病院における薬剤師の働き方の実態を踏まえた生産性の向上と薬剤師業務のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201821014A
報告書区分
総括
研究課題名
病院における薬剤師の働き方の実態を踏まえた生産性の向上と薬剤師業務のあり方に関する研究
課題番号
H29-医療-一般-011
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
武田 泰生(国立大学法人鹿児島大学 附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 外山 聡(国立大学法人新潟大学 医歯学総合病院)
  • 宮崎 美子(昭和薬科大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の医療提供体制の改革が進むなか、平成29年に公表された「医師・看護師等の働き方ビジョン検討報告書」の中で、「薬剤師が調剤業務に止まらず専門的知見を生かし人材不足に対応しうる効率的で生産性の高い業務へシフトすべき」との提言がなされた。本研究は、病院薬剤師の勤務状況や業務実態の調査を通して、現状を分析し、今後の病床機能別における薬剤業務のあるべき姿や地域包括ケアとの効果的な連携について、さらに病院薬剤師の地域偏在の実態についても明らかにすることを目的とする。
研究方法
本調査では、全国の医療機関8380施設を対象に病院薬剤師の勤務状況や業務実態に関する3項目についてアンケート調査を実施した。調査項目Iは、病院薬剤師の常勤/非常勤の区別と人数、勤務時間や定員数の設定・充足状況、入退職や出産・育児等の休業取得状況などの働き方、地域特性や病床機能別施設における薬剤業務の実態の把握と分析、すなわち各施設で行われている薬剤業務の内容に加えてその業務を展開している時間数について調査した。項目IIでは、外来診療への関わりについて、効率的で生産性・付加価値の高い業務の事例収集と分析を行った。項目IIIは地域包括ケアに向けた多職種連携・地域連携を実施するための業務展開の調査と情報提供の事例収集と分析を行った。
結果と考察
調査票の回収率は40.9%であった。特定機能病院、一般病院の回答率は高かったが、療養、精神、ケアミックス型病院の回答率が低く、特に病床数が少ない施設からの回答が低かった。薬剤師の各業務時間を病院機能別に分析した結果、調剤にかかる病床数あたりの時間に大差はなかったが、病棟業務は特定機能病院の82時間/100床/週に対し、DPC対象病院で80時間、DPC非対象一般病院で48時間、精神(非DPC)で9.6時間/100床/週であり、機能別に大きな差があった。DPC対象病院を対象に病棟業務実施加算算定の有無を薬剤師あたりの病床数でロジスティック解析を行った結果、カットオフ値が22床/人であり、DPC非対象一般病院の場合は28床/人であった。次に、DPC対象病院の病棟薬剤業務実施加算算定(+ or -)施設で業務内容の比較をした結果、算定(+)病院群が、カルテからの情報収集、初回面談、面談による患者情報の把握、注射薬の投与ルートの確認などに関する時間が有意に多いことがわかった。一方、薬剤師外来の全国の実施施設は1,700施設であり、DPC対象病院と特定機能病院を除くと実施割合が高いとは言えなかった。しかし、多くの薬剤師外来は0.05~0.2人のマンパワーで実施可能であるため、マンパワーの不足が薬剤師外来の実施を妨げる最大の要因とは考え難い。薬剤師外来の実施がどのような要因で推進されるのかは、現状では明らかとなっていない。さらに、地域連携室における薬剤師の関りと、入退院患者への薬剤関係情報の収集提供の状況と多職種連携について調査した。地域連携室に薬剤師が配置されている施設は専従で1%を切り、専任でも十数パーセントと少ない結果であったが、入退院に関わる業務には多岐に渡って関与していることがわかった。
結論
病床数あたりの薬剤師数は病院機能別に大きく異なっており、特定機能病院、一般病院で多く、精神科病院では少ないことがわかった。病院機能別に各薬剤業務にかかる時間数は、調剤業務においては大差はないが、病床あたりの薬剤師数が増えるにつれ、病棟業務(病棟薬剤業務、薬剤管理指導、退院時薬剤管理指導含)にかかる時間数が大きく増えた。多くの薬剤師外来は0.05~0.2人のマンパワーで実施可能であるため、マンパワーの不足が薬剤師外来の実施を妨げる最大の要因とは考え難い。サブグループ解析や、療養型病院、精神科病院で薬剤師外来を実施している施設等を調査するなどして、薬剤師外来を推進するためのエビデンス構築を目指す。地域連携室に薬剤師が配置されている施設は専従で1%を切り、専任でも10数パーセントと少ない結果であったが、入退院に関わる業務には多岐に渡って関与していることがわかった。薬剤師は地域医療連携クリニカルパスの薬剤関連部分に関わっており、特に薬剤シートの作成によって、急性期医療、回復期・慢性期医療に関わっていることがわかった。研究成果は、今後の診療報酬改定における重要な資料として活用されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2019-08-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-08-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201821014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 668,643円
人件費・謝金 1,351,944円
旅費 693,810円
その他 3,445,603円
間接経費 1,840,000円
合計 8,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2019-08-20
更新日
-