医療安全対策の最新のエビデンスと今後の政策課題についての研究

文献情報

文献番号
201821007A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全対策の最新のエビデンスと今後の政策課題についての研究
課題番号
H29-医療-一般-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学 医学部 医学科 社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 飯田 修平((公社)全日本病院協会)
  • 永井 庸次((株)日立製作所ひたちなか総合病院)
  • 嶋森 好子(岩手医科大学 看護学部 共通基盤看護学講座)
  • 鮎澤 純子(九州大学大学院 医学研究院 医療経営・管理学講座)
  • 平尾 智広(香川大学 医学部 公衆衛生学)
  • 藤田 茂(東邦大学 医学部 医学科 社会医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 平成29年度は、医療安全の専門家を対象とした調査と全国の病院を対象とした調査により、医療安全の諸施策の優先度を明らかにした。平成30年度の文献調査の対象は、両調査で優先度が高いと判定された施策を中心にすることとした。一方、平成29年度に試行した医療安全に関する施策・活動の効果に関する文献調査では、文献検索の労力に比して、エビデンスレベルの高い研究が少ないことが明らかになり、費用対効果の観点から文献調査のテーマを絞り込む必要があると考えられた。
 本研究は、文献調査により、医療安全の諸施策についてその有効性とエビデンスレベルを明らかにすることを目的とした。
研究方法
 平成30年度は、前年度の研究結果に基づき、バーコードによる照合システム、業務量・労働時間(労働量)、Rapid Response system・Rapid Response Team・Medical Emergency Team(RRS等)、医療安全のe-learning教材、転倒・転落のリスク評価、周術期の投薬方法の標準化の費用対効果の6テーマについて文献調査を行った。
 文献調査には医中誌WebおよびPubMedを用いた。
結果と考察
 バーコードによる照合システムに関する文献調査では、一定以上のエビデンスを有すると考えられる文献を72件(和文論文31件、英文論文41件)得た。それらの文献では、バーコード与薬システムの導入により、調剤エラーの発生率が減少し、その効果実現には、初期教育が必要であること、看護師バーコードスキャン状況のモニタリングが重要であることなどが報告されていた。労働量に関する文献調査では、一定以上のエビデンスを有すると考えられる文献を67件(和文論文8件、英文論文59件)得た。しかし、施策の導入に併せて行った前後比較研究が多く、ほぼすべての文献の研究デザインがエビデンスレベルの低いものであった。内容は、研修医の勤務時間制限は、導入前後における患者への明確な負の影響は見いだせないこと、看護師の配置人数増により患者の死亡等が減少する可能性があること等に言及しているものが多かった。RRS等に関する文献調査では、一定以上のエビデンスを有すると考えられる文献を131件(和文論文6件、英文論文125件)得た。システマティックレビューまたはメタアナリシスは14件であり、死亡や心停止など、臨床アウトカムを測定した文献も多数認められた。文献の中にコクランレビューが1件あり、院内死亡に対する効果についてエビデンスなしと結論付けていた。医療安全のe-learning教材に関する文献調査では、一定以上のエビデンスを有すると考えられる文献を108件(和文論文3件、英文論文105件)得た。対象文献に臨床アウトカムを検討した文献は認められず、医療従事者を教育することによる患者への影響は不明である。転倒・転落のリスク評価に関する文献調査では、一定以上のエビデンスを有すると考えられる文献を32件得た。統計学的検討が為されていない文献が多くを占めたが、多くの文献が転倒発生率や転倒者率の減少を報告していた。周術期の投薬方法の標準化の費用対効果に関する文献調査では、疫学的視点と医療経済学的視点の双方から信頼度が高いと評価できる文献を3件得た。いずれも周術期の抗血栓薬または抗菌薬の投与方法の標準化は、既存の投与方法と比較し、費用対効果に優越性(効果が高く費用が安い)を示した。
結論
 平成30年度の研究により、医療安全に関する諸施策について、これまでの知見をEBM手法を用いて文献調査により明らかにすることができた。これらは医療安全の政策推進、研究推進にあたっての優先順位の設定等に活用されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2019-08-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-08-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201821007B
報告書区分
総合
研究課題名
