医療通訳認証の実用化に関する研究

文献情報

文献番号
201821038A
報告書区分
総括
研究課題名
医療通訳認証の実用化に関する研究
課題番号
H29-医療-指定-020
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
中田 研(大阪大学大学院 医学系研究科 スポーツ医学  国際・未来医療学(兼任))
研究分担者(所属機関)
  • 山田 秀臣(東京大学医学部附属病院 国際診療部)
  • 糸魚川 美樹(愛知県立大学 外国語学部 スペイン語学)
  • 押味 貴之(国際医療福祉大学 医学部 医学教育統括センター)
  • 南谷かおり(りんくう総合医療センター 国際診療科)
  • 岡村 世里奈(国際医療福祉大学大学院 医療経営管理分野)
  • 田畑 知沙(大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部 国際医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
4,114,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 南谷かおり 大阪大学医学部附属病院・未来医療開発部 国際医療センター(平成30年4月1日~31年2月28日)→ りんくう総合医療センター・国際診療科(平成31年3月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、医療通訳者の認証制度の実用化における課題を抽出し、解決策を学術的に検討して明らかにすることである。さらに、関係者に周知して意見を集約し、医療通訳認証実用の可能性を示すことにより、認定制度の策定と実施を推進する。
研究方法
平成29年度の認定医療通訳者制度の課題抽出と解決案の公表に引き続き、試験認定と実務者認定の条件と認定後の研修制度についてガイドラインを示し、また医療通訳リスクを抽出し医療関係者と医療通訳者に対する講習案を作成するため、以下について調査研究を行う。
A-1)医療通訳者認定試験の制度制定と実施準備
 医療通訳者認定試験について医療通訳試験実施団体や関係者との意見交換と調整から、認定試験の実施方法、結果評価基準等について制度を制定し、医療通訳試験のガイドラインの提案を行う。
A-2)医療通訳者の実務経験による認定・団体認定の実施案策定
 医療通訳者の実務経験による認定と団体認定の方法等につき、医療通訳者、医療通訳団体、関係者との意見交換と調整を全国レベルで計画・準備し、実施した。これらの意見交換と調整により、医療通訳者の実務経験による認定の提案を行う。
B-1) 医療機関での医療通訳者の業務定義,リスク,受入れ
 医療機関との意見交換,文献調査等により,医療通訳者の業務,服務を示す.医療通訳者の医療機関内での感染リスクや個人情報保護,業務過失,法的責務などを示し,医療機関での受入れ方針を示す.
B-2) 医療機関での医療通訳者研修,トレーニング制度の策定
 医療機関での医療通訳者研修,トレーニング制度策定のために,文献および調査研究を行い,医療機関での指導方法等を示し,医療通訳者の医療機関研修,OJTが可能な環境を整備する.
結果と考察
A) 試験認定と実務認定の制定に関しては、試験実施3団体や他の医療通訳団体、実務団体など計8回の意見交換を行い、さらに研究班内で検討を重ねた。日本での医療通訳資格試験の現状を加味し、実行可能性が高い医療通訳認証試験を実現するために「医療通訳認証試験の認定ガイドライン案」を提案した。実務経験による認証では、現任者の何を証明するかが問題である。試験合格による認証と同等レベルであることを証明する、または、更新時に同等のレベルに達することを証明するという考え方も可能であると考えられた。
B) 医療機関の受入れと研修制度に関する調査に関しては、日本医師会や学術団体などの意見交換、また昨年実施のパブリックコメントの追加解析を通して、医療機関の受入れのために必要な体制に関する課題抽出と解決策の提案を行った。
 医療通訳者の実務研修の重要性はいまだ医療機関には認知されておらず、病院の体制整備が遅れや、医療通訳者に対する認識不足が障壁になっていると考えられた。今後は、医療通訳者の理解を促すための医療機関への働きかけや、研修を受け入れてもらうためのサポート体制、担当部署の選定等が重要なポイントになると思われる。
 従来は医療通訳に関するリスク評価は主に誤訳のリスク、通訳を受ける患者の患者情報の取り扱いが中心であった。医療通訳者自身のリスクとして「感染」と「メンタルヘルス」を認めた。
中央省庁・地方自治体に加え、日本医師会など、医療通訳の体制整備を促進する動きが活発となっている。医療機関は医療通訳を理解し、医療通訳者は記録の保存や講習の受講により質の担保と業務内容の透明性を確保することで、「医療通訳の専門家」として医療チームの一員として活躍されることが期待される。
結論
H29年度に作成した医療通訳認証制度の実用化のためのロードマップに基づき、A) 試験認定と実務認定の制度およびB) 医療機関の受入れと研修制度に関する調査を実施した。具体的にはA-1)医療通訳認証試験に関する検討と提言作成、A-2)実務認定に関する検討と提言作成、B-1)医療通訳に関連するリスクや受入れ体制に関する課題の検討、B-2)研修について、各ステークホルダー・関係者との意見交換を実施しながら調査した。二つの提言と医療機関向けリーフレットの作成により、医療通訳制度をサイエンスベースから実用化に向けて大きく前進することができた。

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201821038Z