HIV感染症の合併症に関する研究

文献情報

文献番号
201819002A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の合併症に関する研究
課題番号
H28-エイズ-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
岡 慎一(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 吉村 浩太郎(自治医科大学外科学講座形成外科学部門)
  • 南本 亮吾(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 放射線核医学科)
  • 中野 隆史(群馬大学 重粒子線医学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血友病/HIV感染者は、感染から30年という長い経過をもつという特徴がある。過去にd-drugを服用した時期もあり、リポジストロフィで苦しむ患者も多い一方、今後agingに伴うエイズに関連しない悪性腫瘍や認知症などの発症が、HIV感染症の経過の長さゆえ、他のHIV感染者に比べ多くなる可能性も危惧される。本研究では、血友病/HIV感染者のこれら問題点を解決する目的で、リポジストロフィに対する治療法の検討(分担1)と悪性腫瘍(分担2)及び認知症(分担3)のスクリーニングを行う。また、血友病/HIV/HCV重感染患者における肝臓癌は、進行が速く、通常の肝臓癌の治療だけでは、予後の悪い患者が散見されている。このため、分担4として、重粒子線による肝細胞癌治療の安全性及び有効性の確認を前向き観察研究として実施する。
研究方法
分担1:リポジストロフィに対する治療法の検討では、BMI>20の患者においては、大腿部、腰背部、腹部より、脂肪吸引法により皮下脂肪を採取し、顔面の脂肪萎縮部位に注入移植術を行う。BMI<20の患者においては、脂肪採取に危険が伴うため、局所麻酔下に架橋ヒアルロン酸注射剤(Restylane&reg;)注入術を行う。採取した脂肪組織の一部を研究目的に使用する。治療成績は、術前と術後で、写真、ビデオ、CT(もしくはMRI)を用いた3次元画像解析により、12か月後に最終評価する。必要に応じて、組織生検を行う。
分担2:agingに伴う悪性腫瘍の早期発見に関する研究では、早期発見に適したスクリーニング法を開発する目的で、FDG-PETと部位特異的な検査を組み合わせた検査を実施する。対象患者数は、当院に主として通院している血友病患者約50名とする。
分担3:agingに伴う認知症の罹患率に関する研究では、認知症スクリーニング目的で、FDG-PETを実施する。この部分は、分担2と共通部分である。対象患者数も同じである。本研究では、認知症としてHANDに限定せずagingに関連するアルツハイマー型認知症などもカバーする。また、血管障害をカバーするために一部の症例においてはMRIも実施する。
分担4:血友病/HIV/HCV重感染患者の肝細胞癌に対する重粒子線治療の安全性・有効性試験では、群馬大学重粒子線医学センターに設置された医用重粒子加速器および照射装置を用いて、1日1回炭素イオン線照射を行う。
結果と考察
分担1に関しては、実施した6例の1年間の経過フォローを終え、効果が不十分であった2症例に対しヒアルロン酸の再投与を実施した。2回目の治療効果を判定し、本分担研究は終了とする。採取した脂肪組織に関する基礎的検討では、採取した脂肪についてマイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子解析を行い、前炎症状態、線維化亢進、インスリン抵抗性、中性脂肪の合成低下を示唆する結果を得た。
分担2:本年度は同意の得られた56名に対し2回目のFDG-PETのスクリーニングを行った。2回目でのスクリーニングで膵臓癌1例と肝臓癌1例の2例を新たに発見した。1回目のスクリーニングから1.2年の観察期間で(67.2PY)で、悪性腫瘍のincidenceは、2.99/100PY であった。血友病感染者の癌発生率は予想以上の高さであった。
分担3:FDG-PETで異常の見られた1例に関し、アルツハイマーの予防治療をおこなった。本例では、MoCA-J追加検査で16/30点であり、記憶、注意力、実行機能の低下が見られた。68例のMRI結果から、陳旧性脳出血痕と認知機能に有意な相関を認めた。
分担4:今年度は「血友病/HIV/HCV共感染の肝細胞癌に対する重粒子線治療の有効性・安全性試験」のプロトコールに沿い、2例に対し重粒子線治療を実施できた。有効性・安全性に関しては現状まで問題は無かったが、今後とも経過を追っていく予定である。
結論
分担1から分担3までは、予定通り研究が実施され当初の目的を達成し終了した。分担1の結論は、自己脂肪ではなくヒアルロン酸注入を推奨。分担2では、癌スクリーニングは重要性を確認。分担3の結論は、認知症のスクリーニングとしてのFDG-PETは推奨しない。分担4の重粒子線治療は、2例で安全に実施できたが、今後も全国規模での患者掘り起こしを行い、次期研究班でも症例を増やしていきたい。

