日本におけるHIV感染者・エイズ患者の発生動向に関する研究

文献情報

文献番号
201819008A
報告書区分
総括
研究課題名
日本におけるHIV感染者・エイズ患者の発生動向に関する研究
課題番号
H29-エイズ-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松岡 佐織(国立感染症研究所 細菌第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染拡大抑制に向けWHOはカスケードケアに基づく90-90-90達成を目指すことを推奨している。これは、「診断率」、診断者の「治療率」、治療の「成功率」のいずれも90%以上を各国が目指すものである。国内でHIV/AIDSは後天性免疫不全症候群として5類感染症に指定されているが、累積HIV感染者数(PLHIV)を推計することが必要であり、国内でも複数の研究が行われてきた。本研究班のうち、砂川グループ(砂川G)では、パイロット調査を踏まえ、長期的にサーベイランス上のCD4陽性T細胞数の情報を用いて、継続的・安定的に国内の累積HIV感染者数の推計法の導入を検討することを目的とする。松岡グループ(松岡G)では、地域におけるHIVの年ごとの報告数、診断率等も多様であることを加味して、地域特性が生じる背景や、想定される世代を含むリスクの分析、これらのたすき掛け等の層別化による我が国全体での累積HIV感染者数をより詳細に分析する。累積HIV感染者数の推定に加え、地方衛生研究所と拠点病院の連携により、カスケードケア分析に繋げる。
研究方法
砂川Gにおいては、論文レビューやHIV感染症診療の専門医師と自治体の感染症の担当者にインタビューの実施を行った。モデリングの要素が強い分析であることから、「解析担当」として、モデリングの専門家との一部共同研究として行う体制を整えた。以下、方法論を列挙する。
(1)ケンブリッジ法:CD4数を用いたMultistageベイズ法による逆算法。
(2)ECDC法(ロンドン法):CD4数減少率(CASCADE)を用いた公開プログラムによる逆算法。
(3)スペクトラム法(UNAIDS法):途上国でも使用の公開プログラムによる推計(CD4数にて補強)
松岡Gにおいては、累積HIV感染者数の算出、及び未診断者動向の解析として、新たにHIV陽性が判明した血液検体を用いて、米国CDCにより開発されたRITA(Recent Infection testing algorism)に基づきスクリーニング検査(迅速診断)、確定検査(Western blot、NAT法)の判定結果を再解析すると共に、抗HIV抗体陽性検体に関してLag-Avidity assay(通称Incidence assay)に着手した。
結果と考察
砂川Gでは、初年度の結果を受け、平成31年1月より感染症発生動向調査において診断時CD4陽性細胞数の届け出が組み込まれた。二年目は大阪府、沖縄県において収集した情報を元に、前述の方法を用いた累積HIV感染者数の推計を実施している。米国CDCにてHIV感染者数の推計方法について情報収集を行い日本におけるHIV感染者数推計に関する示唆を得た。今後、診断時CD4値を元にした安定的で費用効果にも優れる全国推計導入について検討する。松岡Gにおいては、累積HIV感染者数の算出、及び未診断者の動向に関する解析として、2015年以降、保健所等の公的検査機関でHIV陽性が診断された血液検体を対象として調査を進める研究協力体制を構築した。平成31年1月末時点で複数県の施設でIncidence assayを開始した。過去10年分の血清学的データに関して、エイズ発生動向調査報告数とともに統計学的解析を加え、2006年以降の未診断者を含む日本国内の新規HIV感染者(Incidence)数の推定、および新規HIV感染者の診断率を推定し、エイズ発生動向委員会にて参考値として提供した。
結論
感染症発生動向調査の改善という具体的な行政施策も絡めて、HIV/AIDSのより適正な病態の把握や、複数の方法に基づく累積HIV感染者数の推定など、本研究班の取り組みは、国としての90-90-90を構築する上で重要である。わが国における未治療のHIV感染者におけるCD4減衰曲線を分析していく方向性など、学術的にも潜在的な意義は大きい。2年目は倫理審査などの諸手続きを経て、現在関係機関との調整が進んでおり、年度内の具体的な進展が期待される。

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201819008Z