歯科衛生士及び歯科技工士の就業状況等に基づく安定供給方策に関する研究

文献情報

文献番号
201821006A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科衛生士及び歯科技工士の就業状況等に基づく安定供給方策に関する研究
課題番号
H29-医療-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
須田 英明(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 )
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 哲也(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 安藤 雄一(国立保健医療科学院 地域医療システム研究分野)
  • 三浦 宏子(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
  • 大島 克郎(日本歯科大学東京短期大学 歯科技工学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科衛生士と歯科技工士の人材確保は,国民に質の高い歯科医療サービスを提供する観点から極めて重要であり,常に安定供給に向けた対策を講じていくことが必要である.しかし近年,歯科衛生士の人材確保が困難な状況にあり,その不足が顕著になっている.歯科技工士についても,特に若年就業者の減少が認められることから,将来の大幅な減少が予想される.そこで本研究では,平成29(2017)年度に引き続き、1)全国の歯科衛生士・歯科技工士養成施設の中から同窓会組織の運営管理がなされている施設を選定し,その卒業生を対象として免許取得後の就業状況等の実態を把握するための調査を行うとともに,2)政府統計データ等の二次分析を行うことにより,両職種における就業状況の概観を把握するための基礎資料を作成する.
 1),2)の結果に基づき,歯科衛生士と歯科技工士の安定供給を図るための方策を検討することを,本研究の目的とした.
研究方法
1)九州地域の歯科衛生士養成校の同窓会会員を対象とし,現在の就業状況,希望就労条件や転職状況等について自記式質問紙による調査を行う.
2)上記の調査を,北海道地域の歯科衛生士養成校の同窓会会員を対象として行う.
3)歯科技工士養成施設の卒業生を対象として,自記式質問紙により免許取得直後や現在の就業状況等を把握するとともに,就業継続や離職等に影響を与える関連要因を調査する.
4)医療施設静態調査データを用い,歯科診療所に就業する歯科衛生士・歯科技工士等の歯科医療従事者数について分析する.
5)衛生行政報告例等のデータを用い,就業歯科技工士数の将来推計を行う.
6)歯科疾患実態調査データを用い,義歯の需要を検討する.
7)医療施設静態調査等のデータを用い,在宅医療サービスを実施している歯科診療所の分布と歯科衛生士の活用状況を分析する.
結果と考察
1)九州地域の歯科衛生士養成校の同窓会会員125名から回答が得られた(有効回答率:36.5%).歯科衛生士としての就業率は66.4%であり,転職経験者は76.0%と高率であった.
2)北海道地域の歯科衛生士養成校の同窓会会員226名から回答が得られた(有効回答率:44.7%).歯科衛生士としての就業率は65.5%であり,転職経験者は68.1%に達していた.
3)全国の歯科技工士養成施設4校を対象として自記式質問紙調査を行った.得られた有効回答数(有効回答率)は,それぞれ239(14.9%),185(39.9%),319(19.9%),35(36.8%)であった.その結果,現に歯科技工士として就業していない者の多くは,20歳代で離職をしていた.離職理由は,「給与・待遇の面」および「仕事内容への不安」が上位を占めていた.
4)1975-2017年における1歯科診療所あたりの歯科衛生士数と歯科技工士数の推移をみると,近年,歯科衛生士は増加傾向を,歯科技工士は減少傾向を示していた.
5)就業歯科技工士の将来推計では,2026年における就業歯科技工士数は28,874人となることが予測され,直近公表値(2016年)に対して約6千人の減少が見込まれた.
6)総義歯と部分床義歯では,補綴状況別にみた喪失歯数と補綴物数の減少が認められた.
7)全国の歯科診療所のうち,21.8%が在宅医療サービスを利用していた.とりわけ,北陸甲信越・中四国・九州地方で実施割合が高い傾向にあった.また,歯科衛生士による歯科衛生指導等は,関東・近畿・中四国・九州地方で実施割合が高かった.
結論
1.歯科衛生士養成施設を対象とした調査においては,就労状況に有意に関与した項目として「研修会参加状況」と「希望勤務形態」が抽出されたことから,ニーズに見合った研修会を提供することが,就労対策の上で効果的であると考えられた.
2.歯科技工士を対象とした調査において「給与・待遇の面」および「仕事内容への不安」が離職理由の上位を占めていたことから,これらの課題への対応が就労対策のうえで重要と考えられた.
3.政府統計データ等の二次分析から,就業歯科衛生士数の増加傾向が示され,また就業歯科技工士数の減少傾向とその将来予測(2016年と比べて約6千人の減少)が示されたことから,とくに就業歯科技工士の人材確保が喫緊の課題であると考えられた.

