麻酔科標榜資格を保持している医師の実態把握に関する研究

文献情報

文献番号
201821031A
報告書区分
総括
研究課題名
麻酔科標榜資格を保持している医師の実態把握に関する研究
課題番号
H29-医療-指定-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
稲田 英一(順天堂大学 医学部麻酔科学・ペインクリニック講座)
研究分担者(所属機関)
  • 澤 智博(帝京大学 医学部)
  • 山口拓洋(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 中田 善規(帝京大学 医学部)
  • 飯田 宏樹(岐阜大学大学院 医学系研究科)
  • 落合 亮一(東邦大学 医学部)
  • 川口 昌彦(奈良県立医科大学 医学部)
  • 川真田 樹人(信州大学 医学部)
  • 白神 豪太郎(香川大学 医学部)
  • 山蔭 道明(札幌医科大学 医学部)
  • 山本 達郎(熊本大学大学院 医学系研究科)
  • 佐和 貞治(京都府立医科大学 医学部)
  • 坂口 嘉郎(佐賀大学 医学部)
  • 近江 禎子(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
麻酔科標榜医(以下、標榜医)を対象に、標榜医資格を持つ医師の年齢や性別、所属診療科、対象麻酔症例の内容や数、常勤勤務施設以外での勤務実態、生涯教育の実情について明らかにすることを目的とした。さらに、麻酔科に所属する標榜医と、麻酔科以外に所属する標榜医の勤務実態を比較し、今後の標榜医の動向について検討することを目的とした。
研究方法
日本麻酔科学会認定病院(以下、認定病院)1,387施設および平成29年度の一年次調査に回答した麻酔管理料を請求している施設(以下、非認定病院)1,833施設に常勤医として勤務する標榜医を対象として、個別調査票を用いた個別アンケート調査を実施した。
結果と考察
認定病院567施設と、非認定病院1,266施設から回答があった(回答率は36.6%)。957施設から2,088名からの個別調査票の回答を得た。1,564名(74.9%)が麻酔科に所属し、393名(25.1%)が麻酔科以外の診療科に所属していた。東海北陸では、麻酔科に所属しない標榜医への依存度が高いことを示唆された。麻酔科以外に所属する標榜医は過半数が基準2で標榜医資格を取得していた。所麻酔科所属である場合は男性が702名(59.2%)であったが、麻酔科以外に所属する場合は男性が350名(90.9%)と大部分を占めていた。麻酔科所属の標榜医の年齢層で最も多かったのが30~39歳(45.2%)なのに対して、麻酔科以外に所属する標榜医の場合は60~69歳で120名(31%)、50~59歳が97名(25%)、70歳以上70名(18%)と年齢層が高く、今後はその数も麻酔への寄与も減少すると考えられた。麻酔科以外に所属する標榜医の多くはその他に診療科の認定医・専門医・指導医を取得しており、その麻酔内容も自身の専門診療科を中心にしていると考えられる。
結論
麻酔科以外に所属する標榜医は、標榜医全体の10%弱を占めている。一人当たりの担当症例数は少ないが、麻酔科診療に寄与していると考えられる。特に東海北陸地方では、麻酔科に属さない標榜医の寄与が大きいことが示唆された。しかし、麻酔科以外に属する標榜医は、60歳以上の医師が半数以上を占めており、その年齢層の高さから、今後10~15年のうちにその数は減少し、臨床的寄与の度合いは低下していくと考えられる。生涯教育と、医療の質の維持のためには、参加しやすい麻酔科学会学術集会の在り方の検討や、スタンダードな麻酔手技の確立や教科書の作成が有用であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201821031B
報告書区分
総合
研究課題名
麻酔科標榜資格を保持している医師の実態把握に関する研究
課題番号
H29-医療-指定-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
稲田 英一(順天堂大学 医学部麻酔科学・ペインクリニック講座)
研究分担者(所属機関)
  • 澤 智博(帝京大学 医学部)
  • 山口 拓洋(東邦苦大学大学院 医学系研究科)
  • 飯田 宏樹(岐阜大学 医学部)
  • 落合 亮一(東邦大学 医学部)
  • 川口 昌彦(奈良県立医科大学 医学部)
  • 川真田 樹人(信州大学 医学部)
  • 白神 豪太郎(香川大学 医学部)
  • 山蔭 道明(札幌医科大学 医学部)
  • 山本 達郎(熊本大学 医学部)
  • 佐和 貞治(京都府立医科大学 医学部)
  • 坂口 嘉郎(佐賀大学 医学部)
  • 近江 禎子(東京慈恵医科大学 医学部)
