文献情報
文献番号
201819020A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症診療の提供体制の評価及び改善のための研究
課題番号
H30-エイズ-一般-008
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
内藤 俊夫(順天堂大学 医学部 総合診療科)
研究分担者(所属機関)
- 古庄 憲浩(九州大学 医学部 総合診療科)
- 大塚 文男(岡山大学 医学部 総合診療内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
9,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本邦におけるHIV感染症の診療はHIV感染症専任医を中心に行われており、地域のクリニックや一般病院における「早期発見」や「慢性期の管理」は適切に行われていない。これには、今までのように専任医のみではなく地域に密着した医師(非専任医)もHIV診療に参加することが効率的であり、かかりつけ医の協力が不可欠である。しかし、総合診療医/プライマリケア医のHIV感染症の知識は不十分であり、現状のままでは実施が難しい。
このため、①総合診療医/プライマリケア医への教育、②総合診療医/プライマリケア医による医療スタッフへの講習会、③アプリケーションソフト(アプリ)やWebシステムを用いた知識普及と問題点の集積、④Web上での総合診療医と専門医との症例相談システムの確立、⑤レセプトデータの解析による総合診療医/プライマリケア医の診療に役立つ知識の検討、⑥集められた課題、得られた教育効果の分析・フィードバック・発表、からなる3ヵ年の計画を立案した。今回はこの3ヵ年計画の1年目の研究成果の説明である。
このため、①総合診療医/プライマリケア医への教育、②総合診療医/プライマリケア医による医療スタッフへの講習会、③アプリケーションソフト(アプリ)やWebシステムを用いた知識普及と問題点の集積、④Web上での総合診療医と専門医との症例相談システムの確立、⑤レセプトデータの解析による総合診療医/プライマリケア医の診療に役立つ知識の検討、⑥集められた課題、得られた教育効果の分析・フィードバック・発表、からなる3ヵ年の計画を立案した。今回はこの3ヵ年計画の1年目の研究成果の説明である。
研究方法
①ICTツールによる患者医療者間の遠隔服薬支援ネットワークを作成し、12週間の使用を行った。使用後に患者・医療者双方にアンケート調査を行い、このシステムの有用性を評価した。
②多施設コーホート研究により各種抗HIV薬の処方割合と変更までの継続期間を検討した。
②多施設コーホート研究により各種抗HIV薬の処方割合と変更までの継続期間を検討した。
結果と考察
①ツールを使用したHIV感染者の全員が「医療者に見守られていることに安心感があった」、対面診療ではできなかった質問ができたり、服薬忘れに対応できるなどの利点があった。ICTツールによるHIV感染者の遠隔診療支援は、対面診療を補う重要な役割が認められた。
②日本の270病院の150万名の患者データから、抗HIV薬を投与されていた1,613名のHIV感染者を抽出し解析を行った。バックボーンについては、処方割合の年次変化は小さく、TDFが約60%を維持していた。キードラックに関しては変動が大きく、2010年よりINSTIの処方割合が急激に増加し、2016年には約80%を占めていた。処方薬が変更される割合はNNRTIやPIで高く、INSTIでは10%以下であった。高齢化するHIV感染者の長期管理において、INSTIが長期継続可能なキードラックであることが明らかになった。本研究から得られたデータは、今後の診療において重要な指針になると考えられた。
②日本の270病院の150万名の患者データから、抗HIV薬を投与されていた1,613名のHIV感染者を抽出し解析を行った。バックボーンについては、処方割合の年次変化は小さく、TDFが約60%を維持していた。キードラックに関しては変動が大きく、2010年よりINSTIの処方割合が急激に増加し、2016年には約80%を占めていた。処方薬が変更される割合はNNRTIやPIで高く、INSTIでは10%以下であった。高齢化するHIV感染者の長期管理において、INSTIが長期継続可能なキードラックであることが明らかになった。本研究から得られたデータは、今後の診療において重要な指針になると考えられた。
結論
平成30年度に教育に役立つWebシステムの開発を行い、日本病院総合診療医学会のネットワークを利用し約1,600名の総合診療医/プライマリケア医に教育する体制の構築をした。質問と感想は、「HIV感染症の基礎知識」「早期発見」「慢性期の管理」「治療」のパートに分かれている。令和元年6月から日本病院総合診療医学会の会員を対象に開始し、受講した医師には総合診療専門医の指導医認定資格の単位を与える。同時に診療における問題点のアンケートをWeb上で実施し、問題の正誤やアンケート結果を解析し論文化する。
非専任医が診療において疑問を持った症例について、予め参加登録された医師がWeb上で症例検討ができるシステム(e-casebook)を設立した。このシステムでは限られたメンバーと症例情報を共有して、チャット形式で議論が可能である。左側にビューワー(DICOM、動画、スライドを表示)、右側にコミュニケーションスペースがあり、コメントをいつでも投稿することができる。本邦のHIV感染症診療を代表する医師である国立国際医療センターの塚田訓久と名古屋医療センターの横幕能行が研究協力者としてこのシステムに参画し、全国の非専任医からの相談に答える。
非専任医が診療において疑問を持った症例について、予め参加登録された医師がWeb上で症例検討ができるシステム(e-casebook)を設立した。このシステムでは限られたメンバーと症例情報を共有して、チャット形式で議論が可能である。左側にビューワー(DICOM、動画、スライドを表示)、右側にコミュニケーションスペースがあり、コメントをいつでも投稿することができる。本邦のHIV感染症診療を代表する医師である国立国際医療センターの塚田訓久と名古屋医療センターの横幕能行が研究協力者としてこのシステムに参画し、全国の非専任医からの相談に答える。
公開日・更新日
公開日
2020-03-11
更新日
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