文献情報
文献番号
201821005A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科技工業の多様な業務モデルに関する研究
課題番号
H29-医療-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
赤川 安正(昭和大学 学長室)
研究分担者(所属機関)
- 佐藤 裕二(昭和大学 歯学部)
- 田地 豪(広島大学 大学院医歯薬保健学研究科)
- 小畑 真(北海道医療大学 歯学部)
- 堀口 逸子(慶應義塾大学 医学部)
- 下平 修(昭和大学 歯学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
1,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
歯科技工士を取り巻く労働環境は厳しさを増しており、加えて、歯科技工士の高齢化や歯科技工士学校養成所の定員割れが続いて若手歯科技工士の参入が乏しくなり、将来的に歯科技工業の担い手である歯科技工士の不足が予測されている。このような問題を解決するためには、歯科技工業の労働実態を正確に把握し、その労働環境を構成する要素ごとに論点を整理し、労働環境の改善を図ることが急務であると考える。本研究の目的は、歯科技工業の実態を正確に把握して、労働環境等の改善に資する提言や多様な業務モデルを導入するためのマニュアルを作成することにある。
研究方法
歯科技工所や歯科技工士に対する質問票調査を実施し、調査結果を分析することにより、歯科技工士の労働実態を明らかにし、労働環境等の改善に資する歯科技工業に関する提言やマニュアル作成を行う研究計画を立案した。歯科技工所については、自治体のホームページに公開されている歯科技工所を対象とし、全国を6地区に分けたうえで、各地区で対象の多い都道府県の歯科技工所、合計4,009施設を調査対象とした。また、歯科医療機関については、日本歯科医師会の会員の中から無作為に抽出した750施設を調査対象とした。さらに、歯科技工士については、対象の歯科技工所や歯科医療機関に勤務する歯科技工士を調査対象とした。
平成30年度は、29年度に得られたデータを集計し、いくつかの結果についてはクロス集計を行い、より詳細な分析を行った。さらに、全国6カ所の歯科技工業に従事する歯科技工士が1人である歯科技工所(1人歯科技工所)を訪問し、聞き取り調査も行った。
平成30年度は、29年度に得られたデータを集計し、いくつかの結果についてはクロス集計を行い、より詳細な分析を行った。さらに、全国6カ所の歯科技工業に従事する歯科技工士が1人である歯科技工所(1人歯科技工所)を訪問し、聞き取り調査も行った。
結果と考察
直近3年間の歯科技工所の職員数の変化は小さく、15.3%の歯科技工所で歯科技工士を新規に採用していたが、多くの歯科技工所では新規採用はなかった。この主な理由として、人員や業務に変化がなかったことが挙げられる。歯科技工士の就労時間は、直近3年間でやや減少傾向であったが、これは歯科技工所の管理者が労働環境の改善に取組んでいることによるものと考えられる。一方、1ヶ月残業時間の調査結果では、「100時間以上」と回答した者が18.8%いることから、歯科技工所によって労働環境に差があることも窺えた。歯科技工所における雇用契約についての問いには、「家族以外に従業員がいないため不要」が60.2%であった。2人以上歯科技工所で就労規則を作成しているものは39.6%であり、労働環境を整備する上では就業規則の作成が望まれる。労働環境改善のため、「作業環境の不具合がないようにする」、「作業環境に関する新しい情報を入手する」等に取り組んでいることがわかった。また、歯科技工業務の効率化のため、「特定の補てつ物等のみの受注を行っている」、「補てつ物等の種類に応じて担当制としている」、「新しい機器を導入している」等に取組んでいることが明らかになった。また、直近3年間での補てつ物等の製作個数の変化は、補てつ物によって異なり、クラウンブリッジは減少傾向であったが、CAD/CAM冠は増加傾向であった。これは、歯科技工業の効率化に取組んだこと、小臼歯ハイブリッドレジン冠が保険導入されたこと、等が考えられる。歯科医療機関と業務を委託する契約書を取り交わしている歯科技工所は8.1%にすぎなかった(歯科医療機関への調査では15.2%)。歯科技工所と歯科医療機関の間のトラブルとして、「料金」や「補てつ物等に関する考え方の相違」が挙げられており、補てつ物の質の保証やトラブルを回避するために、書面での委託・受託契約が望まれる。歯科技工士の職務内容に対する意識については、仕事に対する興味や適性、やり甲斐などに関する質問には、「肯定あるいは肯定的」な意見が多かったものの、「社会の人々は、私の仕事を尊敬するに値する仕事だと思っている」の質問と「私は仕事をしていて着実な人生設計がたてられる」の質問において、「否定あるいは否定的」な意見が多かった。これらのことから、将来を不安視している状況がうかがえ、今後の魅力ある歯科技工業を考える上に重要な論点を提示できた。
結論
平成29年度「歯科技工業の多様な業務モデルに関する研究」では、歯科技工所や歯科技工士のみならず歯科医療機関も対象として質問票調査を行い、回答結果をまとめた。平成30年度では、これらの回答結果をより詳細に労働環境を構成する要素をいくつかとらえて分析して論点をまとめた。その結果、歯科技工業の業務形態や就労環境等の現状をよく把握することができた。また、歯科技工所と歯科医療機関との契約についても調査したことにより、歯科技工業への歯科医療機関の関わりを考えるきっかけになるものと考える。
公開日・更新日
公開日
2019-08-19
更新日
-