文献情報
文献番号
201819016A
報告書区分
総括
研究課題名
地域においてMSMのHIV感染・薬物使用を予防する支援策の研究
課題番号
H30-エイズ-一般-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
樽井 正義(特定非営利活動法人ぷれいす東京 研究事業)
研究分担者(所属機関)
- 生島 嗣(特定非営利活動法人ぷれいす東京 研究・研修部門)
- 大木 幸子(杏林大学 保健学部)
- 若林 チヒロ(埼玉県立大学 保健医療福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,390,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、MSMのHIV感染・薬物使用の予防およびHIV陽性者の支援の促進を目的に、陽性者を対象として薬物使用を含む生活の実情の調査、および薬物使用者を支援する精神保健福祉センターとダルクにおけるMSMおよび陽性者への対応の現状と課題のを調査する。それらの機関とHIV治療・支援機関との連携とMSMコミュニティへの啓発を、次の4つの分担研究によって図る。
(1) HIV陽性者の生活と社会参加に関する研究(若林)
(2) 精神保健福祉センターにおけるMSM・HIV陽性者支援の調査(大木)
(3) ダルクにおけるMSM・HIV陽性者支援の調査(樽井)
(4) MSMにおける薬物使用に対処する啓発・支援方策に関する研究(生島)
(1) HIV陽性者の生活と社会参加に関する研究(若林)
(2) 精神保健福祉センターにおけるMSM・HIV陽性者支援の調査(大木)
(3) ダルクにおけるMSM・HIV陽性者支援の調査(樽井)
(4) MSMにおける薬物使用に対処する啓発・支援方策に関する研究(生島)
研究方法
(1) 陽性者への質問紙調査を次年度に実施するために、各医療機関の研究協力者との協議により対象数の調整、配付方法の策定等を行い、過去3回の調査結果を再検討して調査項目の採否、新規項目の選択を行い調査票を作成した。
(2) 精神保健福祉センターにおける薬物相談事業の動向について文献調査を行い、同センター職員およびHIV陽性MSMの相談事業利用者に面接し、職員と利用者とを対象に、薬物相談の実態と準備性について次年度実施する質問紙調査の準備を行った。
(3) ダルクによる事業と利用者の現状を概観するために、ダルク職員に面接を行い、先行研究を調査した。全国のダルクを対象に、MSMとHIV陽性者への対応の現状と課題について、次年度に実施する調査の質問紙を作成した。
(4) 前研究班のLASH調査(GPS機能付き出会い系アプリを利用するMSM対象の質問紙調査)の量的データについて、インフルエンサーへのフォーカスグループインタビューによりデータを解釈し、若年層のHIV感染と薬物使用の予防啓発に有用な情報とその発信方法を抽出した。
(2) 精神保健福祉センターにおける薬物相談事業の動向について文献調査を行い、同センター職員およびHIV陽性MSMの相談事業利用者に面接し、職員と利用者とを対象に、薬物相談の実態と準備性について次年度実施する質問紙調査の準備を行った。
(3) ダルクによる事業と利用者の現状を概観するために、ダルク職員に面接を行い、先行研究を調査した。全国のダルクを対象に、MSMとHIV陽性者への対応の現状と課題について、次年度に実施する調査の質問紙を作成した。
(4) 前研究班のLASH調査(GPS機能付き出会い系アプリを利用するMSM対象の質問紙調査)の量的データについて、インフルエンサーへのフォーカスグループインタビューによりデータを解釈し、若年層のHIV感染と薬物使用の予防啓発に有用な情報とその発信方法を抽出した。
結果と考察
(1) 陽性者質問紙調査の方法は、各医療機関一定割合の通院患者を対象とし、来院順に質問紙を配布、回答は無記名、本人から直接事務局宛に郵送にて回収とした。対象医療機関はブロック拠点病院およびACC(A調査)、さらに今回はHIV診療を標榜しているクリニック(B調査)を加えた。質問項目は、従来の事項を整理して15年間の変化を考察するとともに、介護関連の事項を新たに追加して高齢化に向けた地域生活の準備状況を検討することとした。
