文献情報
文献番号
201819014A
報告書区分
総括
研究課題名
拠点病院集中型から地域連携を重視したHIV診療体制の構築を目標にした研究
課題番号
H30-エイズ-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
猪狩 英俊(千葉大学 医学部 附属病院 感染制御部)
研究分担者(所属機関)
- 谷口 俊文(千葉大学 医学部 附属病院 感染制御部)
- 丹沢 秀樹(千葉大学 医学部 歯科口腔外科)
- 佐々木 信一(順天堂大学 医学部 )
- 鈴木 明子(御子神 明子)(城西国際大学 看護学部)
- 鈴木 貴明(千葉大学 医学部 附属病院 薬学部)
- 葛田 衣重(千葉大学 医学部 附属病院 地域医療連携部)
- 高柳 晋(千葉大学 医学部 附属病院 感染制御部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
なし
研究報告書(概要版)
研究目的
千葉県HIV拠点病院会議(事務局 千葉大学医学部附属病院)の基盤を利用し、拠点病院集中型のHIV診療から地域連携を重視したHIV 診療体制の構築を目的とする。
強力な抗ウイルス療法が開発され、HIV/AIDS患者は長期生存が可能になった。この結果、HIV感染症患者の高齢化が進み、求められる医療も多様化してきた。
第一に、悪性腫瘍、心血管疾患、慢性腎臓病、骨粗鬆症、HIV関連神経認知障害等の合併症に対応することが必要になってきた。
第二に、高齢のHIV感染症患者は、近親者の支援が困難で、孤立傾向にある。高齢化の先には、介護や看取りについても向き合うことが必要になってきた。
第三に、依然としてHIV感染症患者に対する偏見や、医療機関からの受け入れ拒否がおこっている。
これまでは、HIV 拠点病院集中型の診療を行ってきた。しかし、このような課題に対応するためには、HIV 拠点病院と地域の医療機関との連携を重視した診療体制を構築することが必要になってきたと考える。
強力な抗ウイルス療法が開発され、HIV/AIDS患者は長期生存が可能になった。この結果、HIV感染症患者の高齢化が進み、求められる医療も多様化してきた。
第一に、悪性腫瘍、心血管疾患、慢性腎臓病、骨粗鬆症、HIV関連神経認知障害等の合併症に対応することが必要になってきた。
第二に、高齢のHIV感染症患者は、近親者の支援が困難で、孤立傾向にある。高齢化の先には、介護や看取りについても向き合うことが必要になってきた。
第三に、依然としてHIV感染症患者に対する偏見や、医療機関からの受け入れ拒否がおこっている。
これまでは、HIV 拠点病院集中型の診療を行ってきた。しかし、このような課題に対応するためには、HIV 拠点病院と地域の医療機関との連携を重視した診療体制を構築することが必要になってきたと考える。
研究方法
千葉大学医学部附属病院は、エイズ中核拠点病院である。千葉県内には拠点病院が10医療機関ある。千葉県の支援を受けて、エイズ拠点病院会議を開催し、千葉県内のHIV感染症診療体制を整備してきた。本研究では、HIV拠点病院会議の組織を基盤に行う。分担研究者もHIV拠点病院会議の参加者を中心に選定した。
結果と考察
1 千葉県内のHIV感染症患者の地域分布と受診行動(地域連携にむけた基盤調査)
千葉市のHIV感染症診療は、拠点病院を中心に比較的地域完結型であり、拠点病院を核とする地域連携の基盤が整っている。船橋市、市川市、松戸市、柏市のHIV感染症診療は、東京依存型である。潜在的HIV感染症患者を過小評価し、地域の現状インフラを過大評価すると、HIV感染症診療が後手に回るリスクがある。
2 歯科医療機関の感染対策の現状調査
千葉県歯科医師会に協力を要請したアンケート調査である。HIV感染症患者の診療可能な歯科医療機関を整備するためには、歯科医療機関の感染対策の整備と地域医科医療機関の支援の重要性が示された。
3 地域病院へのHIV感染者の連携
病院感染防止対策加算を算定している病院のHIV診療体制についてアンケート調査を行った。加算11および2の病院でHIV感染者の受け入れを可能にするためには専門医の普及、知識の啓蒙と針刺し・体液曝露の予防薬配置が重要である。加算1病院はエイズ拠点病院との連携の上、入院・外来ともにHIV感染以外の疾患治療を受け入れることが可能であると考えられる。
4 透析患者、CKD患者における地域連携
血液透析を要するHIV感染者の診療体制の整備を目的とした。血液透析を行っている千葉県内148施設を対象にアンケート調査を行い、68施設から回答を得た。現段階で受け入れ可能な施設は併せて22施設(32.4%)であった。受け入れ阻害因子としては感染対策マニュアルの整備ができていないと回答した施設が最も多く26施設(38.2%)であった。HIV感染症患者を受け入れるにあたって、いくつかの阻害因子があることが示された。
