特別児童扶養手当等(精神の障害)の課題分析と充実を図るための調査研究

文献情報

文献番号
201817042A
報告書区分
総括
研究課題名
特別児童扶養手当等(精神の障害)の課題分析と充実を図るための調査研究
課題番号
H29-精神-指定-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
齊藤 万比古(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会愛育研究所 児童福祉・精神保健研究部/愛育相談所)
研究分担者(所属機関)
  • 本田 秀夫(信州大学医学部子どものこころの発達医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,297,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2年間にわたる本研究の2年目にあたる平成30年度は、第1に各認定診断書作成医と自治体認定医が判断しやすいようメリハリのある特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)及び障害児福祉手当認定診断書(精神の障害用)の様式改訂案を初年度の検討を踏まえて完成させることを目指した。第2に特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)様式改訂案の作成にあたり、診断書作成医(かかりつけ医)ができる限り詳細かつ具体的に診断書を作成するための指針や留意事項を示した作成要領を完成させることを目指した。そして第3に特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)様式改訂案とその作成要領を用いたサンプル調査を実施し、特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)様式改訂案の妥当性と信頼性に関して検証することを目指した。
研究方法
特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)様式改訂案は平成29年度の結果としてその暫定案を作成しており、平成30年度にはさらに班会議等で検討を重ね最終的にサンプル調査用様式を作成した。サンプル調査については企画および調査の実施は研究班を挙げて行い、平成30年度に新たに立ち上げた分担研究を担う本田秀夫研究分担者等が調査結果の集計と解析を行った。その結果と考察から最終的に特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)様式改訂案とその作成要領を完成させ、さらにそれらに準拠した障害児福祉手当認定診断書(精神の障害用)様式改訂案を完成させた。「倫理面への配慮」は以下のとおりである。1年目に行った日本児童青年精神医学会医師会員を対象に2年目実施予定のGoogleフォームを介した本調査への協力の意志を問う郵送によるアンケート調査は、日本児童青年精神医学会の規定により学会事務局(土倉事務所)に委託し実施した。なお、この調査に関しては愛育研究所倫理委員会の審査を受け承認されている。2年目の本調査はGoogleフォームを用いた調査であること、架空の模擬症例に関する評価を求めるものであることなどの調査の全容を開示した上で、調査開始前に愛育研究所及び信州大学の各倫理委員会での審査と承認を受けた。
結果と考察
本研究の平成30年度に行ったサンプル調査の対象は,1年目の平成30年3月に実施した日本児童青年精神医学会医師会員に調査への協力を求めるアンケート調査でサンプル調査への協力を表明し、さらに2年目に入りGoogleフォーム上の調査であることを説明されたうえで協力の意志を再び表明した345名である。同時に研究班は、ICD-10の F7(知的障害)、F8(心理的発達の障害)、F9(小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害)の3障害群を軽度、中度、重度、最重度の4重症度に分類した12グループの各々について架空の模擬症例作成に取り組み、13ケース(F8中度のみ2ケース、他は各1ケース)の模擬症例を作成した。この13模擬症例を345名の調査参加者に無作為に割り振り、それについてGoogleフォーム上の診断書様式案入力用フォームへ記入することを求めた。その結果、F7の軽度18名、中度16名、重度20名、最重度20名、F8の軽度19名、中度29名(2ケースの合計)、重度18名、最重度18名、F9の軽度18名、中度18名、重度18名、最重度16名の計228名の有効回答を得た。これらの集計・解析の結果、診断書様式案の医学的総合判定に記載された重症度には一定の妥当性と信頼性があること、さらに重症度とは別に診断書案で記載を求めた現症の要注意度にも一定の妥当性と信頼性がみられること、重症度と要注意度の間には有意な正の相関がみられること、しかしF9を中心に関連が複雑なものもあり、等級の判定には重症度と要注意度の両者を総合して行う必要性が示唆された。このサンプル調査の結果と、フォームへの入力終了後の感想を入力する自由記述欄にある回答者の診断書様式案への意見を検討し、最終的な特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)様式改訂案及びその作成要領案、さらにこの診断書様式案から派生的に作成される障害児福祉手当認定診断書(精神の障害用)様式改訂案を完成させた。
結論
平成30年度は、先年度より一貫して研究班で作成にあたった特別児童扶養手当認定診断書様式改訂案(知的障害・精神の障害用)とその作成要領を用いたサンプル調査に取り組み、上記診断書様式案の一定の妥当性と信頼性を示すことができた。その結果上記診断書様式案とその作成要領の完成版、そしてそれらを利用した障害児福祉手当(福祉手当)認定診断書様式改訂案(精神の障害用)の完成版を作成した。