(2) 精神保健福祉センターは、精神保健福祉法改正(1995年)以降、依存症の精神福祉相談、家族教室(1999年-)、薬物依存者回復プログラム(2010年-)を提供し、健康問題として薬物使用に取り組む事業を進めている。若年者対象の回復プログラムでは性感染症教育も組み込まれているが、HIV診療医療機関との連携はなく、今後の課題となることが示された。
(3) ダルクは、当事者が当事者を支えるという理念とミーティングと呼ぶ活動を共有しつつ、各施設が独自に運営と活動を定めている。運営には、障害者総合支援法(2012年)によるグループホーム等、法務省の緊急的住居確保・自立支援対策(2011年)による自立支援ホームによる補助金を9割が受けているが、半数以上が財政的困難を抱えている。入所者の87%が1年後までに1度も薬物使用なしといった成果を挙げている。
(4) LASH調査結果に関するフォーカスグループ面接によって、知り合いに陽性者がいてもHIVが身近に感じられないギャップ、HIV陽性者のイメージが不鮮明ゆえの検査への消極性、U=Uメッセージの未浸透、薬物を区分して使用状況の違いを精査する必要性が指摘された。新たな啓発活動の方向としては、自己肯定感の低さが薬物使用につながることから、それを高めるメッセージを、媒体を工夫しコミュニティに広範に発信する必要性が指摘された。
(2) 精神保健福祉センターは、精神保健福祉法改正(1995年)以降、依存症の精神福祉相談、家族教室(1999年-)、薬物依存者回復プログラム(2010年-)を提供し、健康問題として薬物使用に取り組む事業を進めている。若年者対象の回復プログラムでは性感染症教育も組み込まれているが、HIV診療医療機関との連携はなく、今後の課題となることが示された。
(3) ダルクは、当事者が当事者を支えるという理念とミーティングと呼ぶ活動を共有しつつ、各施設が独自に運営と活動を定めている。運営には、障害者総合支援法(2012年)によるグループホーム等、法務省の緊急的住居確保・自立支援対策(2011年)による自立支援ホームによる補助金を9割が受けているが、半数以上が財政的困難を抱えている。入所者の87%が1年後までに1度も薬物使用なしといった成果を挙げている。
(4) LASH調査結果に関するフォーカスグループ面接によって、知り合いに陽性者がいてもHIVが身近に感じられないギャップ、HIV陽性者のイメージが不鮮明ゆえの検査への消極性、U=Uメッセージの未浸透、薬物を区分して使用状況の違いを精査する必要性が指摘された。新たな啓発活動の方向としては、自己肯定感の低さが薬物使用につながることから、それを高めるメッセージを、媒体を工夫しコミュニティに広範に発信する必要性が指摘された。
結論
(1) 陽性者の生活と社会参加に関する質問紙調査では、対象を拠点病院からクリニックの外来患者に拡げ、質問項目に介護等高齢化に関わる事項を加えた。
(2) 精神保健福祉センターにおいて、ChemSexとしての薬物使用を視野にいれた相談の現状を、職員およびHIV陽性MSM利用者を対象に調査する質問紙を作成した。
(3) ダルクと利用者に関する先行研究を調査し、MSMおよびHIV陽性者受け入れ経験のある施設での課題、ない施設での準備状況を調査する質問紙を作成した。
(4) MSMのインフルエンサーに対する面接調査を通して、量的調査データの再分析の視点と、薬物使用・HIV感染の予防啓発の方向への示唆を得た。
(2) 精神保健福祉センターにおいて、ChemSexとしての薬物使用を視野にいれた相談の現状を、職員およびHIV陽性MSM利用者を対象に調査する質問紙を作成した。
(3) ダルクと利用者に関する先行研究を調査し、MSMおよびHIV陽性者受け入れ経験のある施設での課題、ない施設での準備状況を調査する質問紙を作成した。
(4) MSMのインフルエンサーに対する面接調査を通して、量的調査データの再分析の視点と、薬物使用・HIV感染の予防啓発の方向への示唆を得た。
公開日・更新日
公開日
2019-05-29
更新日
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