応に関する提言を行う。 
*共通QIセットとは、平成28年(2016年)度研究班(研究代表者:福井次矢)で提唱した23種類36指標(①入院患者満足度 ②外来患者満足度 ③職員満足度 ④転倒・転落発生率 ⑤インシデント・アクシデント発生率 ⑥褥瘡発生率 ⑦中心静脈カテーテル挿入時の気胸発生率 ⑧キャンサーボードの開催 ⑨麻薬処方患者における痛みの程度の記載 ⑩急性心筋梗塞患者におけるアスピリン投与 ⑪Door-to-Balloon ⑫早期リハビリテーション ⑬誤嚥性肺炎患者に対する喉頭ファイバースコピーあるいは嚥下造影検査の実施率 ⑭血糖コントロール ⑮予防的抗菌薬の投与 ⑯服薬指導 ⑰栄養指導 ⑱手術患者での肺血栓塞栓症予防・発生率 ⑲30日以内の予定外再入院率 ⑳職員の予防接種率 ㉑高齢者における事前指示(ACP) ㉒広域抗菌薬使用時の血液培養 ㉓地域連携パスの使用率)をいう。

【医療機能情報提供制度】
 平成19年(2007年)から導入された医療機能情報提供制度について、各都道府県の情報提供サイトにおける外国語対応の状況を調査するとともに、制度の改善に向けた検討を行う。
研究方法
【医療の質の評価・公表等推進事業】
 平成30年(2018年)度の厚生労働省「医療の質の評価・公表等推進事業」に参加した2病院団体(全日本民主医療機関連合会、日本赤十字社)を対象に、共通QIセットの測定・公表に係るアンケート調査を行う。
平成22年(2010年)開始の厚生労働省「医療の質の評価・公表等推進事業」に参加してきた全9病院団体に呼び掛けて、「医療の質の評価・公表に関する研究」意見交換会を開催し、今後、QI事業を全国展開することの必要性や方法等について話し合う。

【医療機能情報提供制度】
 全国の各都道府県の医療機関検索サイトを比較し、とくに外国語対応の現状と在り方について検討する。
結果と考察
 アンケート調査では、対象となった2病院団体の140施設のうち90施設(64%)から回答が得られた。結果は、前年度に行った調査結果とほぼ同様であったが、予防的抗菌薬の投与について、自施設に役立つ、全施設で測定すべきであると答えた施設の割合が低かった。また、病床規模によって有益な指標が異なっていた。
 平成22年(2010年)度開始の厚生労働省「医療の質の評価・公表等推進事業」に参加してきた9病院団体のうち8病院団体と国立大学病院データベースセンターの代表者が参集して、QI事業を全国展開することの必要性や方法について話し合った結果、これまで厚労省の事業に参加してきた病院団体を主体とする「協議会」を軸に何らかの事務局を設置することについて賛同が得られた。
 医療機能情報提供制度に関する調査では、外国語対応しているのは13都道府県、使用されている言語は英語、韓国語、中国語(簡体、繁体)、ロシア語、ポルトガル語、インドネシア語、タイ語、フランス語で、最も多くの外国語で情報提供していたのは山梨県が運営するやまなし医療ネットであった。
結論
 われわれが平成28年(2016年)度の研究班で提言した共通QIセットの多くは、近い将来、「QIを用いた医療の改善」が全国展開される際に用いることが可能と思われるが、数種類のQIについては、改廃あるいは定義の再考を要する。「QIを用いた医療の改善」事業を効果的に全国展開するうえで、これまで厚労省の事業に参加してきた病院団体を主体とする「協議会」を軸とする事務局機能を有する組織の設置が望まれる。
 医療機能情報提供制度については、都道府県によりニーズの高い外国語が異なることは明らかであり、医療機能情報提供にあたって、英語、韓国語、中国語の提供は必須とし、それ以外の言語については、都道府県ごとに決めるのが適切と思われる。

公開日・更新日

公開日
2019-06-10
更新日
2021-05-11

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201821040C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 これまで限られた数の病院で施行されてきた「医療の質の評価・公表等推進事業」を、今後全国展開するのに必要となる共通QI(Quality Indicator)セットの妥当性をさまざまな側面から検証し、全国展開時に必要となる事務局機能を有する組織(団体)のあり方について提言した。これらは、全国レベルでのQIの測定・公表が医療の質の向上に繋がることを専門的・学術的に実証する上で必須のステップと考えられる。
臨床的観点からの成果
 23種類36指標からなる共通QIセットのほとんどが臨床現場における診療やケアに関わるものであり、将来的に、これが全国の医療施設における管理上のPDCA(Plan、Do、Check、Act)サイクルに組み込まれるなら、経年的な医療の質の向上が可視化され、さらなる改善への動機付けとなろう。
 医療機能情報提供制度における全ての情報が、本研究班で提言した英語、中国語、韓国語で提供されるようになれば、非常に多くの外国人に恩恵となるであろう。
ガイドライン等の開発
 平成30年9月12日開催の第11回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会にて、本研究班の調査研究成果や提言が紹介され、医療の質向上のための体制整備について検討された。
その他行政的観点からの成果
 令和元年(2019年)に開始された厚生労働省「医療の質向上のための体制整備事業」は、医療の質向上のための具体的な取り組みの共有・普及、中核人材の養成、臨床指標の標準化・評価・分析を目的とするもので、この事業の意義と構想を創造する過程で、本研究班の成果が参考となった可能性が高い。
その他のインパクト
特記すべきことはない。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2019-06-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201821040Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
1,917,000円
差引額 [(1)-(2)]
3,083,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 233,172円
人件費・謝金 0円
旅費 524,190円
その他 7,565円
間接経費 1,153,000円
合計 1,917,927円

備考

備考
3,083,000円 返還

公開日・更新日

公開日
2020-05-29
更新日
-