HIV感染症における医療経済的分析と将来予測に資する研究

文献情報

文献番号
201819021A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症における医療経済的分析と将来予測に資する研究
課題番号
H30-エイズ-一般-009
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 俊文(国立大学法人 千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
研究分担者(所属機関)
  • 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学)
  • 佐藤 大介(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター/医療・福祉サービス研究部)
  • 白岩 健(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター/医療・福祉サービス研究部)
  • 横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症内科・エイズ治療開発センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
当研究ではレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を利用した日本におけるHIV感染症に関する医療経済的な現状把握や推測研究を行う。(1)HIV感染症の治療の現状の把握と医療費の算出;HIV感染症は抗HIV薬の目覚ましい発展により、慢性疾患として位置づけられるようになってきた。患者数は増える一方であり、HIV感染症に対する医療費の増大が懸念される。まずはNDBを利用して日本における抗HIV薬処方状況と医療費の推定を行い、現状把握を行う。(2)HIV感染者における併存疾患(悪性新生物、心血管疾患など)の罹患率とリスク因子の推定;HIV感染者における悪性新生物や心血管疾患などの発症率が、HIV非感染者と比較して多いという報告が世界中で相次いでいることから、その一次予防などの介入が検討されている。そこでNDBを利用して日本におけるHIV感染者の併存疾患の状況を把握し、リスク因子の推定などを行い、一次予防につながる介入を模索する。
研究方法
(a)HIV感染者コホートの作成
NDB解析は奈良県立医科大学において同一患者由来である複数のレセプトを結びつける(コホート化する)分析基盤整備を進めているため、既存のデータベースを使用して約2万7千人の言われる日本のHIV感染者で実際に診療を受けていると思われる約2万1千人のコホートを作成する。HIV感染者のコホートに関しては疾患特異的な治療法(医療行為や処方)や疾患名から抽出して集計する予定である。
(b)HIV感染症の治療の現状と医療費の算出
HIV感染者のコホートから年次別横断的に抗HIV薬の処方状況し、日本における抗HIV薬の処方状況を明らかにする。またそれに伴う医療費を算出する。抗HIV薬の処方や疾患特異的な検査を伴う外来受診状況(1年間の受診回数など)を把握してレセプトより検査や診察料などを含む医療費の合計を算出し、年間一人あたり、またすべてのHIV感染者における年間のHIV診療に関する医療費を算出する。
(c)HIV感染者における併存疾患の現状把握
HIV感染者における抗HIV薬以外の処方状況、検査、傷病名や受診状況(外来・入院)を把握して、併存疾患の種類と罹患率を算出する。特に注目すべき併存疾患は悪性新生物、心血管疾患、脳卒中である。HIV感染者とHIV非感染者において各疾患罹患率に有意差が存在するかを検討するため、HIV非感染者を年齢にてマッチさせ、無作為に抽出して比較検討する。またこれら併存疾患発症のリスク因子として使用薬剤(抗HIV薬の種類やスタチン製剤など)との関連性に関して検討する。
結果と考察
2018年9月の審査で本研究班におけるNDBの利用申請が承認されたが、実際のデータがそろうのは2019年3月頃の見込みである。それまでの間に、HIV感染者の抽出条件の設定を検討した。データの整備が進み次第、3段階に分けて解析を進めることが決定した。(1)抗HIV薬の処方状況の把握とその医療費の解析、(2)HIV診療そのものに伴う医療費の解析、(3)HIV感染者における包括的な医療費の解析(併存疾患などに伴う医療費を含む)を行う。処方状況の感度分析のためにエイズ拠点病院における抗HIV薬処方状況に関する2015年における調査のデータとNDBの照合を行ったところほぼ一致した。併存疾患に関してはNDB上での併存疾患の定義(抽出条件の設定と疾患の確からしさ)の難しさがあり、例えば既報のようにICD-10の病名だけでは過大評価をしてしまうことが判明した。NDBですでに併存疾患の定義が確立されているもの(糖尿病など)、また悪性新生物に関しては特定の癌などに絞って解析することが検討された。
次年度はレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)に基づいた医療費削減効果分析としてまずは3剤併用療法から2剤併用療法への切り替えの条件(薬物耐性遺伝子保有率や慢性B型肝炎罹患率など)を検討して、シミュレーションモデルを作成する。またNDBなどのデータを参考にしながら日本人におけるHIV感染者の状態推移シミュレーションの作成に取り掛かる。
結論
(1)抗HIV薬の処方状況の把握とその医療費の解析、(2)HIV診療そのものに伴う医療費の解析、(3)HIV感染者における包括的な医療費の解析(併存疾患などに伴う医療費を含む)を行う。処方状況に関しては2013年から2018年までの5年間の傾向を分析する。併存疾患の分析は糖尿病に関してまず着手し、心血管疾患、特定の悪性新生物など疾患定義が確立すれば解析を行う。

公開日・更新日

公開日
2019-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-05-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201819021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,750,000円
(2)補助金確定額
8,750,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,200,320円
人件費・謝金 595,415円
旅費 688,758円
その他 4,515,507円
間接経費 750,000円
合計 8,750,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
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