生活習慣病に対する知識・態度と行動変容に関する研究

文献情報

文献番号
199800697A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣病に対する知識・態度と行動変容に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
國井 修(国立国際医療センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域住民の健康および生活習慣病に対する知識・態度・行動(以下KAP)、それらに影響を及ぼす因子を明らかにし、効果的な介入方法を検討する。
研究方法
脳卒中発症率の高い栃木県の一地域の40歳以上の全住民545人を対象に、予め研修をした調査員により、質問票による訪問面接調査を行った。調査項目は、①属性:性、年齢など、②身体状況と疾病:ADL(Katz Index)、罹患病名など、③知識:高血圧値・自分の血圧値、高血圧に影響する因子に関する理解など、④態度:現在および将来の自分の健康に対する態度など、⑤行動および主観的リスクファクター:睡眠、労働などの生活習慣、血圧・体重測定など、⑥QOL(SF-36)、⑦その他:ソーシャルサポート、自己効率(self efficacy)などである。また、対象者の脳・心血管障害に関する客観的なリスクファクターを明らかにするため、採血、尿検査、心電図、心臓超音波検査、24時間血圧測定を含む循環器検診を実施した。
結果と考察
訪問面接調査では、545人中425人(78.0%)より回答を得た。内訳は男45.8%、40‐64歳46.7%、65‐79歳41.9%、80歳以上11.4%、高血圧有病者39.4%であった。(1)知識(K): 「高血圧の値を知っている」者は57.3%であったが、実際に正確な値を答えられた者は36.4%であった。また、「自分の血圧値を知っている」者は79.0%であったが、高血圧者でも知らない者が17.2%であった。塩分、煙草、太りすぎが血圧に関係すると答えた者はそれぞれ90.3%、85.2%、97.2%、血圧が脳卒中、心筋梗塞に関係すると答えた者は41.9%、19.5%であった。また、脳卒中および心筋梗塞とはどんな病気かとの質問には36.7%、21.4%のみが正しく答えられた。高血圧の合併症や食事の影響に関する正しい知識を持つ割合は、若年者、女性が有意に高いが、高血圧有病者は高血圧値の正しい値を知る者の割合は高いが、合併症、食事や運動・肥満の影響などを知る割合は非有病者と有意差はなかった。(2)態度(A):「自分の健康に気をつけている」74.5%、「今後の自分の健康を少しでもよくしたい」48.6%、「今後自分の体重を減らしたい」43.3%%、「煙草をやめたい」16.1%、「健康のため運動をしたい」39.5%、「塩分制限をしたい」23.3%であった。女性、高齢者、高血圧者で積極的に健康に注意を払う、または改善しようとしているが、喫煙・飲酒・食事など個々の生活習慣によって性別、年齢別、疾患別で自己効力(self efficacy)が異なっていた。 (3)行動(P): 健康習慣指数(Health Practice Index: HPI)で6点以上の良好群は14.4%であったが、その割合は高齢者で有意に高く、高血圧有病者・非有病者間では有意差がなかった。HPIは、女性、若年者の点数が高かったが、高血圧の有無では有意差が認められなかった。(4)QOL: SF-36の8つのサブスケールPF(身体機能)、RF(身体機能障害による役割制限)、BP(痛み)、SF(社会機能の制限)、GH(全体的健康観)、VT(活力)、RE(精神機能障害による役割制限)、MH(精神状態)を検討したところ、男性は女性に比しPF、VT、SF、REにおけるQOLが低く、高血圧有病者は非有病者に比し、PF、VT、SF、REにおけるQOLが低かった。(5)関連因子: HPIを従属変数、性・年齢を含む17変数を独立変数として重回帰分析を行った結果、年齢、高血圧の有無、高血圧の合併症に関する知識、現在の自分の健康に対する態度などが関連要因としてあげられた。本調査は、3年間の介入研究のベースラインデータであり、介入後に同様の調査を行い、介入・非介入群のKAP変化を比較検討する予定である。但し、今回の調査結果は横断研究として、地域住民の脳卒中をはじめとする生活習慣病に関するKAPを明かにし、生活習慣に関連する要因を検討する上で意義のあるものと考えられる。現
在、脳卒中発症者と未発症者、主観的および客観的リスクファクターの高い者と低い者での比較検討など、詳細な分析をしているところであるが、高血圧有病者と非有病者間では、高血圧に関する知識および健康に対する態度には違いがあるものの、健康習慣自体には差がなく、疾病の認知を機会にどのように行動変容への動機付けをしていくかを検討しなければならない。しかし、今回の分析結果から、生活習慣は疾病に関する知識や態度に関連する因子であると考えられ、正しい知識の普及は必須であると考えられる。来年度は、これらのデータを基に効果的な介入方法を検討し、実際に介入を行う。
結論
本年度の調査は、3年間の介入研究の1年目として、地域住民の生活習慣病に関する知識・態度・行動、生活習慣に関連する関連因子、脳卒中の主観的・客観的リスクファクターなどを明らかにした。これを基に、効果的な介入方法を検討し、来年度に実際に実施する予定である。

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