遠隔診療の有効性・安全性に関するエビデンスの飛躍的な創出を可能とする方策に関する研究

文献情報

文献番号
201821037A
報告書区分
総括
研究課題名
遠隔診療の有効性・安全性に関するエビデンスの飛躍的な創出を可能とする方策に関する研究
課題番号
H29-医療-指定-019
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 高志(特定非営利活動法人日本遠隔医療協会)
研究分担者(所属機関)
  • 郡 隆之(利根中央病院)
  • 草場 鉄周(北海道家庭医療学センター)
  • 前田俊輔(筑紫南ヶ丘病院)
  • 森田浩之(岐阜大学大学院)
  • 鈴木亮二(東北大学病院)
  • 佐藤大介(国立保健医療科学院)
  • 清水隆明(姫路獨協大学)
  • 齋藤勇一郎(群馬大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成30年度のオンライン診療料の保険収載およびオンライン診療の適切な実施に関する指針の発行により、遠隔診療は大きく発展した。一方で推進環境の整備は不十分で、多くの診療行為で診療報酬化や診療ガイドライン作りが望まれ、遠隔診療の手法開発、臨床研究による実証が重要になっている。ところが遠隔診療の臨床研究手法は、通常の臨床研究と異なる特性があり、研究デザインも実施も困難が伴う。それにも関わらず遠隔診療の特性の検討は不十分であり、全体像や特性を見通す研究は希であり、論点整理さえ進んでいない。遠隔診療は指導・管理手法であり、医薬品や診断・治療機器の評価と異なる臨床研究手法が必須であることも十分には認識されていない。そこで遠隔診療の全般状況の再検討、全体展望の構築、遠隔医療の定義、原理などの情報を再整備する。それを元に評価手法を提案して、多くの遠隔医療従事者がエビデンスを示すための基礎的知識を作る。
研究方法
研究方針検討なので、臨床情報収集などの研究デザインは適用せず、机上の検討と考察および研究分担者や協力者などの有識者ヒヤリングを行った。本研究の先行研究では、遠隔診療の特性として、臨床手法・地域医療提供状況・患者状況の三因子に関する詳細なケース分類や層別化が、評価手法構築に重要との結果を得ており、徹底した遠隔診療の個別対象向けのケース分類を行った。その分類毎に、異なる遠隔診療推進の目標や手法、有効性を検討した。
結果と考察
(1) 遠隔診療の現状
遠隔診療は多様な側面を持ち、疾患別・患者個々の身体状態/生活状態・地域医療体制別の描く状況があり、層別化された対象別に特性が異なる。まだ個別状況の洗い出しが進んでいないので、さらに上位視点で整理した推進策まで立案できない。つまり遠隔診療の推進策を考える環境は、整備開始したばかりである。
(2) 遠隔診療の実態に関する知識の整理
平成29年度の研究で、先行する臨床研究、これまでの研究手法の参考事例、対象診療行為のサーベイなどが行われた。また形態や医療課題などの整理を進めた。それらを土台として、以降の検討結果を得た。
(3) 遠隔診療の基礎情報の整理
遠隔診療の概観として、定義、手法一覧、適用地域や対象、運用形態、遠隔診療の原理や効果と有効性、遠隔診療の実施状況と制度への共通認識の素材を整理した。
(4) 遠隔診療の基本手法
対面診療、オンライン診療、モニタリング療法、デジタル療法、デバイス治療、実施対象(在宅、難病、慢性疾患などの医療課題)を検討した。原理を考え、遠隔で可能な診断、初診への適用の課題など、これまで明確な説明が無かった課題も検討して、診療事例の分類の観点も整理した。
(5) 遠隔診療の評価手法の新方向
遠隔診療の有効性は治療効果では測りきれないことが少なくない。医療技術評価と遠隔診療の関係性の検討、遠隔診療の評価に有効な手法と考えられる医療提供機能評価を検討する。また在宅医療や難病等について評価を試みた。
(6) 遠隔診療の有効性や経済評価のフレームワークの検討
評価について、国際的な手法比較として、イギリスのHTAについて調査した。
(7) オンライン診療従事者が習得すべき知識
今後、様々な症例検討や臨床研究、教育、診療ガイドラインが必要となり、多くの遠隔医療従事者が取り組むことが必要になる。オンライン診療の医学的特徴、研究手法や論文執筆、教育研修、診療ガイドラインの作り方などを整理した。
(8) 遠隔服薬指導の論点整理
遠隔服薬指導に関する制度緩和の動きが続いているが、現状では“薬の配送に伴う患者負担軽減”のみに注目が集まっている。医学的・薬学的意義が定まることで、遠隔服薬指導の潜在的可能性が開かれることがわかった。まだ問題把握に至る情報は不足しており、現状の論点を整理した。
(9) 医療計画と遠隔診療
遠隔医療は医療計画の良いツールと期待されるが、現在は具体的な取り組みが少ない。医療計画の中に遠隔診療を位置づけるための課題の検討を行う。
結論
粗削りながら、これまでの遠隔診療の情報や知見を集大成して、政策検討、臨床研究計画、現場での実践を促進するための知恵をまとめた。

