我が国の感染症対策のセンター機能の強化に向けた具体的方策についての研究

文献情報

文献番号
201818029A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国の感染症対策のセンター機能の強化に向けた具体的方策についての研究
課題番号
H30-新興行政-指定-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
倉根 一郎(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所)
  • 大石 和徳(富山県衛生研究所)
  • 押谷 仁(東北大学 大学院 医学系研究科)
  • 調 恒明(山口県環境保健センター)
  • 中嶋 建介(長崎大学 感染症共同研究拠点 施設・安全管理部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国際的に脅威となる感染症の発生に対し、感染症対策の強化が必要であるが、我が国の感染症対策の科学技術基盤を担う国立感染症研究所においても施設の老朽化や3庁舎に分かれていることによる非効率性等の問題がある。我が国の感染症対策の課題を整理し、機能強化が必要な事項を検証するとともに強化のビジョンを提示する。国全体としての感染症対策強化、その科学的基盤を担う国立感染症研究所強化の方向性やビジョンが示されることにより、国民の健康、安全安心の確保、公衆衛生の一層の向上が達成される。
研究方法
以下の感染症対策における各事項(1)より高度な管理が求められる病原体等の検査・診断体制の整備及び強化(2)感染症サーベイランス、データ分析・解析の高度化に関する研究(3)薬剤耐性(AMR)研究の強化(4)ワクチン・血液製剤の検定・品質管理及び新規ワクチンの開発推進等(5)国立感染症研究所の研究基盤の強化、について、各研究分担者がそれぞれの専門分野における先行研究の成果や文献、専門家からの情報収集などをもとに感染症に関する国内外の現状や課題を整理する。体制面及び設備・施設面の両面から検証し、設備・強化の具体案を検討する。
結果と考察
海外BSL-4施設の分析や国内外の感染症対策の課題など、次の(1)~(7)について整理し、検討した。(1)国際的動向から見た我が国の課題 世界保健機関(WHO)や米国CDCなどのガイドライン等のレビューを行い、近年の感染症危機管理の考え方をまとめた。また、WHOが実施した日本の合同外部評価の結果から明らかとなった日本の課題について整理した。さらに、改訂された国際保健規則(IHR)であるIHR2005に基づく新しい感染症危機管理についての国際的な考え方をまとめた。(2)より高度な管理が求められる病原体等の検査・診断体制の整備及び強化 2014年以降、一類感染症が非流行国で発生した事例においてBSL-4施設が果たした役割等について4か国の海外事例から検証した。また、最近新たに整備された中国をはじめ世界各国のBSL-4施設の機能、立地条件等の調査研究を開始した。現在、整備が進められている長崎大学のBSL-4施設の稼働が可能となった場合、国立感染症研究所BSL-4施設との連携についても海外各国の考え方や状況を参考に考えていく必要がある。(3)感染症サーベイランス、データ分析・解析の高度化に関する研究 現在運用されている感染症発生動向調査(NESID)のデータ分析・解析を行う上での課題を整理し、現在すでに運用されている他のサーベイランスシステムとの連携強化の必要性や数理モデル等の手法を取り入れた疫学研究の高度化、研究体制の強化の重要性が確認された。(4)薬剤耐性(AMR)研究の強化 我が国のAMRアクションプランを遂行するにあたっての問題点が整理された。薬剤耐性菌の院内感染調査事例をもとに日本のアウトブレーク対応の課題について検討した。院内感染対策サーベイランス(JANIS)とNESIDとの連携による解析など薬剤耐性研究体制の強化についても検討した。(5)ワクチン・血液製剤の検定・品質管理及び新規ワクチンの開発推進等 ワクチン等の品質管理に関係する現在進行中の他の研究の動向も踏まえ、国立感染症研究所に期待される役割の整理を進めている。ワクチン副反応サーベイランスの質の向上を図るためのシステム改善の検討がなされた。(6)国立感染症研究所と地方衛生研究所等間の連携 レファレンス体制の強化等を図るため、国立感染症研究所と地方衛生研究所等間の連携、ネットワーク等の課題について検討した。地衛研における検査の精度管理や次世代シークエンサーを用いた検査ネットワーク等についてアンケート調査等をもとに問題点の抽出を行った。(7)国立感染症研究所の研究基盤の強化 国立感染症研究所が担っている予防接種やサーベイランス関連業務の増加、予防医学の一層の推進のための体制・基盤の構築や強化について検討を進めた。また、上記(2)の海外事例も参考にして、国内で一類感染症が発生した場合に国立感染症研究所が果たすべき役割や課題等についても検討した。国立感染症研究所の3庁舎分散や老朽化の課題を共有し、BSL-4施設を含めた感染研全体の施設に関する課題の整理を開始した。
結論
我が国の感染症対策を強化していくため、感染症対策の柱である(1)高度な管理が求められる病原体等の検査・診断体制の整備(2)感染症サーベイランスの整備(3)薬剤耐性対策(4)ワクチン等の品質管理体制の整備(5)国立感染症研究所の研究基盤整備及び地方衛生研究所との連携、につき現状の整理・評価と各事項における国際動向も考慮に入れた問題点の抽出がなされた。本年度の研究結果は次年度における、我が国の感染症対策整備・強化等の提案のための基盤となる。

公開日・更新日

公開日
2019-06-07
更新日
2020-08-03

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201818029Z