公開日・更新日

公開日
2019-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-08-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201821006B
報告書区分
総合
研究課題名
歯科衛生士及び歯科技工士の就業状況等に基づく安定供給方策に関する研究
課題番号
H29-医療-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
須田 英明(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 )
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 哲也(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 安藤 雄一(国立保健医療科学院 地域医療システム研究分野)
  • 三浦 宏子(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
  • 大島 克郎(日本歯科大学東京短期大学 歯科技工学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科衛生士および歯科技工士の人材確保は,国民に質の高い歯科医療サービスを提供する観点から重要である.特に今後の急速な高齢化の進展を踏まえ,歯科衛生士による口腔衛生管理や歯科技工士による義歯作製等のニーズの高まりが予測されることから,その検討は急務である.しかし近年,歯科衛生士の人材確保が困難な状況にあり,歯科技工士についても特に若年層に減少傾向が認められることから,今後の就業者数の大幅な減少が予想される.そこで本研究では,全国の歯科衛生士・歯科技工士養成施設の中から,同窓会組織の運営管理が確実になされている施設を複数選定し,その卒業生を対象として,免許取得後の就業状況等の実態を把握するための調査を行うとともに,政府統計データ等を用いた二次分析を行うことにより,歯科衛生士と歯科技工士の安定供給を図るための方策を検討することを目的とした.
研究方法
1)全国の歯科衛生士および歯科技工士養成校の中から、同窓会組織の管理運営がなされている施設を選定し,それらの同窓会会員を対象として,免許取得直後や現在の就業状況等について自記式質問紙による調査を行い,就業継続や離職等に影響を与える関連要因を調査する.
2)衛生行政報告例,医療施設静態調査,歯科疾患実態調査等のデータを用い,就業歯科衛生士・技工士数の推移と地域分布,歯科衛生士と歯科技工士の復職状況等について情報を収集し,分析する.

結果と考察
1)歯科衛生士養成施設3校(九州,東京,北海道)の同窓会員を対象とした調査では,全体としての就業率が68.3%であり,年代間で有意差が認められた(p<0.01).一方,転職経験者率は70.2%に達しており,20歳代で40.7%の者が既に転職を経験していた.また,多重ロジスティック回帰分析の結果,就業率に有意に関連していたのは「研修会の参加状況」と「希望する勤務形態(常勤・非常勤)」の2項目であった.2011年度の先行調査との比較において,就業率は依然7割程度であり,復職支援の継続的な実施の必要性が示された.
2)歯科技工士養成施設4校(栃木1,東京2,大阪1)の同窓会員を対象とした調査では,現に歯科技工士として就職していない者の多くが20歳代で離職しており,その理由については「給与・待遇の面」「仕事内容への不安」が上位を占めていた.それらの者が歯科技工士として再び働くことについては「そのつもりはない」という回答が多数を占めていたが,一部に「少し意欲がある」という回答もあった.歯科技工士の人材確保と安定供給ついては,これらを踏まえて方策を立案・実施すべきと考えられた.
3)政府統計データ等の二次分析においては以下の結果が得られた.
3-1)近年,1歯科診療所あたりの就業歯科衛生士数は増加傾向を近年示している一方,就業歯科技工士数は減少傾向を示していた.また,歯科衛生士の場合は,20-30歳代で就業者数が減少するが40歳代になると増加するという,いわゆるM字カーブの形状が年々明瞭になっていたが,歯科技工士ではそうした傾向は認められなかった.
3-2)2026年における就業歯科技工士数は28,874人と予測され,直近公表値(2016年)34,640人と比べて約6千人の減少が見込まれた.
3-3)総義歯と部分床義歯に関しては,補綴状況別にみた喪失歯数と補綴物数の減少が認められた.
3-4)在宅医療サービスにおいては,歯科衛生士による歯科衛生指導等を実施している歯科診療所は,関東・近畿・中四国・九州地方で実施割合が高く,人口規模が大きい地域ほど実施割合が高い傾向にあった.
歯科衛生士と歯科技工士の人材確保と安定供給ついては,上記を踏まえて方策を立案・実施すべきと考えられた.


