HIV検査の受検勧奨のための性産業の事業者及び従事者に関する研究

文献情報

文献番号
201819009A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV検査の受検勧奨のための性産業の事業者及び従事者に関する研究
課題番号
H29-エイズ-一般-006
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
今村 顕史(東京都立駒込病院 感染症科)
研究分担者(所属機関)
  • 渡會 睦子(東京医療保健大学)
  • 土屋 菜歩(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構)
  • 川名 敬(日本大学 医学部産婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
9,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 女性が従事する性産業の形態は、時代とともに急速に複雑化・多様化してきている。また、MSMやトランスジェンダーの性産業との関わりについても、十分な調査が行われていなかった。したがって、潜在するハイリスク層の実態調査を行い、より感染リスクの高い対象者への受検勧奨と予防啓発を進めることが、HIV感染症を含む性感染症対策における喫緊の課題であると考えられる。本研究では、多様化・複雑化している性産業の実態を、多角的な調査によって把握する。そして、若い女性に増加している梅毒、MSMにおけるA型肝炎など、ハイリスク層で流行している性感染症への啓発方法など、現代の性産業の実態に合った新たな啓発・受検勧奨法の立案を目指す。
研究方法
 本研究においては、性産業に従事する女性や事業者に加えて、より感染リスクの高いMSM・トランスジェンダーの従業者の調査も行う。さらに、企業健診でのアンケート等による地域一般住民への調査、性感染症クリニックや風俗街を有する自治体の保健所と連携した性感染症の実態調査など、より多角的な調査によって現代の性産業の現状を把握する。これらの調査では、プライバシーや人権について十分な配慮を行い、得られた情報も慎重に扱っていく。特に、性産業従事者に直接関わる分担研究では、従業者をサポートする当事者グループ、セクシャルマイノリティーに関わるNPOの代表者、文化人類学者、行政の担当者などを協力者とする研究体制も整えた。
結果と考察
【研究1】性産業に従事する事業者と女性従業者の実態調査と受検勧奨
性産業に従事する女性384名の実態調査では、副業としてCSW以外の仕事をもっている女性が増えており、性感染症の危険性が高い性的サービスも多い中で、正しい知識を得る機会は少ないことが明確となり、今後の性感染症知識普及・受検勧奨のための研修会開催等の必要性が示唆される結果となった。
【研究2】性産業に従事するMSMとトランスジェンダーの実態調査と受検勧奨
 MSM・トランスジェンダーにおける研究では、1. 都内MSM向け性産業事業者のリスト化と性産業従事者数の概算、2.A型肝炎流行に関する情報発信への協力依頼をきっかけとした関係づくり、3. MSM-SWの置かれている状況の(インタビュー調査による)把握、という3つの調査を実施した。さらにMSMにおけるA型肝炎流行への対策を行い、アンケート調査によってその啓発効果を評価した。本研究の成果は、MSMへ向けて性感染症流行の迅速な啓発を行う方法として、今後の新たな性感染症の流行対策にも役立つはずである。
【研究3】性感染症クリニックの実態調査と啓発
 クリニックを対象とした研究では、1.産婦人科医療機関におけるCSW受診行動と梅毒検査の実施状況、2.産婦人科医療機関における非CSWのSTI希望受診と梅毒検査の実施状況、3.受検者からのSTIチェック希望項目、4.梅毒陽性者数、などの調査が行われた。本調査によって、妊婦検診としてHIV検査を行っている産婦人科においても、性感染症としてのHIV検査に対する意識の低さという現状なども明らかになっている。
【研究4】地域一般住民の性サービスに関わる実態調査と受検勧奨
 地域一般住民の性サービスにかかる実態調査では、幅広い年齢層と業種の男性が勤務する企業を選定し、自記式無記名質問紙による調査を実施した。596名のアンケート結果では、お金のやり取りを伴う性交渉経験率は36%であり、派遣型の性風俗利用が店舗型の利用を上回っていた。能動的な性感染症検査受検は少ないことが明らかとなり、日常生活、または職域の中で、HIVや性感染症に関する情報提供、予防啓発が重要であることが示唆された。
結論
 本研究による多角的な調査によって、時代とともに変化してきた現代の性産業の実態が把握され、その問題点や課題が抽出されてきている。そして、自治体の担当者とも連携した研究計画によって、現代の性産業の多様性や複雑性に合った、より有効な啓発法の検討も行っている。これらの成果は、今後のHIVを含む性感染症への対策において、より実効性をもった事業としても機能するような、新たな受検勧奨法の開発につながることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2019-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-06-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201819009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,000,000円
(2)補助金確定額
16,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,103,642円
人件費・謝金 4,330,338円
旅費 326,661円
その他 8,939,359円
間接経費 300,000円
合計 16,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-06-24
更新日
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