文献情報
文献番号
201819001A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV検査受検勧奨に関する研究
課題番号
H28-エイズ-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
今村 顕史(東京都立駒込病院 感染症科)
研究分担者(所属機関)
- 伊藤 俊広(国立病院機構仙台医療センター HIV/AID包括医療センター)
- 井戸田 一朗(しらかば診療所)
- 上平 朝子(国立病院機構大阪医療センター 感染制御部)
- 加藤 真吾(慶応義塾大学医学部 微生物学・免疫学教室)
- 貞升 健志(東京都健康安全研究センター 微生物部)
- 佐野 貴子(嶋 貴子)(神奈川県衛生研究所 微生物部)
- 白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター エイズ先端医療研究部)
- 平 力造(日本赤十字社血液事業本部 安全衛生課)
- 塚田 訓久(国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター医療情報室 )
- 土屋 菜歩(国立大学法人東北大学 東北メディカル・メガバンク機構)
- 西浦 博(国立大学法人北海道大学 大学院医学研究院衛生学教室)
- 本間 隆之(公立大学法人山梨県立大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
56,215,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
HIV感染症の早期治療による予後改善だけでなく、感染予防の効果も示されたことで、これまで以上の早期診断が求められるようになっている。早期診断には、より効果的な検査手法を組み合わせ、質の高い検査を拡大していくことが必要である。また、各地域の状況に合った、長期的な戦略をもった検査体制を構築することが求められる。本研究班では、検査の質を丁寧に高めていくことでHIV受検体制の充実を図る。そして、自治体行政との連携モデルを構築することで、日本全体の検査体制を向上させ、HIV陽性者の早期診断をすすめることを目的とする。
研究方法
我が国の検査体制を「受検アクセスの改善」、「検査所の利便性向上」、「HIV診断検査の充実」という3つの柱に分け、各分担研究者は詳細な検討と改善を行っていく。そして、各研究の過程が、そのまま事業としての実効性をもって機能するように、早期診断に直接的な影響を与える研究計画を立案する。これらの丁寧に積み上げられた検査により、自治体と連携した検査体制のモデルを構築し、我が国の現状に合った質の高い検査体制を整備していくことを目指した。
結果と考察
「自治体と連携した検査モデルの構築と効果分析に関する研究」では、流行している梅毒啓発を利用した新たなHIV受検勧奨法の検討を行った。保健所に関する研究では、HIVと梅毒の検査に関するアンケート調査、梅毒検査導入に必要な解説も追加したHIV即日検査ガイドラインの改訂も行った。また、インターネットサイト「HIV検査・相談マップ」による研究でも、梅毒啓発のための新規ページを作成し、啓発冊子等の情報も掲載した。保健所や南新宿検査・相談室の調査によって、梅毒啓発によるHIV受検への誘導効果が確認され、全国の保健所におけるHIV検査数も、梅毒検査の追加によって増えてきている。HIV検査・相談マップの平成30年におけるアクセス数は210万件と、昨年より50万件以上増加し、特に梅毒啓発ページへのアクセス数は16万件となり、梅毒検査情報の提供による効果も示された。
郵送検査の調査では、2017年の保健所・検査所での年間検査数123,432件であったのに対して、郵送検査数は99,838件まで増加していた。しかし、郵送検査の精度管理調査では、会社によって精度には差があることもわかった。
疫学的調査の分担研究では、新規感染者数と診断率の推定を地域別で実施した。HIV感染と診断されている割合は、大都市を含む3地域(関東甲信越、東海、近畿)で80%以上であったが、北海道・東北と九州・沖縄では70%未満と低いことがわかった。また、未診断感染者数においては、大都市を含む3地域では減少傾向に転じているのに対して、北海道・東北と九州・沖縄では未だ増加傾向にあることも明らかになった。
地方診療所の現状把握を目的として、仙台市内クリニックのアンケート調査も行った。その結果より、地方診療所においてHIV抗体検査を奨めていくには1)HIV感染症についての関心度を高め、診療科の違いによる認識差を縮めること、2)検査のハードルをさげること、3)曝露時の迅速な対応を可能にすることが必要と考えられた。
MSMを対象とした研究では、台東保健所に協力によってMSM向けの検査相談会を実施した結果、即日結果返却、検査時間、予約不要、アクセスの良い場所、ゲイ向けSNSアプリなども利用した広報によって、リスクの高い層の受検を促すことがわかった。また、他の分担研究では、新たな検査方法として、NPO法人による検査会における自己採血によるHIV検査も試みられている。
全国地方衛生研究所のアンケートと精度管理調査では、衛生研究所におけるHIV検査技術の維持・向上には、地研ネットワークの強化、定期的なHIV精度管理の実施やHIV検査技術研修会の必要性が示された。
また、新規HIV診断試薬であるGeenius HIV-1/2 Confirmatory Assayの性能評価を行い、今後のHIV検査ガイドライン改定のための準備をすすめることができた。
郵送検査の調査では、2017年の保健所・検査所での年間検査数123,432件であったのに対して、郵送検査数は99,838件まで増加していた。しかし、郵送検査の精度管理調査では、会社によって精度には差があることもわかった。
疫学的調査の分担研究では、新規感染者数と診断率の推定を地域別で実施した。HIV感染と診断されている割合は、大都市を含む3地域(関東甲信越、東海、近畿)で80%以上であったが、北海道・東北と九州・沖縄では70%未満と低いことがわかった。また、未診断感染者数においては、大都市を含む3地域では減少傾向に転じているのに対して、北海道・東北と九州・沖縄では未だ増加傾向にあることも明らかになった。
地方診療所の現状把握を目的として、仙台市内クリニックのアンケート調査も行った。その結果より、地方診療所においてHIV抗体検査を奨めていくには1)HIV感染症についての関心度を高め、診療科の違いによる認識差を縮めること、2)検査のハードルをさげること、3)曝露時の迅速な対応を可能にすることが必要と考えられた。
MSMを対象とした研究では、台東保健所に協力によってMSM向けの検査相談会を実施した結果、即日結果返却、検査時間、予約不要、アクセスの良い場所、ゲイ向けSNSアプリなども利用した広報によって、リスクの高い層の受検を促すことがわかった。また、他の分担研究では、新たな検査方法として、NPO法人による検査会における自己採血によるHIV検査も試みられている。
全国地方衛生研究所のアンケートと精度管理調査では、衛生研究所におけるHIV検査技術の維持・向上には、地研ネットワークの強化、定期的なHIV精度管理の実施やHIV検査技術研修会の必要性が示された。
また、新規HIV診断試薬であるGeenius HIV-1/2 Confirmatory Assayの性能評価を行い、今後のHIV検査ガイドライン改定のための準備をすすめることができた。
結論
本研究班によって構築されていく、地域の自治体の特徴に合わせた検査体制モデルは、研究と同時に実効性をもった事業としても機能するように計画されている。本研究の成果によって、日本の各検査における今後の方向性に対する提言を示され、我が国の現状に合った質の高い検査体制の整備につながっていくことが期待される。そして、このように整備されていく検査体制は、これからの長期的な戦略のひとつとなって、HIV感染者の早期診断に寄与していくはずである。
公開日・更新日
公開日
2019-06-24
更新日
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