文献情報
文献番号
201818027A
報告書区分
総括
研究課題名
HPVワクチンの安全性に関する研究
課題番号
H30-新興行政-指定-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
研究分担者(所属機関)
- 斉藤 和幸(国立成育医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
23,727,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン(以下ワクチン)接種後に「広範な疼痛や運動障害を中心とする多様な症状」が生じた患者が報告され、積極的な接種勧奨が差し控えられている。2015-2017年度厚生科学研究「子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究(研究代表者:祖父江友孝)」の「症例フォローアップ調査」では、ワクチン接種後に多様な症状を生じた患者51名について平均9.1か月における日常生活、症状の変化等についての解析が行われたが、長期的な経過は明らかになっていない。
本研究ではワクチン接種後に有害事象が生じ医療機関受診歴のある者のうち同意を得た者を対象とし、患者個人から臨床情報を入手する縦断的Webアンケート調査によってワクチン接種後に有害事象が発生した患者における長期的な症状経過や予後を把握し、また患者ニーズを把握することを主な目的とする。
またHPVワクチン接種後の有害事象を呈する患者の発現様式と症状の推移に関して、その成因を明らかにする目的で、信州大学病院を受診した当該女性患者について脳神経医学の面からの解析を行い、加えてHPVワクチン接種後の有害事象を的確に把握するための生物学的マーカーの検索を行う。
本研究ではワクチン接種後に有害事象が生じ医療機関受診歴のある者のうち同意を得た者を対象とし、患者個人から臨床情報を入手する縦断的Webアンケート調査によってワクチン接種後に有害事象が発生した患者における長期的な症状経過や予後を把握し、また患者ニーズを把握することを主な目的とする。
またHPVワクチン接種後の有害事象を呈する患者の発現様式と症状の推移に関して、その成因を明らかにする目的で、信州大学病院を受診した当該女性患者について脳神経医学の面からの解析を行い、加えてHPVワクチン接種後の有害事象を的確に把握するための生物学的マーカーの検索を行う。
研究方法
1.HPVワクチン接種後に生じた症状の経過とニーズを探索する縦断的観察研究(岡部、斉藤、池田)
HPVワクチン接種後に有害事象が生じた患者であって医療機関受診歴のある者のうち同意を得た者を対象とし、患者個人から臨床情報を入手する縦断的Webアンケート調査を行う。調査項目は、先行研究である祖父江班の調査項目を基本として、より入力と解析が簡便になるよう調査項目の一部分と調査回数について再検討を行い、ウェブアンケートシステムの構築を行う。
2.HPVワクチン接種後の有害事象を呈する患者の発現様式と症状の推移に関する
脳神経医学の面からの解析(池田)
ワクチン接種後の有害事象を呈する患者の発現様式と症状の推移に関して、脳神経医学の面からの解析をし成因を明らかにすることを目的として、2013年7月~2018年10月までにHPVワクチン接種後の有害事象の疑いで信州大学病院を受診した患者の数と症状を分析する。HPVワクチン接種後の有害事象を的確に把握するための生物学的マーカーの検索も行う。
HPVワクチン接種後に有害事象が生じた患者であって医療機関受診歴のある者のうち同意を得た者を対象とし、患者個人から臨床情報を入手する縦断的Webアンケート調査を行う。調査項目は、先行研究である祖父江班の調査項目を基本として、より入力と解析が簡便になるよう調査項目の一部分と調査回数について再検討を行い、ウェブアンケートシステムの構築を行う。
2.HPVワクチン接種後の有害事象を呈する患者の発現様式と症状の推移に関する
脳神経医学の面からの解析(池田)
ワクチン接種後の有害事象を呈する患者の発現様式と症状の推移に関して、脳神経医学の面からの解析をし成因を明らかにすることを目的として、2013年7月~2018年10月までにHPVワクチン接種後の有害事象の疑いで信州大学病院を受診した患者の数と症状を分析する。HPVワクチン接種後の有害事象を的確に把握するための生物学的マーカーの検索も行う。
結果と考察
