地域包括ケアシステムにおける効果的な訪問歯科診療の提供体制等の確立のための研究

文献情報

文献番号
201821016A
報告書区分
総括
研究課題名
地域包括ケアシステムにおける効果的な訪問歯科診療の提供体制等の確立のための研究
課題番号
H30-医療-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
戸原 玄(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科老化制御学系口腔老化制御学講座高齢者歯科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 野原 幹司(大阪大学大学院歯学研究科高次脳口腔機能学講座顎口腔機能治療学教室)
  • 佐々木好幸(東京医科歯科大学統合研究機構)
  • 古屋 純一(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 片桐さやか(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 中根綾子(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 原豪志(東京医科歯科大学歯学部附属病院)
  • 上田貴之(東京歯科大学年歯科補綴学講座)
  • 大野友久(国立長寿医療研究センター歯科口腔先進医療開発センター歯科口腔先端診療開発部在宅・口腔ケア開発室)
  • 目黒道生(鳥取市立病院歯科,リハビリテーション部,地域医療総合支援センター生活支援室)
  • 林雅晴(淑徳大学看護栄養学部看護学科)
  • 宮田理英(東京北医療センター小児科)
  • 千葉由美(横浜市立大学医学研究科 )
  • 中川量晴(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 佐藤裕二(昭和大学歯学部高齢者歯科学教室)
  • 藤井政樹(昭和大学インプラント歯科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
1,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域包括ケアシステムを構築する中で訪問歯科診療の推進は重要だが、現行の教育、臨床、多職種連携が十分とは考えづらい。よりよい訪問歯科診療の普及と、従来触れてこられなかった部分の対応を充実させるため、訪問歯科診療を推進するマニュアルを作成することを軸として本研究を行う。
研究方法
初年度に行う4つの調査およびICTの取り組みを示し最後にマニュアルについて示す。
1在宅療養要介護高齢者に対する歯科介入状況の実態事前調査訪問看護ステーション所属の訪問看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を対象として、主として歯科との連携状況についてのアンケート調査を実施した。2訪問診療を行っている歯科医院に対する介入状況事前調査在宅療養支援歯科診療所、および歯科訪問診療料を算定している歯科医師に対して、訪問歯科診療の現状などを調査した。また、日本歯科医師会の協力のもと、全国の都道府県歯科医師会、郡市区歯科医師会に対して訪問歯科診療車の有無と利用状況についても調査した。3大学病院での訪問歯科診療の実際とリカレント教育状況事前調査教育機関としての大学病院が実際に訪問診療を行っているか、卒前卒後教育の程度を把握するために全国の歯学部に調査した。4重度摂食嚥下障害患者に対する歯科介入状況および歯列不正を主とした口腔機能調査重度摂食嚥下障害患者の歯並びなどの歯科的問題と訪問歯科診療の受診状況などを把握するため,脳損傷による遷延性意識障がい者と家族の会および全国色素性乾皮症(XP)連絡会を対象としてアンケート調査した。5ICTを用いた摂食嚥下リハビリテーションの取り組みについてICTを訪問診療場面の摂食嚥下リハビリテーションに用いた。6訪問歯科診療推進マニュアル班会議を2018年5月1日に開催し次年度作成予定のマニュアルの目次案を作成した。
結果と考察
1在宅療養要介護高齢者に対する歯科介入状況の実態事前調査計138名より回答を得、担当する延べ利用者数は1567名。訪問歯科診療の利用者の割合は14%。訪問歯科との連携状況は「連携したことがない」76%と最多、訪問歯科との連携は「不十分」58%、「全くとれていない」16%。一方で「訪問歯科介入の必要性を感じたことがある」は90%。歯科と多職種との連携は十分とは考えられなかった。2訪問診療を行っている歯科医院に対する介入状況事前調査訪問診療している歯科医療従事者を対象にアンケート調査し計112名から回答。訪問診療の際に連携している職種はケアマネージャー、看護師、医師が多く、その他の職種との連携は希薄であった。群市区・都道府県歯科医師会を対象とした訪問歯科診療車に関する調査では274件から回答。訪問歯科診療車を所有しているのは21団体、月1回以上使用している歯科医師会は38.1%。また、有効な使用法には障害者歯科診療と有事での使用があげられた。3大学病院での訪問歯科診療の実際とリカレント教育状況事前調査大学として訪問診療は8割がおこなっていたが、施設への訪問診療が多かった。卒前教育の基礎実習は9割が実施しているが、時間は15分から1190分と幅が広かった。訪問診療実習は3割であり、施設に比べ居宅等での教育機会が少なかった。研修医に対して基礎実習は4割、臨床実習は8割実施。訪問診療を実施していない大学病院では研修医への教育機会がなく、リカレント教育を実施しているのは4割。卒後教育も充実させる必要があろう。4重度摂食嚥下障害患者に対する歯科介入状況および歯列不正を主とした口腔機能調査アンケート回収数は320/675部。食事摂取の状況は,経口と経管28%、経鼻経管栄養のみ11%、胃ろうのみ49%,歯並びなどの歯科・口腔の問題では歯列不正39%、かかりつけ歯科の有無は,なし21%。歯列等の問題は口腔機能や摂食嚥下機能への対応と合わせて介入する必要性があろう。5ICTを用いた摂食嚥下リハビリテーションの取り組みについて5名の在宅もしくは施設入居患者に対してICTをD to D&Pの形態で行ったところ、臨床的に有効な摂食嚥下リハビリテーションの指導を行うことができた。6訪問歯科診療推進マニュアルマニュアルの目次は以下とした。総論、保存治療、外科治療、補綴治療、歯列不正、嚥下と咀嚼の評価、ターミナルケア、インプラント管理、へき地・離島診療、ICT、訪問歯科診療車の使い方、歯科衛生士の活動、リカレント教育を行っている大学一覧等。嚥下と咀嚼の評価の原稿を完成させモデル原稿として配布した。
結論
訪問歯科と医科側の連携が十分とはいえなかった。また、過去には触れられてこなかった歯列不正も訪問歯科診療の対象患者には多く見られた。さらにICTは摂食嚥下リハビリテーションに有効でると考えるが今後さらなる研究が必要である。本年度の調査を基として来年度マニュアルを作成する。

公開日・更新日

公開日
2019-08-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201821016Z