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201819002B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染症の合併症に関する研究
課題番号
H28-エイズ-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
岡 慎一(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 吉村 浩太郎(自治医科大学 外科学講座 形成外科部門)
  • 南本 亮吾(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 放射線核医学科)
  • 中野 隆史(群馬大学 重粒子線医学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血友病/HIV感染者は、感染から30年という長い経過をもつという特徴がある。過去にd-drugを服用した時期もあり、リポジストロフィで苦しむ患者も多い一方、今後agingに伴うエイズに関連しない悪性腫瘍や認知症などの発症が、HIV感染症の経過の長さゆえ、他のHIV感染者に比べ多くなる可能性も危惧される。本研究では、血友病/HIV感染者のこれら問題点を解決する目的で、リポジストロフィに対する治療法の検討(分担1)と悪性腫瘍(分担2)及び認知症(分担3)のスクリーニングを行う。また、血友病/HIV/HCV重感染患者における肝臓癌は、進行が速く、通常の肝臓癌の治療だけでは、予後の悪い患者が散見されている。このため、分担4として、重粒子線による肝細胞癌治療の安全性及び有効性の確認を前向き観察研究として実施する。
研究方法
分担1:リポジストロフィに対する治療法の検討では、BMI>20の患者においては、大腿部、腰背部、腹部より、脂肪吸引法により皮下脂肪を採取し、顔面の脂肪萎縮部位に注入移植術を行う。BMI<20の患者においては、脂肪採取に危険が伴うため、局所麻酔下に架橋ヒアルロン酸注射剤(Restylane&reg;)注入術を行う。採取した脂肪組織の一部を研究目的に使用する。治療成績は、術前と術後で、写真、ビデオ、CT(もしくはMRI)を用いた3次元画像解析により、12か月後に最終評価する。必要に応じて、組織生検を行う。
分担2:agingに伴う悪性腫瘍の早期発見に関する研究では、早期発見に適したスクリーニング法を開発する目的で、FDG-PETと部位特異的な検査を組み合わせた検査を実施する。対象患者数は、当院に主として通院している血友病患者約50名とする。
分担3:agingに伴う認知症の罹患率に関する研究では、認知症スクリーニング目的で、FDG-PETを実施する。この部分は、分担2と共通部分である。対象患者数も同じである。本研究では、認知症としてHANDに限定せずagingに関連するアルツハイマー型認知症などもカバーする。また、血管障害をカバーするために一部の症例においてはMRIも実施する。
分担4:血友病/HIV/HCV重感染患者の肝細胞癌に対する重粒子線治療の安全性・有効性試験では、群馬大学重粒子線医学センターに設置された医用重粒子加速器および照射装置を用いて、1日1回炭素イオン線照射を行う。
結果と考察
分担1:HIV関連顔面脂肪萎縮症の患者6名に対し、脂肪移植またはヒアルロン酸注入による治療を行った。このうち結果がやや不良な2名に対し、ヒアルロン酸注入による追加治療を行った。結果は臨床的には良好で、放射線画像を用いた長期フォローアップを行った。
分担2:1回目のスクリーニングを行った68名のうち56名に対し2回目のスクリーニングを行い、新たに膵臓癌1例と肝臓癌1例の2例を発見した。1回目のスクリーニングから1.2年の観察期間で(67.2PY)で、悪性腫瘍のincidenceは、2.99/100PY であった。1回目で得られたPrevalence 5.9% と会わせて考えても、血友病感染者の癌発生率は予想以上の高さであった。
分担3:FDG-PETで異常の見られた1例に、アルツハイマーの予防治療をおこなった。本例では、MoCA-J追加検査で記憶、注意力、実行機能の低下が見られた。神経心理検査では27例(44.3%)に認知症を認めた。また、FDG-PRTでは、47例(69%)に-2SD以上の集積低下を認めたが、神経心理検査結果との間に有意な相関は無かった。一方、68例のMRI結果から、陳旧性脳出血痕と認知機能に有意な相関を認めた。
分担4:「血友病/HIV/HCV共感染の肝細胞癌に対する重粒子線治療の有効性・安全性試験に4例を登録。プロトコールに沿い、2例は適応外であったが、2例に対し重粒子線治療を実施できた。有効性・安全性に関しては現状まで問題は無かった。
結論
分担1では、顔面脂肪萎縮症の患者に対する自己脂肪注入とヒアルロン酸注入は共に有効であった。今後安全性の面から、ヒアルロン酸注入を推奨する。分担2では、実施した平均年齢49歳から癌発生率prevalence 5.9%およびincidence 2.99/100PYは共に予想より高率であった。今後、全国の血友病HIV感染者に対し、癌スクリーニングを推奨する。分担3では、認知症のスクリーニングとしてFDG-PETは、偽陽性率が高すぎ、不向きであると判断した。分担4では、重粒子線による肝臓癌治療は有効であった。

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201819002C

収支報告書

文献番号
201819002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
39,000,000円
(2)補助金確定額
36,107,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,893,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,805,962円
人件費・謝金 4,151,032円
旅費 4,717,371円
その他 10,432,635円
間接経費 9,000,000円
合計 36,107,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
-