MSMに対する有効なHIV検査提供とハイリスク層への介入方法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201819004A
報告書区分
総括
研究課題名
MSMに対する有効なHIV検査提供とハイリスク層への介入方法の開発に関する研究
課題番号
H29-エイズ-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
金子 典代(公立大学法人名古屋市立大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岩橋 恒太(特定非営利法人 akta)
  • 和田 秀穂(川崎医科大学血液内科学)
  • 健山 正男(国立大学法人琉球大学大学院医学系研究科)
  • 塩野 徳史(大阪青山大学健康科学部・看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
17,380,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は次の3点である。
1.医療機関とMSMをサポートするNPO aktaが連携した検査システム「HIVcheck.jp」を活用し、ハイリスクMSM層の検査受検推進を図る。また本検査手法を用いて、受検者のHIV感染ステータスと行動データをリンクさせた血清行動疫学調査を実施し、ハイリスク群の明確化をはかる。
2.地方都市で、地域性に配慮した形で公的機関以外の医療機関等を活用したHIV検査の提供体制を整備し、対面型の接触を避けるMSMへの検査促進を行う。
3.当事者NGOが協働し、従来の予防介入が届きにくかったハイリスクMSMの実態把握と有効な介入方法の検討を行う。
研究方法
本研究では、都市部では「HIVcheck.jp」を活用した検査機会の拡大、受検者の感染ステータスと質問紙調査による行動データをリンクさせた血清行動疫学調査を実施する。また、地方都市では、急性感染期の症状を見逃さず適切に検査が提供できるよう医療職種への啓蒙と、コミュニティに向けて急性感染期に関する情報発信を同時に行う。また中四国地域で、医療機関等を活用した検査提供体制の整備を図る。またNGOが協働し、従来の予防介入が届きにくかったハイリスクMSMの実態把握と有効な介入方法の検討を行う。研究1.自己検査キットによる検査機会の拡大と血清行動疫学調査の実施、研究2.地方における新たな検査機会の開発‐医療者からの検査推奨によるMSMの検査受検環境改善、研究3. 地方における新たな検査機会の開発‐クリニック・診療所における検査機会の拡大、研究4. 地方都市での陽性者の検査・予防サービスの接点に関する調査、研究5.よりハイリスクなMSM層の解明と有効な介入方法の検討の分担研究により遂行する。
結果と考察
研究1は、aktaにて平成30年度末までに990キットを配布、ACCにて790件のスクリーニング検査を実施した。検査結果と行動調査のリンクも97%の対象者から同意を得た。スクリーニング陽性者の確認検査のための医療へのつなぎを向上できるよう、検討を重ねていく必要がある。コミュニティセンター以外の商業施設でも配布を実施した。次年度も新たな施設で配布を実施し、有効可能性の検証を続ける。研究2については、HIV早期診断のために、医療者への適切なタイミングでの検査勧奨の促進、コミュニティセンターでの那覇市による検査を実施した。また沖縄県のHIV陽性者のMSMと非MSMの比較分析から、MSMにおいては、HIV受検率が有意に低いことを示した。無症候性のHIV患者を効果的に受検行動に誘導するプログラムの開発が重要である。研究3は新たにクリニックを開拓した、中四国は当事者NGOの活動基盤も脆弱であるため広域連携など工夫をしながら、本検査の定着を図る。研究5では、全国NGOと協働し、検査未受検層、ハイリスク層を明確化していく。抗HIV薬の服薬治療により、ウイルス量が検出限界未満を維持することで、他者に感染させる可能性がほぼなくなるといった新しい知識の保有と検査行動の正の関連も示された。これらの新しい知識の普及、ハイリスクMSM層へ届く介入方法も検討していく。
結論
わが国では未達成である「90%の陽性者が自身の感染ステータスを把握する状況」の到達のためにも、self-testingの手法の一つである「HIVcheck.jp」がMSMコミュニティにて浸透しうるかを検証する試みは社会的にも意義が高い。地方都市では、急性感染期の医療機関の早期受診の促進、医療者からの適切な時期に検査勧奨を行うことはきわめて重要である。医療とコミュニティが協働し、医療者、MSMコミュニティ双方に働きかける社会的意義は大きい。また従来の商業施設ベース型の介入が届きにくかったハイリスクMSMの実態把握や介入開発は日本では未実施であり社会的意義は高い。

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201819004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,987,000円
(2)補助金確定額
19,987,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,488,486円
人件費・謝金 3,343,286円
旅費 2,019,350円
その他 9,556,734円
間接経費 2,607,000円
合計 20,014,856円

備考

備考
差額が27,865円生じている。内訳は研究分担者の自己資金27,843円、研究分担者の所属大学が利用している金融機関の利息13円である。

公開日・更新日

公開日
2020-04-06
更新日
-