職域での健診機会を利用した検査機会拡大のための新たなHIV検査手法開発研究

文献情報

文献番号
201819010A
報告書区分
総括
研究課題名
職域での健診機会を利用した検査機会拡大のための新たなHIV検査手法開発研究
課題番号
H29-エイズ-一般-007
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
川畑 拓也(地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 微生物部 ウイルス課)
研究分担者(所属機関)
  • 森 治代(地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 微生物部 ウイルス課)
  • 駒野 淳(国立病院機構 名古屋医療センター 統括診療部 臨床検査科)
  • 本村 和嗣(地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 微生物部 ウイルス課)
  • 小島 洋子(地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 微生物部 ウイルス課)
  • 渡邊 大(国立病院機構 大阪医療センター 臨床研究センター エイズ先端医療研究部 HIV感染制御研究室)
  • 大森 亮介(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染症は早期発見・治療による感染拡大と発症の防止が必要であるが、近年、我が国では症状が出て初めて感染が判明するHIV症例が約3割を占め、そのうち就労世代(30〜59歳)は7割以上を占める。保健所での無料匿名HIV検査は、就労世代にとっては利用しにくく、そのため発症する前に感染に気づく機会が失われている恐れがある。そこで本研究では、労働安全衛生法第66条に基づき事業者が労働者に対して実施する定期健康診断(規則第44 条)において、労働者が事業者に結果を知られること無くHIV検査を受けられる環境を、健診センターあるいは人間ドック施設(以下、健診施設)に整備する方法の確立と、健診受診者に最新のHIV治療の情報や陽性者向け支援制度等を紹介することによるHIV/エイズの啓発と、健診機会のHIV検査を通じて潜在的な感染者を発見するための費用対効果の評価を行う。
研究方法
研究(1)流行する梅毒トレポネーマの遺伝子タイピング研究
本研究では、梅毒トレポネーマの流行が(MSMでない)一般男女に拡大している事を明らかとするため、ゲイ・バイセクシャル男性の梅毒疑い患者、異性愛者の男女の梅毒疑い患者から得た潰瘍滲出液のスワブあるいは尿検体合計95例よりDNAを抽出し、梅毒トレポネーマ遺伝子のタイピングを実施した。
研究(2)健診センター・人間ドック施設におけるHIV・梅毒検査試行への取り組み
本研究では、健診施設において実際にHIV検査・梅毒検査の試行を行うため、協力健診施設を募り、実施に向けた協議を重ねた。
研究(3)健診センター・人間ドック施設で使用するHIV・梅毒検査案内の作成
本研究では、健診施設におけるHIV・梅毒検査提供時に広報資材兼啓発資材として健診利用者全員に配布する「検査案内」を作成した。
研究(4)健診機会を利用したHIV知識習得の有効性の検討
広報資材による知識習得の効果を評価するには、知識提供前後のHIV感染症に関する理解度を比較する必要があるため、本研究では、健診センターの受検者を対象に知識提供前のHIV感染症に対する理解を測る書面調査を行った。
結果と考察
研究(1)95例の検体の内、PCR陽性であった36例(男性18例、女性11例、MSM7例)について解析した結果、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum subsp. pallidum)(TPA)のSS14系統が31例(86.1%)、TPAのNichols系統が1例(2.8%)、TENが2例(5.6%)であり、感染経路が異性間性的接触の検体では、14d/f-SSR8の遺伝子型のTPAが78.6%と多くを占めていたが、同性間性的接触の検体ではこの遺伝子型のTPAは1例もみられなかった。
研究(2) 協力の得られた健診施設と協議を重ねた結果、以下の様式で検査を提供頂けることとなった。・研究班開発の検査案内兼啓発資材の使用、・HIVスクリーニング検査と梅毒TP抗体検査の提供。・結果返却は陽性者については対面で、陰性者には圧着ハガキによる本人宛親展の郵送で実施。・陽性者には保健所を紹介し、保健所にてカウンセリングとHIV確認検査・梅毒の定量検査を実施し、さらに陽性の場合は医療機関(拠点病院や専門医院)に紹介。
研究(3) 読みやすさと堅く無い印象になるよう配色やイラストの使用にこだわった案と、同等の内容だが検診施設のイメージに合わせた案の2種類の案内を作成した。
研究(4)アンケート調査には男性48名、女性54名、不明1名の計103名が参加し、内閣府が実施した調査の対象と同様の性比であったが、年齢構造には差が見られた。またアンケートでは、HIVとエイズの関係の認識について、正しく理解していたと回答した人数が少なかった。これは、本研究の調査対象がまだHIVの理解度を高める事ができる余地がある事を意味し、本研究の主題である、健診施設でのHIVの知識習得の効果が期待される。
結論
研究(1) 大阪地域の異性間性的接触で流行している梅毒トレポネーマは、男性同性間の性的接触で流行している梅毒トレポネーマとは異なる遺伝子型であることを明らかにした。
研究(2) これまで健診利用者にHIV検査・梅毒検査を提供していなかった健診施設において、検査を提供する直前までこぎ着けた。今後他の健診施設への波及効果が期待される。
研究(3) 手にした者のHIVと梅毒の知識習得を可能とする、健診施設におけるHIV・梅毒検査の案内資材を試作した。今後、実際に使用してその効果を検証する。
研究(4) 本研究の調査対象ではHIVの知識習得に余地があり、健診施設でのHIVの知識習得の効果が期待される。

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

その他
その他
総括研究報告書
その他
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
その他
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201819010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,997,263円
人件費・謝金 666,555円
旅費 505,819円
その他 1,990,363円
間接経費 1,840,000円
合計 8,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-