5 患者が地域の保険薬局を選んだ時に対応できるシステム作りに関する研究
千葉県内外の自立支援医療(更生医療)指定薬局に対する実地ならびにアンケート調査の結果、抗HIV薬の在庫管理について課題があること、抗HIV薬の服薬指導時には他疾患治療薬とは異なる特有の課題があることが明らかとなった。
6 歯科領域におけるHIV診療体制の現状
歯科診療を実施するには、単科での体制構築には限界があり、病院としての歯科に対する支援体制が必要である。
7 地域医療のコーディネートに関する研究
HIV陽性者を受け入れた経験のある施設の調査、制度のてびき作成、地域の他職種むけ研修の実施により、HIV陽性者の地域生活を支える体制を整えることができる。
8 地域看護の役割
千葉県内の訪問看護ステーション30施設で聞き取りを行い、HIV感染症患者の受け入れ経験があるのは4施設であった。また、介護施設担当者を対象に意見交換会を開いた。本年度はパイロット研究であり、HIV感染症患者の地域連携に必要な地域看護の課題を抽出した。
千葉市のHIV感染症診療は、拠点病院を中心に比較的地域完結型であり、拠点病院を核とする地域連携の基盤が整っている。船橋市、市川市、松戸市、柏市のHIV感染症診療は、東京依存型である。潜在的HIV感染症患者を過小評価し、地域の現状インフラを過大評価すると、HIV感染症診療が後手に回るリスクがある。
2 歯科医療機関の感染対策の現状調査
千葉県歯科医師会に協力を要請したアンケート調査である。HIV感染症患者の診療可能な歯科医療機関を整備するためには、歯科医療機関の感染対策の整備と地域医科医療機関の支援の重要性が示された。
3 地域病院へのHIV感染者の連携
病院感染防止対策加算を算定している病院のHIV診療体制についてアンケート調査を行った。加算11および2の病院でHIV感染者の受け入れを可能にするためには専門医の普及、知識の啓蒙と針刺し・体液曝露の予防薬配置が重要である。加算1病院はエイズ拠点病院との連携の上、入院・外来ともにHIV感染以外の疾患治療を受け入れることが可能であると考えられる。
4 透析患者、CKD患者における地域連携
血液透析を要するHIV感染者の診療体制の整備を目的とした。血液透析を行っている千葉県内148施設を対象にアンケート調査を行い、68施設から回答を得た。現段階で受け入れ可能な施設は併せて22施設(32.4%)であった。受け入れ阻害因子としては感染対策マニュアルの整備ができていないと回答した施設が最も多く26施設(38.2%)であった。HIV感染症患者を受け入れるにあたって、いくつかの阻害因子があることが示された。
5 患者が地域の保険薬局を選んだ時に対応できるシステム作りに関する研究
千葉県内外の自立支援医療(更生医療)指定薬局に対する実地ならびにアンケート調査の結果、抗HIV薬の在庫管理について課題があること、抗HIV薬の服薬指導時には他疾患治療薬とは異なる特有の課題があることが明らかとなった。
6 歯科領域におけるHIV診療体制の現状
歯科診療を実施するには、単科での体制構築には限界があり、病院としての歯科に対する支援体制が必要である。
7 地域医療のコーディネートに関する研究
HIV陽性者を受け入れた経験のある施設の調査、制度のてびき作成、地域の他職種むけ研修の実施により、HIV陽性者の地域生活を支える体制を整えることができる。
8 地域看護の役割
千葉県内の訪問看護ステーション30施設で聞き取りを行い、HIV感染症患者の受け入れ経験があるのは4施設であった。また、介護施設担当者を対象に意見交換会を開いた。本年度はパイロット研究であり、HIV感染症患者の地域連携に必要な地域看護の課題を抽出した。
結論
HIV感染症の地域連携の基盤について調査した。千葉県内のHIV診療体制と受診行動を評価した。拠点病院とHIV感染症患者の分布、歯科診療体制、病院感染防止対策加算算定病院、保険薬局、地域コーディネート、介護訪問看護など多角的検討を行った。
千葉県内では、HIV診療体制基盤は整備されていることが判った。しかし、具体的行動を検討する場合、解決すべき課題も多いことが判明した。これら解決すべき課題を、次年度の重点目標としたい。
千葉県内では、HIV診療体制基盤は整備されていることが判った。しかし、具体的行動を検討する場合、解決すべき課題も多いことが判明した。これら解決すべき課題を、次年度の重点目標としたい。
公開日・更新日
公開日
2020-03-11
更新日
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