文献情報
文献番号
201821039A
報告書区分
総括
研究課題名
医療現場における成年後見制度への理解及び病院が身元保証人に求める役割等の実態把握に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H30-医療-指定-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
山縣 然太朗(山梨大学 大学院総合研究部 医学域 基礎医学系 社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
- 田宮 菜奈子(筑波大学 医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野)
- 武藤 香織(東京大学 医科学研究所)
- 篠原 亮次(健康科学大学 健康科学部理学療法学科)
- 橋本 有生(早稲田大学 法学学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
「成年後見制度利用促進基本計画」及び「身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての建議」を背景に、病院が成年後見人や「身元保証人・身元引受人等(以下、身元保証人等)」に求める役割や支援の実態、病院職員の制度理解の状況といった実態把握を、平成29年度の研究において全国約6000施設に対して実施した。調査結果から、医療に係る意思決定が困難な患者への対応についての規定や手順書がない医療機関が多く、規定のない中で個別の対応を求められており、とりわけ医療行為の同意に苦慮している現状、医療行為の同意を成年後見人に求めている現状等が明らかとなった。また、多くの医療機関において、入院時に「身元保証人等」を求めることは慣習として広まっており、「身元保証人等」は医療費の支払いから日常の世話までを網羅する家族と同様の役割を求められていた。加えて、医療機関の種別によって、医療に係る意思決定が困難な患者への対応における困りごと、身元保証人等が得られない場合の入院対応等が異なる可能性も示唆された。本研究は、この調査結果を踏まえて、医療に係る意思決定が困難な患者への対応及び「身元保証人等」がいない患者への対応、医療の場における成年後見人の関わり方等について、汎用性が高く、実行可能性が高いガイドラインを作成することを目的とした。
研究方法
実際の事例から、「身元保証人等」がいない患者への対応及び医療に係る意思決定が困難な患者への対応についての課題を明確にし、ガイドラインに盛り込むべき項目を整理するためヒアリング調査を実施した。平成29年度の調査に回答を得た医療関係者が従事する医療機関の中で、多職種からヒアリング協力の同意が得られている医療機関を抽出した。次に、多くの事例を知っていると推察される医療ソーシャルワーカーからヒアリング協力の同意が得られている医療機関を抽出した。抽出された医療機関のヒアリング同意者へ電話連絡を取り、本研究の参加に関して同意が得られたのは17施設25名(医師3名、看護師4名、医療ソーシャルワーカー15名、事務職3名)であった。インタビューガイドに基づいて、医療の現場で意思決定が困難である患者及び「身元保証人等」がいない患者への対応方法等について半構造化インタビューを実施した。インタビュー内容は全て逐語録におこした。事例における課題、好事例における特徴的な対応、成年後見人の関わり方と課題、未収金の対応について類似性に基づき集約した。
結果と考察
医療現場では、患者の意思決定能力の程度にかかわらず「身元保証人等」(家族)がいない患者への対応で多くの課題を抱えていた。したがって、「身元保証人等」が得られない患者への対応という枠組みの中で、患者の意思決定能力に合わせた対応方法を示すことが、医療現場の課題により即しており、実行可能性の高いガイドラインが策定できると考えた。
医療機関は患者の代わりに医療の同意・決定ができる家族が「身元保証人等」になることを求めていたため、ガイドラインにおいて、家族の有無、「身元保証人等」の有無にかかわらず本人による意思決定が基本であることを改めて周知し、医療の同意・決定プロセスのモデルを提示した。また、今まで「身元保証人等」が担ってきた役割に関する医療機関の対応方法を明記した。
成年後見制度の適切な活用によって「身元保証人等」が担っていた役割の一部、契約行為や医療費の支払いの役割を代替できる。したがって、ガイドラインには成年後見制度の説明や相談窓口について明記した。医療現場における成年後見人の関わり方で課題となっている部分を補うために、成年後見人の適切なかかわりと考えられること、適切なかかわりでないと考えられること、成年後見人の申立てから選任までの間に活用できる制度等について医療機関が明確に理解できるように出来る限り具体的に明記した。
医療機関は患者の代わりに医療の同意・決定ができる家族が「身元保証人等」になることを求めていたため、ガイドラインにおいて、家族の有無、「身元保証人等」の有無にかかわらず本人による意思決定が基本であることを改めて周知し、医療の同意・決定プロセスのモデルを提示した。また、今まで「身元保証人等」が担ってきた役割に関する医療機関の対応方法を明記した。
成年後見制度の適切な活用によって「身元保証人等」が担っていた役割の一部、契約行為や医療費の支払いの役割を代替できる。したがって、ガイドラインには成年後見制度の説明や相談窓口について明記した。医療現場における成年後見人の関わり方で課題となっている部分を補うために、成年後見人の適切なかかわりと考えられること、適切なかかわりでないと考えられること、成年後見人の申立てから選任までの間に活用できる制度等について医療機関が明確に理解できるように出来る限り具体的に明記した。
結論
ヒアリング調査結果からガイドラインに盛り込むべき事項を以下の1~3のように整理した。1.医療の決定・同意について患者本人の意思の尊重の原則、2.「身元保証人等」である家族が担ってきた役割を代わりに担える機関や制度、3.成年後見人の具体的な役割と成年後見制度の相談窓口。とりわけ、医療行為の同意・決定は医療現場において重要な課題であるため、医療行為の同意は本人の一身専属性が高く「身元保証人等」の第三者に同意の権限はない旨をガイドラインで明記した。実際の事例から医療機関にとって課題を多く抱える部分に焦点を当て、実際の対応を参考にした汎用性と実行可能性が高いと考えられる「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」を作成することができた。
公開日・更新日
公開日
2022-08-16
更新日
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