主任研究者、分担研究者、研究協力者、厚生労働省等と綿密に連携し、研究実施計画書を作成し、アンケート調査同意書、調査票、研究参加登録の呼びかけのためのパンフレットなど案を作成した。研究実施計画作成後、ウェブアンケートシステムの構築を行った。
WHO予防接種の安全性に関する国際顧問委員会(GACVS)、WHO西太平洋地域(WPR)における予防接種で予防できる感染症に関する専門家会議(TAG Meeting)に出席し情報収集し、また各国の担当者、専門家と情報交換した。
信州大学の調査では、有害事象の主な症状は高度な全身倦怠感、酷い頭痛、四肢・体幹の疼痛、四肢の運動麻痺、知覚過敏、手足の振るえ、学習障害、睡眠異常、月経異常であるが、最近2年間で受診した患者の主症状は全身倦怠感と酷い頭痛が多かった。自律神経受容体に対する自己抗体をELIZA法で検出する方法の開発に着手した。
・平成31年度(2019年度)からのアンケート調査開始に向け、研究実施計画書の作成、倫理審査委員会の実施許可取得、ウェブアンケートシステムの構築、実施体制整備といった研究実施に係る基盤構築を行った。平成31年度(2019年度)より実際にデータ収集を開始するが、研究参加者への公知等解決すべき課題・未解決点はまだ多くあり、引き続き円滑な研究実施に向けた手当て、調整を行っていく必要がある。
・HPVワクチン接種後の有害事象と言われている症状を呈する患者の発現様式と症状の推移からすると、両者の因果関係が疑われるものもあると考えられる。こうした患者の症状発現機序は自律神経障害、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、高次脳機能障害の三者の組み合わせで説明ができるものもあると思われる。これらの障害を引き起こす分子機序とその指標となる生物学的マーカーの検索が重要である。
WHO予防接種の安全性に関する国際顧問委員会(GACVS)、WHO西太平洋地域(WPR)における予防接種で予防できる感染症に関する専門家会議(TAG Meeting)に出席し情報収集し、また各国の担当者、専門家と情報交換した。
信州大学の調査では、有害事象の主な症状は高度な全身倦怠感、酷い頭痛、四肢・体幹の疼痛、四肢の運動麻痺、知覚過敏、手足の振るえ、学習障害、睡眠異常、月経異常であるが、最近2年間で受診した患者の主症状は全身倦怠感と酷い頭痛が多かった。自律神経受容体に対する自己抗体をELIZA法で検出する方法の開発に着手した。
・平成31年度(2019年度)からのアンケート調査開始に向け、研究実施計画書の作成、倫理審査委員会の実施許可取得、ウェブアンケートシステムの構築、実施体制整備といった研究実施に係る基盤構築を行った。平成31年度(2019年度)より実際にデータ収集を開始するが、研究参加者への公知等解決すべき課題・未解決点はまだ多くあり、引き続き円滑な研究実施に向けた手当て、調整を行っていく必要がある。
・HPVワクチン接種後の有害事象と言われている症状を呈する患者の発現様式と症状の推移からすると、両者の因果関係が疑われるものもあると考えられる。こうした患者の症状発現機序は自律神経障害、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、高次脳機能障害の三者の組み合わせで説明ができるものもあると思われる。これらの障害を引き起こす分子機序とその指標となる生物学的マーカーの検索が重要である。
結論
・HPVワクチンの安全に関する研究を実施するための研究実施基盤を構築できた。
・HPVワクチン接種後の有害事象を呈する患者の発現様式と症状の推移に関して、脳神経医学の面からの解析をした。その結果、最近2年間は同症状を訴えて受診する患者が減少しており、また主訴となる症状も変化していることが判明した。HPVワクチン接種後に見られた有害事象を引き起こす可能性のある分子機序とその指標となる生物学的マーカーの検索が重要である。
・HPVワクチン接種後の有害事象を呈する患者の発現様式と症状の推移に関して、脳神経医学の面からの解析をした。その結果、最近2年間は同症状を訴えて受診する患者が減少しており、また主訴となる症状も変化していることが判明した。HPVワクチン接種後に見られた有害事象を引き起こす可能性のある分子機序とその指標となる生物学的マーカーの検索が重要である。
公開日・更新日
公開日
2022-04-25
更新日
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