非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者の長期療養体制の構築に関する患者参加型研究

文献情報

文献番号
201819025A
報告書区分
総括
研究課題名
非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者の長期療養体制の構築に関する患者参加型研究
課題番号
H30-エイズ-指定-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
藤谷 順子(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 柿沼 章子(はばたき福祉事業団 )
  • 江口 晋(長崎大学 移植・消化器外科学)
  • 遠藤 知之(北海道大学 血液内科)
  • 三田 英治(大阪医療センター 消化器科)
  • 四柳 宏(東京大学医科学研究所附属病院 感染免疫内科)
  • 大金 美和(国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 今井 公文(国立国際医療研究センター 精神科)
  • 潟永 博之(国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 石原 美和(宮城大学 看護学研究科)
  • 竹谷 英之(東京大学医学研究所附属病院 関節外科・)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
53,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
専門的医療から生活基盤迄多岐に渡り対応必要な中高年に差掛かっているHIV感染血友病患者の多角的な検討。非加熱血液製剤によるHIV感染血友病等患者の長期療養上の問題点の実態を調査支援すると共に適切な医療・ケア・支援を長期に渡り地域格差なく提供できる体制の構築に貢献する事を目的とし内科学的側面・精神科的側面・運動機能と日常生活機能、医療へのアクセスを含めた生活実態、QOLについて検討。
研究方法
ソホスプビルを用いた抗HCV療法を2015年から2016年にかけて行ったHIV・HCV重複感染者38名のうち追跡可能な24名(ハーボニー22 名、ソバルディ2名)に対し治癒判定1年後、2年後の状態に関しAST、ALT、血小板数、AFP値、総コレステロール値を追跡。その他の合併症管理と社会資源の利用も含めた連携医療についてはPMDAデータを用いた薬害被害救済の個別支援(セカンドオピニオン事業)。薬害被害者の29名に病病連携支援。神経認知障害の面では血友病HIV感染者の認知機能障害の有病率とその特徴を把握しその関連因子を検討。 
結果と考察
ソバルディ投与例について肝細胞癌の合併・代償性肝硬変の合併新たな合併症は起こらず。ハーボニー投与22例においてAST・ALT・血小板数・AFP値の平均は治癒判定2年目まで改善。総コレステロール値は治療終了時上昇その後横ばい。肝細胞癌の新たな発生再発認めず。治療によりHCVが排除されたHIV/HCV重複感染症例の肝予備能推移をMELDscore、Child-Pugh grade、肝予備能試験インドシアニングリーン負荷試験15分値(ICGR15)及びアシアロ肝シンLHL15にて後方視的に観察。HCVRNA陰性化症例では殆どの症例が不変もしくは改善しているのに対しHCV RNA陽性症例では症例により異なるが経時的に予備能が低下。診療に関する助言や提案として肝移植適応に関する相談、重粒子線治療の導入に関する相談、肝癌に対しACCで集学的治療の後、地元での緩和ケアへ移行支援、抗HIV薬の見直しとアドバイス、地元主治医引退後の医療施設紹介肺癌に対する先進医療の検討に伴う診療連携かかりつけ医、分担研究者ブロック拠点医、ACCスタッフによる出張カンファランスがあった。社会資源の活用に関する助言や提案では通院元のMSWに協力を得ながら地元の障害福祉・介護サービスの調整、他科診療や肝炎治療医療費、個室料金発生への対応、年金申請相談実施。このPMDA事業により個別の問題を抽出し病病連携をすすめることが薬害被害救済に有効な手段である事が明らかとなった。運動機能の維持については多職種によって開催されるリハビリ検診会が運動機能の予防以外にも多面的な役割を果たす。ACCに通院中の適格基準を満たした血友病HIV感染者59名を対象としJ-HAND研究と同一の神経心理検査・精神科医の診察を行い診療録から評価項目を収集、J-HAND研究の非血友病HIV感染者のデータのうちACC通院中の者388名を対照群として、NHHPsの有病率のχ2乗検定実施。NHHPsの有病率は48%であり無症候性神経認知障害34%、軽度神経認知障害13%、HIV関連認知症1.8%で非血友病HIV感染者での23%と比較して有意に多し(p<0.001)。医療へのアクセスを含めた生活実態調査では訪問看護師による健康訪問相談の支援成果を分析し2)自己表出の抑制の緩和(HIV感染を隠して生活するストレスの緩和)安心できる地域生活のゲートキーパーの確保3)健康悪化予防や生活の向上等の視点が生まれたことが成果の要因。移動能力や日常生活機能の低下に伴い専門的医療機関へのアクセスが困難になりつつある実態を踏まえた2症例の実証研究実施、専門的医療機関への転居が医療的な安心と改善はもたらすが経済的には不利になりえる。また要介護5の2症例(在宅療養例と有料老人ホーム在住例)のケーススタディ実施いずれも既存のサービスを組み合わせて療養体制を構築する必要性に加え専門的医療機関への通院による経済的負担及び介護者の負担大。医療・福祉介護の連携を支援するためのツールの改定実施。QOLの評価のために先行研究であるH27年~H29年度「血液凝固異常症のQOLに関する研究」結果から非加熱製剤使用世代となる30歳以上の血友病患者だけを対象として血友病患者に対するHIV感染の影響について予備解析実施。HIV感染者157名と比べて非感染者272名は比較的年齢は高く定期補充療法の実施率が低いものの関節内出血や標的関節が少なく身体機能が保持。
結論
今後も非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者の長期療養体制の構築には多角的な実証的検討に基づく提言が必要。

公開日・更新日

公開日
2020-01-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-01-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201819025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
69,000,000円
(2)補助金確定額
69,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 18,197,011円
人件費・謝金 23,777,909円
旅費 6,780,591円
その他 4,496,798円
間接経費 15,923,000円
合計 69,175,309円

備考

備考
分担研究者が自己資金を支出したため。

公開日・更新日

公開日
2020-01-07
更新日
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