NCDを活用した医療提供体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
201821034A
報告書区分
総括
研究課題名
NCDを活用した医療提供体制の構築に関する研究
課題番号
H29-医療-指定-008
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 裕章(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 岩中 督(東京大学 医学部附属病院 )
  • 後藤 満一(大阪急性期・総合医療センター)
  • 瀬戸 泰之(東京大学 医学部附属病院 )
  • 丸橋 繁(福島県立医科大学)
  • 掛地 吉弘(神戸大学)
  • 上田 裕一(奈良県立病院機構奈良県総合医療センター)
  • 高本 眞一(東京大学 医学部附属病院 )
  • 本村 昇(東邦大学医療センター佐倉病院)
  • 徳田 裕(東海大学)
  • 遠藤 俊輔(自治医科大学)
  • 岡本 高宏(東京女子医科大学)
  • 隈丸 拓(東京大学 医学部附属病院 )
  • 一原 直昭(東京大学 医学部附属病院 )
  • 高橋 新(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,816,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本の医療提供は,専門医の配置や診療科や地域における医療提供体制など,偏在問題で多くの課題が示されており,これらを解決するための取り組みが重要視されている.医師の配置数で考えると,人口10万人あたりの医師数は都道府県間で最大2倍の格差があるとされている.しかし実際には,需供ニーズの視点から考えた場合に,その地域における対象疾患数での評価が重要となってくる.これまでにも同様な課題は存在していたが,各診療分野においてどのような品質の医療が提供されているのか具体的に把握されていなかった.本研究はNational Clinical Dartabase(NCD)の活用によって,日本における地域毎の医療提供体制の実態を実臨床データを用いて把握し,よりよい医療提供が可能となる指標を確立し,地域課題の要因分析をするものである.
研究方法
本研究は,NCDデータから都道府県(医療圏)単位での一般外科(消化器,心臓,呼吸器など)における手術手技や疾患別などの症例数を記述統計や地理情報等を用いて可視化する.本研究によって,現状では具体的に把握されていない地域毎の受入症例数や疾患分布ついて可視化することが可能となり,今後の適切な医療の機能分化に資する指標を確立する事が可能となるものである.
平成30年度は,2017年に実施された手術について,外科専門医制度上認められる術式に関して登録された施設診療科を対象に,①手術症例数,②7つの領域別(消化器・腹部内臓,乳腺,呼吸器,心臓・大血管,末梢血管,頭頸部・体表・内分泌外科,小児)の手術症例数,2011年から2017年手術症例データを用いて,③領域ごとの主なNCD術式別の手術件数を分析した.また,④都道府県単位での基礎的な症例数集計,⑤医療機関の連携体制を評価可能な指標案を検討し標準化死亡比との比較を行った.⑥地域における医療連携のモデル地域における医療提供体制の変化について比較した.
結果と考察
本研究により,NCDにおける2017年手術症例について,外科専門医制度上で認められた手術を登録した施設の都道府県別の分布,手術症例数,7つの領域別の手術症例数および各領域の主な手術に対する手術件数が明らかとなった.悉皆性の高い臨床データを有する例は国内外でも他になく,NCDデータを活用することで日本の実態を表すことが可能となるものであると考える.
機能連携評価では,症例の集約と治療成績について影響を評価した.指標として検討した機能連携の割合が高い都道府県では,機能連携の指標と都道府県の標準化死亡比には一定程度の相関が認められた.当該手術の経験が少ない施設で無理に手術をするのではなく,経験がある施設を紹介すること(その施設を無くすのではなく,機能連携を行うこと)は地域全体の治療成績向上につながることが示唆された.地域医療という視点においては,地域で医療資源がどのように配置されているかといったストラクチャー指標や,医療資源の連携活用も含めたプロセス指標での評価,またそれらによる影響(治療成績や地域における再編統合など)についても検討する事が重要となる.また,既に再編統合が進められている地域における施設毎の症例数を再編統合前後で比較すると、手術を要するような症例は急性期病院への集約が進んでいることが確認された.再編統合が効率的に進められている地域では,症例の選択と集中による集約化が進んでいる.
結論
本研究により,NCDにおける2017年手術症例について,外科専門医制度上で認められた手術を登録した施設の都道府県別の分布,手術症例数,消化器・腹部内臓,乳腺,呼吸器,心臓・大血管,末梢血管,頭頸部・体表・内分泌外科,小児の7つの領域別の手術症例数および各領域の主な手術に対する手術件数が明らかとなった.2011年から2017年の手術データを活用することは地域における集約や再編統合による影響を経年で評価することが可能と考えられ,地域医療体制の検討に資するデータ提供が可能となるものである.機能連携について各都道府県の地域医療構想の達成に向けた取組状況を参考に,実際に大規模データ用いて解析を行うと,効果的に再編統合を果たしている地域が確認された.再編統合によって医療の質向上にとって重要な技術集積性を担保することが可能となり,治療成績が改善している地域を確認することができた. 一方で,再編統合など地域医療連携については一つのモデルが全てに対応できるものでは無いため,地域特性や治療方法など実態を十分に理解したうえで検討することが必要である.

公開日・更新日

公開日
2020-04-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-04-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201821034Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,960,000円
(2)補助金確定額
4,960,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 335,619円
人件費・謝金 3,351,551円
旅費 110,320円
その他 18,510円
間接経費 1,144,000円
合計 4,960,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
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