結論
1)歯科衛生士の人材確保と安定供給については,復職支援対策を引き続き強化する必要がある.また,早期離職の抑制を図るうえで,研修会などの提供やキャリア教育の拡充が必須要件であることが示唆された.
2)歯科技工士の人材確保と安定供給については,離職率等の数値解釈には注意を要するものの,特に早期離職の抑制を図ることが重要と考えられた.
3)歯科衛生士と歯科技工士の人材確保と安定供給については,本研究で明らかにされた政府統計データ等の二次分析結果,すなわち,両職種における離職・復職状況,就業者数の地域分布と歯科医療サービスとの関連性,歯科診療所に勤務する歯科衛生士・歯科技工士数の推移と地域分布,就業歯科技工士数の将来推計値,義歯の需要,在宅医療サービスを実施している歯科診療所の分布と歯科衛生士の活用状況等を踏まえ,方策を立案・実施すべきである.

公開日・更新日

公開日
2019-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-08-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201821006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究により,歯科衛生士及び歯科技工士の就業,離職および復職の状況が明らかにされるとともに,離職に至る要因並びに有効と思われる復職支援要素が提示された.これらを踏まえ,両職種の人材確保と就業支援のための方策が立案・実施されることを期待できる.
臨床的観点からの成果
本研究が示した情報に基づき,歯科衛生士及び歯科技工士の就業・復職支援策が具体に実施されれば,急速な高齢化が進む我が国において,質の高い歯科医療サービスを国民に提供することが可能になると考えられる.
ガイドライン等の開発
なし。
その他行政的観点からの成果
本研究で得られた「歯科技工士の就業状況等に関する調査研究結果-歯科技工士養成施設の卒業生を対象とした質問紙調査による分析-」の結果については、厚生労働省が2018年3月に設置した「歯科技工士の養成・確保に関する検討会」の第6回検討会(2019年3月4日開催)において、参考人として出席のうえ報告をした。同検討会では、本研究報告を参考として、歯科技工士の養成・確保に関する現状や課題、今後の展望等について議論が行われた。
その他のインパクト
「その他行政的観点からの成果」に記載した厚生労働省検討会における本研究報告が、2019年3月12日付・3月19日付の日本歯科新聞に掲載され、その概要が全国の歯科医療関係者に広く周知された。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
大島克郎、竹井利香、安藤雄一
就業歯科技工士の将来推計
日歯医療管理誌 , 54 , 199-207  (2019)
原著論文2
安藤雄一、大島克郎、大内章嗣
同一出生世代別就業者数の推移からみた歯科衛生士と歯科技工士の復職状況ー衛生行政報告例・隔年別データを用いた分析ー
ヘルスサイエンス・ヘルスケア , 19 , 16-22  (2019)

公開日・更新日

公開日
2021-05-13
更新日
2023-05-24

収支報告書

文献番号
201821006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,200,000円
(2)補助金確定額
1,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 90,421円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 833,579円
間接経費 276,000円
合計 1,200,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-08-21
更新日
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