公開日・更新日

公開日
2020-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201821037B
報告書区分
総合
研究課題名
遠隔診療の有効性・安全性に関するエビデンスの飛躍的な創出を可能とする方策に関する研究
課題番号
H29-医療-指定-019
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 高志(特定非営利活動法人日本遠隔医療協会)
研究分担者(所属機関)
  • 郡隆之(利根中央病院)
  • 草場鉄周(北海道家庭医療学センター)
  • 前田俊輔(筑紫南ヶ丘病院)
  • 森田浩之(岐阜大学大学院)
  • 鈴木亮二(東北大学病院)
  • 佐藤大介(国立保健医療科学院)
  • 清水隆明(姫路獨協大学)
  • 齋藤勇一郎(群馬大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成30年度のオンライン診療料の保険収載およびオンライン診療の適切な実施に関する指針の発行により、遠隔診療は大きく発展した。一方で推進環境の整備は不十分で、多くの診療行為で診療報酬化や診療ガイドライン作りが望まれ、遠隔診療の手法開発、臨床研究による実証が重要になっている。ところが遠隔診療の臨床研究手法は、通常の臨床研究と異なる特性があり、研究デザインも実施も困難が伴う。それにも関わらず遠隔診療の特性の検討は不十分であり、全体像や特性を見通す研究は希であり、論点整理さえ進んでいない。遠隔診療は指導・管理手法であり、医薬品や診断・治療機器の評価と異なる臨床研究手法が必須であることも十分には認識されていない。そこで遠隔診療の全般状況の再検討、全体展望の構築、遠隔医療の定義、原理などの情報を再整備する。それを元に評価手法を提案して、多くの遠隔医療従事者がエビデンスを示すための基礎的知識を作る。
研究方法
研究方針検討なので、臨床情報収集などの研究デザインは適用せず、机上の検討と考察および研究分担者や協力者などの有識者ヒヤリングを行った。本研究の先行研究では、遠隔診療の特性として、臨床手法・地域医療提供状況・患者状況の三因子に関する詳細なケース分類や層別化が、評価手法構築に重要との結果を得ており、徹底した遠隔診療の個別対象向けのケース分類を行った。その分類毎に、異なる遠隔診療推進の目標や手法、有効性を検討した。
結果と考察
(1) 遠隔診療の現状
遠隔診療は多様な側面を持ち、疾患別・患者個々の身体状態/生活状態・地域医療体制別の描く状況があり、層別化された対象別に特性が異なる。まだ個別状況の洗い出しが進んでいないので、さらに上位視点で整理した推進策まで立案できない。つまり遠隔診療の推進策を考える環境は、整備開始したばかりである。
(2) 遠隔診療の実態に関する知識の整理
遠隔診療の基本知識として形態や原理、基本手法の整理が進んだ。初診への適用が望ましくないなども考察して、文章化された。遠隔診療の価値の大きなものは提供能力にあることも示した。また期待されながら、明確でなかった医療計画との関係も分析した。臨床医学には公衆衛生学など社会医学による社会的視点の構築が重要である。遠隔診療も変わらないが、社会的研究に目が向けられなかった。本研究の成果により、関連学会などで、基盤的な社会医学研究の重要性を示したい。一方で本研究は視点を示した段階であり、詳細な知識構築に至っていない。社会医学的な研究の継続が重要である。専門学会などに軸足を移し、遠隔診療の推進基盤の整備が重要である。
(3) 遠隔診療の基礎情報の整理
遠隔診療の概観として、定義、手法一覧、適用地域や対象、運用形態、遠隔診療の原理や効果と有効性、遠隔診療の実施状況と制度への共通認識の素材を整理した。
(4) 遠隔診療の基本手法
対面診療、オンライン診療、モニタリング療法、デジタル療法、デバイス治療、実施対象(在宅、難病、慢性疾患などの医療課題)を検討した。原理を考え、遠隔で可能な診断、初診への適用の課題など、これまで明確な説明が無かった課題も検討して、診療事例の分類の観点も整理した。
(5) 遠隔診療の評価手法の新方向
遠隔診療の有効性は治療効果では測りきれないことが少なくない。医療技術評価と遠隔診療の関係性の検討、遠隔診療の評価に有効な手法と考えられる医療提供機能評価を検討する。また在宅医療や難病等について評価を試みた。
(6) 遠隔診療の有効性や経済評価のフレームワークの検討
評価について、国際的な手法比較として、イギリスのHTAについて調査した。
(7) オンライン診療従事者が習得すべき知識
今後、様々な症例検討や臨床研究、教育、診療ガイドラインが必要となり、多くの遠隔医療従事者が取り組むことが必要になる。オンライン診療の医学的特徴、研究手法や論文執筆、教育研修、診療ガイドラインの作り方などを整理した。
(8) 遠隔服薬指導の論点整理
遠隔服薬指導に関する制度緩和の動きが続いているが、現状では“薬の配送に伴う患者負担軽減”のみに注目が集まっている。医学的・薬学的意義が定まることで、遠隔服薬指導の潜在的可能性が開かれることがわかった。まだ問題把握に至る情報は不足しており、現状の論点を整理した。
(9) 医療計画と遠隔診療
遠隔医療は医療計画の良いツールと期待されるが、現在は具体的な取り組みが少ない。医療計画の中に遠隔診療を位置づけるための課題の検討を行う。
結論
粗削りながら、これまでの遠隔診療の情報や知見を集大成して、政策検討、臨床研究計画、現場での実践を促進するための知恵をまとめた。