  • 中田 善規(帝京大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昭和36年に開始された麻酔科標榜医制度により、現在まで2万人以上の麻酔科標榜医(以下、標榜医)が認定されたが、資格更新制度もなく、その勤務実態は不明である。麻酔科専門医になるであろう麻酔科に所属する標榜医(以下、麻酔科所属標榜医)と、麻酔科に所属しない標榜医(麻酔科非所属標榜医)の年齢、性別のほか、麻酔担当症例数やその内訳など麻酔に関する活動状況を把握し、今後の麻酔科非所属標榜医の麻酔科診療における意義や在り方について検討することを目的とした。
研究方法
一年次調査は麻酔管理料を請求している全国5,013施設 (認定病院 1,388施設、非認定病院 3,180施設)に対して、標榜医を含む麻酔科医数や所属を中心にアンケート用紙調査を行った。二年次調査は日本麻酔科学会認定病院および一年次調査に回答した施設に勤務する麻酔科専門医や指導医資格を取得していない標榜医を対象として個別調査を実施した。
結果と考察
一年次調査では1,833施設(36.6%)から回答を得た。麻酔科非認定病院に勤務している施設当たりの標榜医数は1名程度であること、麻酔科非認定病院勤務標榜医が約29%いること、常勤標榜医のみで手術部運営ができている施設は約48%程度であることが明らかになった。
二年次調査では全国957施設から2,088名からの個別調査票の回答を得た。1,564名(74.9%)が麻酔科に所属し、393名(25.1%)が麻酔科以外の診療科に所属し、107名が病院管理職であった。麻酔科所属標榜医の大部分が基準1で資格取得をしていたのに対し、麻酔科非所属標榜医は過半数が基準2で標榜医資格を取得していた。麻酔科所属標榜医の約59%が男性であり、39歳未満が53%であった。麻酔科非所属標榜医の約91%が男性であり、60~69歳が31.2%、70歳以上のものもが18.2%と、60歳以上が49.5%を占めており、39歳未満は10%程度と少なかった。今後10~15年のうちに、これら麻酔科非所属標榜医の担当する症例数は減少していくであろう。一方、麻酔科所属標榜医は妊娠・出産・育児などにより、一時期臨床現場から離れる機会が多いことが示唆された。
麻酔科非所属麻酔科標榜医の約80%は、麻酔科以外の診療科の認定医・専門医・指導医資格を有していた。麻酔科所属標榜医の約2/3は月間担当症例数が20例以上であったが、麻酔科非所属標榜医の月間麻酔担当数は1~9例が35.3%と最も多かった。麻酔科非所属標榜医の場合は、消化器外科と一般外科、心臓血管外科の症例数が多かった。麻酔科所属と非所属の標榜医の担当症例比率からみると、麻酔科非所属標榜医は、脳神経外科、婦人科、心臓血管外科、一般外科の割合が多く、麻酔科非所属標榜医は自診療科の麻酔を主に担当していることが示唆された。麻酔科所属標榜医が他施設で麻酔を定期的に担当している割合は約36%であったのに対し、麻酔科非所属標榜医が他施設で麻酔を定期的に実施する割合は約5%と低く、多くは経営母体が同じ施設であった。麻酔科非所属標榜医の場合は、他施設における麻酔貢献度は低いことがわかった。麻酔科非所属標榜医は1,160名(二年次調査)、1,857名(一年次調査)、標榜医全体の10~15%、年間に10~20万症例の麻酔を担当すると推定された。非麻酔科標榜医は年間に全国で10~20万症例の麻酔を担当していると推測され、現状では麻酔診療において貢献していることが示唆された。しかし、今後の人口減少、病院集約化、合併症をもつfrailな高齢者の高度で綿密な周術期管理が必要とされる状況では、麻酔科非所属標榜医の役割は低下していくものと推測される。一方、高度で綿密な周術期管理を実施できる麻酔科専門医の役割は大きくなるものと推測される。
麻酔科非所属標榜医も日本麻酔科学会年次学術集会に不定期で出席したり、教科書を用いて生涯教育を受けていることが明らかになった。麻酔科非所属標榜医の生涯教育のために、麻酔科学会学術集会に出席しやすくなるような仕組みを作ったり、標準的な教科書の作成が重要であろうと考えられた。
結論
麻酔科非所属標榜医は1,100~1,900名程度存在し、年間に全国で10~20万症例の麻酔を担当していると推測され、現状では麻酔診療において貢献していることが示唆された。しかし、麻酔科非所属標榜医の高齢化による麻酔担当症例の減少や、今後の人口減少、病院集約化、合併症をもつfrailな高齢者の高度で綿密な周術期管理が必要とされる状況では、麻酔科非所属標榜医の役割は低下していくものと推測される。一方、高度で綿密な周術期管理を実施できる麻酔科専門医の役割は大きくなるものと推測される。麻酔科非所属標榜医の質の維持、生涯教育において日本麻酔科学会年次学術集会に参加しやすい状況を作るべきである。

