血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者の肝移植に関する研究

文献情報

文献番号
201819026A
報告書区分
総括
研究課題名
血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者の肝移植に関する研究
課題番号
H30-エイズ-指定-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
江口 晋(国立大学法人長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 江川 裕人(学校法人 東京女子医科大学 医学部消化器外科)
  • 江口 英利(国立大学法人大阪大学 医学系研究科)
  • 上平 朝子(独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター 感染制御部)
  • 遠藤 知之(国立大学法人北海道大学病院 血液内科)
  • 玄田 拓哉(学校法人順天堂大学医学部附属静岡病院 消化器内科)
  • 嶋村 剛(国立大学法人北海道大学病院 臓器移植医療部)
  • 篠田 昌宏(学校法人慶應義塾大学 医学部一般・消化器外科)
  • 高槻 光寿(国立大学法人長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 塚田 訓久(独立行政法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 中尾 一彦(国立大学法人長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 長谷川 潔(国立大学法人東京大学 医学部附属病院)
  • 八橋 弘(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 四柳 宏(国立大学法人東京大学 大学院医学研究科 先端医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤を介したHIV/HCV重複感染(以下、重複感染)が社会問題となっている本邦において、肝不全に対する治療の選択肢として肝移植治療を安定的に供給することは社会からの要請であり、患者救済へ繋がる。
本研究の主目的は、血液製剤を介した重複感染者に対する肝移植適応基準および移植周術期のプロトコルを確立し、同時に重複感染症例の肝線維化進行のメカニズムを明らかにすることにより肝不全への進展を抑制する治療法を模索することである。
研究方法
本年度は、①国立国際医療研究センター/エイズ治療・研究開発センター(ACC)救済医療室との連携による肝移植症例の検討、②肝移植周術期プロトコルの確立、③肝線維化メカニズムの解明、④肝細胞癌の全国調査、について展開した。倫理面への配慮として、画像収集や血液などの検体採取に際して、インフォームドコンセントのもと、被験者の不利益にならないように万全の対策を立て、匿名性を保持し、データ管理に関しても秘匿性を保持した。
結果と考察
①ACCの救済医療室と連携して肝移植に関する相談窓口を設置し、現在までに4例の相談事例に対応した。必要に応じて現地にスタッフを派遣し、患者や医療スタッフに対して肝移植に関する説明・相談を行った。このうちの一例は長崎大学へ転院後2019年4月に実際に脳死肝移植を施行した。現在も1例が長崎大学で脳死肝移植待機中である。重複感染例は診療科が多科に渡り消化器科の関わり方も不定であることが少なくないため、医師や患者からの相談窓口としての対応は重要である。引き続き連携を密にし、重複感染者に対する肝移植のタイミングを逸しないよう心掛けていく。
②今年度までに本研究班で肝移植を施行した4例のデータを元に肝移植の周術期プロトコルをまとめ、「血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者に対する肝移植のベストプラクティス」として上梓し、全国へ情報発信した。本研究班の対象となる肝移植は、症例数はさほど多くないものの、その周術期管理には凝固因子モニタリング、HIV治療、HCV治療など、より専門的な知識を要する。このため周術期プロトコルは今後も症例の蓄積によってアップデートを行っていく必要がある。
③重複感染ではHCV単独感染に比べて線維化進行が早いことが報告されているが、そのメカニズムに関してはいまだ不明な点が多い。全国で今までに肝移植を施行された重複感染症例10例を対象とした先行研究で、肝線維化を抑制するとされるmicroRNA(miRNA)101が重複感染症例において発現低下していることを示した(Miyaaki et al. Ann Transplant)。これを元に重複感染症例に対する肝移植の経験が豊富なイタリアUdine大学と共同研究を行い、miRNA101に加えてmiRNA122、192、338の発現も重複感染症例において低下していることが明らかとなった。この研究結果は2018年5月にポルトガル、リスボンで開催された国際肝移植学会(ILTS)で報告した。線維化マーカーとして早期発見や予防治療につながる可能性のある知見であり、その意義や利用について、研究を引き続き継続していく。
④HCV感染は肝細胞癌(hepatocellular carcinoma, HCC)の高リスクであり、HCCは肝移植の成績を左右する重要な因子である。またHCV単独症例と比べて予後が悪いとする報告があるが、国内の血液製剤による感染者のデータは不明である。このためHCC合併の実態を全国のエイズ診療施設へアンケート調査した。24例の解析から『Child-Aかつ単発』であっても肝切除を行われていない症例が多く存在することが明らかとなり、診療ガイドラインに沿った適切な治療が施行されていない可能性が示唆された。今後適切な治療を可及的に施行するように提案していくとともに、血友病症例に対する、特に肝胆膵外科手術について全国調査を展開していく予定である。
また、インターフェロンフリーのdirect acting antivirals(DAA)治療により重複感染者でも高率にウイルス排除が可能な時代になってきているため、SVR達成症例の肝移植適応をどうするかも来年度以降の重要なテーマとなる。
結論
 血液製剤を介したHIV/HCV重複感染者の脳死肝移植の周術期管理については引き続き症例を集積し定型化を行っていく。肝線維化メカニズム解明からより適切な肝移植のタイミング、肝移植を回避できるような予防治療の確立を目指し、さらに現行の肝移植適応症例を漏れなく拾い上げ、血液製剤による薬害被害者の救済を研究班として継続していく。

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
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分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201819026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,000,000円
(2)補助金確定額
20,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,444,161円
人件費・謝金 2,097,045円
旅費 10,283,050円
その他 4,175,744円
間接経費 0円
合計 20,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
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