HIV感染症の曝露前及び曝露後の予防投薬の提供体制に対する研究

文献情報

文献番号
201819012A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の曝露前及び曝露後の予防投薬の提供体制に対する研究
課題番号
H29-エイズ-一般-009
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
水島 大輔(国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 谷口 俊文(千葉大学 医学部付属病院)
  • 生島 嗣(ぷれいす東京)
  • 照屋 勝治(国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1. HIV感染症の曝露前予防(PrEP:pre-exposure prophylaxis)の提供体制に関して、日本での妥当性、実現可能性の評価を目的とし、当院に設立された男性間性交渉者(MSM:men who have sex with men)コホートで、単群介入試験による小規模のpilot studyを施行する。
2. 国内でのPrEP導入の課題の参考とするため、海外で先行するPrEPの取り組みの事例を調査し、国内でのPrEPの妥当性、実現可能性を評価する。
3. 日本におけるPrEPおよび非職業従事者の曝露後予防内服(nPEP:non occupational post-exposure prophylaxis)に関する認知度、ニーズを明らかにするために、MSMを対象にインターネットを介した大規模調査を実施する。これによりPrEPおよびnPEPの効果的な提供体制について検討する。
4.HIV患者の診療の均てん化のためには、針刺し等のHIV曝露後の予防内服(PEP)体制が、HIV拠点病院以外の一般医療機関においても整備される必要がある。現時点におけるPEP体制の全国の整備状況を把握して問題点を抽出し、これらの解決法の模索・提言を行うことで、日本でのHIV診療の均てん化を目指す。
研究方法
1. PrEPのpilot studyでは、対象者に抗HIV薬ツルバダ一日一回一錠のdaily PrEPを実施し、PrEP開始前後のHIV/STI罹患率を評価するために、一群による介入試験を実施する。対象者のリクルートのために、MSMコホートを設立し、PrEP開始前のHIV/STI罹患率を評価しており、平成30年度は、同コホートにおいてPrEPのpilot studyの組入を完了し、最低2年間フォローし、PrEPの日本における実現可能性の評価につなげていく。
2. PrEPの海外の先行事例調査は医療体制が日本と類似している欧米の事例の検証が重要である。欧豪の調査を行い、さらにPrEP先進国である発展途上国の調査に広げていく。平成30年度には、先進国の事例を対象とし、PrEP提供体制の制度的側面も含めた調査を行う。
3. MSM向けの出会い系アプリ利用者を対象に無記名自記式アンケート調査を2018年10-11月に実施し、6,247人が分析の対象となった。分析を続け啓発資材を作成する予定である。
4. アンケート結果を踏まえ、PEP実施体制の現状についてHIV医療体制制班および厚労省へ情報を提供し意見交換を行う。研究班としてHIV医療の全国均てん化を目指したPEP体制の提言を行う。
結果と考察
1. PrEPの臨床研究の組入に向けて約300名のMSMコホートの確立し評価を実施した。その結果、本邦のMSMのHIV感染リスクがPrEPの適応となる程度に高いことが示されたとともに、他のSTIの罹患率も明らかになった。同データはPrEPを実施することによるHIV・STI罹患率への影響を評価する基礎データとなり、PrEPの臨床研究を進めていく上で重要である。さらに同コホートで120名のPrEPの臨床研究参加者の組入を2019年3月末に完了し、実現可能性の評価を行っている。
2. 海外でのPrEPの先行事例の予備調査として、臨床試験も含めたPrEP実施国48カ国の状況を概観し、ほとんどの国ではMSMコホートをターゲットにしていることが明らかになった。平成30年度におけるPrEPの海外先行事例調査の対象先として、台湾、ロンドンとサンフランシスコを訪問した。
3.アンケート調査により、PrEPに関して、6割以上が使いたいと感じており、8割以上が日本でもPrEPを導入すべきと思っていることが明らかになった。
4. 現行のPEP体制はHIV患者の診療を一般化するには十分とは言いがたい。マニュアルを公開している自治体は半数のみであり、2時間以内にアクセス可能なPEP対応機関を指定しているのも半数に過ぎなかった。費用面が問題となるPEP薬の準備体制も自治体により異なっていた。
結論
1. 日本のPrEPの妥当性、実現可能性を評価するために、PrEPに関する単試験によるpilot studyの120名のリクルートを完了した。
2. PrEPは海外で加速的に導入されており、高リスク群をターゲットにすれば有効にHIVを予防可能である。日本においても早期導入およびガイドラインの整備が必要である。
3. わが国のMSMコミュニティを対象としたニーズ調査は、PrEPの実現可能性を検討するために重要であり、今後PrEPの日本導入の検討に必要不可欠である。
4. PEP体制はHIV医療の一般化を目指す上で現状では不十分である。研究班からの提言による改善を目指す。

公開日・更新日

公開日
2019-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-05-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201819012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,700,000円
(2)補助金確定額
11,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 367,256円
人件費・謝金 690,900円
旅費 3,010,016円
その他 4,931,828円
間接経費 2,700,000円
合計 11,700,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-05-29
更新日
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