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201821031C

成果

専門的・学術的観点からの成果
麻酔科非認定病院に勤務している施設当たりの標榜医数は1名程度と少ないこと、常勤標榜医のみで手術部運営ができている施設は約48%程度であること、麻酔科非所属標榜医は1,100~1,900名程度存在し、年間に全国で10~20万症例の麻酔を担当していると推測され、現状では麻酔診療において貢献していることが示唆された。
臨床的観点からの成果
麻酔科非所属標榜医の高齢化による麻酔担当症例の減少や、今後の人口減少、病院集約化、合併症をもつfrailな高齢者の高度で綿密な周術期管理が必要とされる状況では、麻酔科非所属標榜医の役割は低下していくものと推測される。一方、高度で綿密な周術期管理を実施できる麻酔科専門医の役割は大きくなるものと推測される。
ガイドライン等の開発
「無痛分娩の安全な提供体制の構築について」
医 政 総 発 0 4 2 0 第 3 号
医 政 地 発 0 4 2 0 第 1 号
平 成 3 0 年 4 月 2 0 日
麻酔科医の資格要件として麻酔科標榜医が含まれる。
その他行政的観点からの成果
麻酔科非所属標榜医は1,100~1,900名程度存在し、年間に10~20万症例の麻酔を担当し麻酔診療に貢献している。
 麻酔科標榜医の要件が以下のように記載された麻酔管理料(Ⅱ)が作られ、麻酔科標榜医の活躍の場が広がった。「常態として週3日以上かつ週 22時間以上の勤務を行っている医師であって、当該保険医療機関の常勤の麻酔科標榜医の指導の下に麻酔を担当するもの又は当該保険医療機関の常勤の麻酔科標榜医が、麻酔前後の診察を行い、担当医師が麻酔を行った場合に算定する。」
その他のインパクト
麻酔科標榜医の質の維持、生涯教育において日本麻酔科学会年次学術集会に参加しやすい状況を作るとともに、麻酔の標準化や、それに即した教科書を作成するべきであると考えられる。
 安全な無痛分娩の管理者の要件として麻酔科標榜医が含まれるようになった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
臨床麻酔学会シンポジウムにおいて「看護師特定行為と周術期管理チーム」において標榜医の実態について報告した。 日臨麻会誌 2020;40(5):541
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
新専門医制度へのあゆみと今後、石川麻酔フォーラム、金沢市、2018.3.3 において、標榜医の診療実態について報告した。
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
周産期麻酔科学会における資格検定要件および、自動麻酔支援装置の操作認定の要件に組み入れることが検討中である。
その他成果(普及・啓発活動)
1件
「非常勤麻酔担当医日本麻酔科学会アンケート調査:健全で持続可能な手術医療体制構築のため

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-05-18
更新日
2023-06-16

収支報告書

文献番号
201821031Z