公開日・更新日

公開日
2020-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201821037C

成果

専門的・学術的観点からの成果
遠隔診療の原理や分析のための観点、評価因子を明らかにした。今後の遠隔診療の基礎的検討の土台ができあがった。
臨床的観点からの成果
原理を考える視点が明らかになったことから、疾病別の診療手法を設計・検討することが可能になった。また臨床評価の視点も定まり、臨床研究を適切にデザインすることが可能となった。
ガイドライン等の開発
本研究では個別手法の臨床ガイドライン作りはスコープとしていないが、今後、本研究で基礎知識を習得した研究者がガイドライン作りを進めるための基礎的材料を整えた。
その他行政的観点からの成果
地域医療構想、医療計画に遠隔診療を活用する手法が示された。DtoP形態の遠隔診療だけでなく、地域医療に重要不可欠なDtoD形態遠隔医療を導入することが可能になった。

各臨床学会が遠隔診療に関する診療報酬の要望書を企画する大の課題整理としても役だった。
その他のインパクト
遠隔診療の基本を学ぶ教材として、本研究成果を活用できる。複数の県医師会で、本成果を用いた講演を行った。


発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
長谷川 高志 佐藤 大介 鈴木 亮二他
遠隔診療の有効性・安全性に関するエビデンスの飛躍的な創出を可能とする方策に関する研究
日本遠隔医療学会雑誌 , 14 (2) , 74-77  (2018)
原著論文2
佐藤 大介 長谷川 高志
遠隔診療の有効性・安全性に関するエビデンスの収集のための研究方法に関する文献調査
日本遠隔医療学会雑誌 , 14 (2) , 78-80  (2018)
原著論文3
鈴木 亮二 長谷川高志
遠隔診療の研究手法に関する文献考察
日本遠隔医療学会雑誌 , 14 (2) , 81-83  (2018)
原著論文4
清水 隆明 長谷川高志
遠隔診療に関する診療行為の網羅的調査
日本遠隔医療学会雑誌 , 14 (2) , 84-87  (2018)
原著論文5
長谷川 高志, 鈴木亮二、齋藤勇一郎他
多施設前向き臨床試験、結果概況
日本遠隔医療学会雑誌 , 13 (2) , 84-87  (2017)
原著論文6
長谷川高志、鈴木亮二、斉藤勇一郎他
在宅患者のための遠隔診療、多施設前向き臨床試験のプロトコルと試験
日本遠隔医療学会雑誌 , 13 (1) , 12-15  (2017)
原著論文7
長谷川 高志,桵澤邦男
遠隔医療の臨床評価と政策的活用手段の検討
日本遠隔医療学会雑誌 , 15 (2) , 104-107  (2019)
原著論文8
鈴木 亮二,長谷川 高志
服薬指導のあり方に関する考察
日本遠隔医療学会雑誌 , 15 (2) , 123-126  (2019)
原著論文9
清水隆明,長谷川 高志
和歌山県の遠隔医療推進事業に関する調査報告
日本遠隔医療学会雑誌 , 15 (2) , 100-103  (2019)

公開日・更新日

公開日
2020-01-17
更新日
2023-05-09

収支報告書

文献番号
201821037Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,550,000円
(2)補助金確定額
2,550,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 125,219円
人件費・謝金 0円
旅費 1,533,565円
その他 341,216円
間接経費 550,000円
合計 2,550,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-01-17
更新日
-