医療安全対策の最新のエビデンスと今後の政策課題についての研究
課題番号
H29-医療-一般-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学 医学部 医学科 社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 飯田 修平((公社)全日本病院協会)
  • 永井 庸次((株)日立製作所ひたちなか総合病院)
  • 嶋森 好子(岩手医科大学 看護学部 共通基盤看護学講座)
  • 鮎澤 純子(九州大学大学院 医学研究院 医療経営・管理学講座)
  • 平尾 智広(香川大学 医学部 公衆衛生学)
  • 藤田 茂(東邦大学 医学部 医学科 社会医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医療安全向上のため、過去の施策の成果を評価し、今後優先度の高い施策を特定することは、エビデンスに基づく医療政策実現に有効である。本研究は、医療安全の諸施策を制度・病院・臨床現場の3レベルに分け、各施策の過去の貢献度や各病院での実施状況、今後推進する上で想定される費用、効果、優先順位を明らかにすること、および、主要国の医療安全施策の状況のほか、全国の病院の医療安全管理体制・活動状況を明らかにすることを目的とした。
研究方法
 本研究では5つの調査を実施した。①医療安全の専門家25人を対象としたDelphi法による調査では、医療安全の諸施策の過去の貢献度、今後進める上での費用・効果・優先度を明らかにした。②全国3215病院の代表者・医療安全管理者を対象にした郵送法によるアンケート調査では、病院の医療安全管理体制、活動のほか、諸施策の実施状況、今後進める上での優先度を明らかにした。③OECD加盟35ヵ国の医療安全政策担当者を対象にした電子メールによるアンケート調査では、各国の医療安全施策の現状を明らかにした。④ 海外の医療安全政策についての調査では、米国ASHRMの年次大会に参加し、米国の取り組みについて情報収集した。⑤優先度の高い6つの医療安全施策の効果について文献調査を行った。
結果と考察
 ①より、費用対効果の高い施策として「処置・手術のチェックリスト」「周術期の投薬方法の標準化」「患者・部位・手技等の照合方法の標準化」が挙げられ、今後の優先度が高い施策として「医療職の教育・訓練」「業務量に応じた人員配置」「患者が服薬中の薬剤の定期的な評価・見直し」が挙げられた。②より、病院における専従・専任の医療安全管理者の配置状況や各種医療安全管理活動の実施状況を明らかにしたほか、今後の優先度が高い施策として「医療事故やヒヤリ・ハットの報告・管理の仕組み」「転倒・転落の予防方法の標準化」「手指衛生の取り組み」が挙げられた。③より、OECD加盟国における病院機能評価、医療安全に関する臨床指標の報告制度、有害事象の報告制度等の現況を取りまとめた報告書を作成し、第3回閣僚級世界患者安全サミット(平成30年4月13日~14日、東京)において参加者に配布した。④より、米国で現在注目されている話題、活動等が明らかにされた。⑤より、医療安全施策の効果に関する文献はエビデンスレベルの高い研究デザインが少なく、効果の有無に結論の出ないものが少なくないことが明らかにされた。
結論
 本研究により、さまざまな医療安全施策・活動について、その費用対効果や優先度を評価することができた。また、諸外国の医療安全施策について、わが国でも参考にできるものを特定することができた。本研究の成果はエビデンスに基づく医療政策実現に寄与すると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2019-08-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-08-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201821007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
各種の医療安全施策の費用対効果、優先度、成果等について、医療安全の専門家の視点、全国の医療安全管理担当者の視点、研究者の視点から明らかにすることができた。
臨床的観点からの成果
該当しない。
ガイドライン等の開発
該当しない。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果は医療安全の政策推進、研究推進にあたっての優先順位の設定等に活用されることが期待される。
その他のインパクト
第3回閣僚級世界患者安全サミット(The Third Global Ministerial Summit on Patient Safety、2018年4月、東京)において、本研究の一部としてOECD諸国の医療安全施策について取りまとめた報告書が参加者に配布された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-05-13
更新日
2023-06-09

収支報告書

文献番号
201821007Z