公開日・更新日

公開日
2019-08-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201817042B
報告書区分
総合
研究課題名
特別児童扶養手当等(精神の障害)の課題分析と充実を図るための調査研究
課題番号
H29-精神-指定-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
齊藤 万比古(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会愛育研究所 児童福祉・精神保健研究部/愛育相談所)
研究分担者(所属機関)
  • 本田 秀夫(信州大学医学部子どものこころの発達医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成29年度及び平成30年度と2年間にわたって実施した本研究は、第1に各認定診断書作成医と自治体認定医が判断しやすいようなメリハリのある「特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)」及び「障害児福祉手当(福祉手当)認定診断書(精神の障害用)」の様式改訂案を、初年度にその問題点を洗い出し、2年度に入りさらに検討と推敲を重ねることで完成させることを目指した。第2に診断書作成医(かかりつけ医)が特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)様式改訂案の作成にあたり記載指針や留意事項を具体的に解説した「作成要領」を完成させることを目指した。第3に同様式改訂案とその作成要領を用いたサンプル調査を実施し、同様式改訂案の妥当性と信頼性を検証することを目指した。
研究方法
本研究班は平成29年度には研究代表者と7名の研究協力者(本田秀夫、野邑健二、吉川 徹、山田佐登留、小平雅基、早川 洋、篠山大明)で現行特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)様式の持題点を洗い出し、年度末にはその暫定様式改訂案を作成した。平成30年度にはさらに班会議等で検討を重ね、サンプル調査に用いる同様式入力用フォームを作成した。これを用いたサンプル調査については企画および調査の実施は研究班を挙げて行い、平成30年度に新たに立ち上げた分担研究を担う本田秀夫研究分担者及び篠山大明研究協力者が調査結果の集計と解析を行った。このサンプル調査の結果と考察を反映させることで特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)様式改訂案とその作成要領を完成させ、さらにそれらに準拠した障害児福祉手当(福祉手当)認定診断書(精神の障害用)様式改訂案を完成させた。「倫理面への配慮」として、1年目に行った日本児童青年精神医学会医師会員を対象に2年目実施予定のサンプル調査への協力の意志を問う郵送によるアンケート調査は、日本児童青年精神医学会事務局(土倉事務所)に委託し実施した。なお、この調査に関しては愛育研究所倫理委員会の審査を受け承認されている。2年目のサンプル調査は、1年目のアンケート調査で協力を表明した回答者にGoogleフォームを用いた調査であること、架空の模擬症例に関する評価を求めるものであること等の調査の全容を開示した上で調査への同意を再度得るとともに、愛育研究所及び信州大学の各倫理委員会における審査と承認を受けた。
結果と考察
平成29年度には、現行特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)様式の問題点として、現症の「知的障害等」として発達障害である「特異的発達障害」や後天性疾患である「高次脳機能障害」が挙げられているため混乱が生じやすいこと、「発達障害関連症状」にはICD-10で言う「広汎性発達障害」の症候しか挙げられておらず、「特異的発達障害」(いわゆる学習障害)や「多動性障害」といった他の発達障害の現症が記載しにくいこと、発達障害に合併し状態像を修飾するトラウマ症状などの精神症状や問題行動が挙げられていないこと、あるいは未整理であることなどを洗い出した。これらの問題点や課題を踏まえ、平成29年度末には「特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)様式改訂案」の暫定案とその「作成要領案」を作成し、この診断書様式案に準じて「障害児福祉手当認定診断書(精神の障害用)様式改訂案」を作成した。平成30年度には、特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)様式改訂案を用いたサンプル調査を実施し、同診断書様式案の信頼性と妥当性を検討した。サンプル調査の対象は、日本児童青年精神医学会の特別児童扶養手当認定診断書作成経験を持つ医師会員で、Googleフォームを用いた調査であることを示された上で協力の意志を表明した345名である。この345名に研究班で作成した模擬症例計13ケースを無作為に割り振り、回答を求めた。そこで得られた228名の有効回答を集計・解析した結果、上記診断書様式案の医学的総合判定に記載された「重症度」には一定の妥当性と信頼性がみられること、現症の「要注意度」にも一定の妥当性と信頼性がみられること、重症度と要注意度の間には有意な正の相関がみられること等が明らかとなった。同時に等級の判定には重症度と要注意度の両者を総合して行う必要性があること等が示唆された。
結論
2年間の研究を通じて、特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)様式改訂案及びその作成要領案、さらにこの診断書様式案に準じた障害児福祉手当認定診断書(精神の障害用)様式改訂案を完成させるとともに、サンプル調査を通じて特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)様式改訂案に一定の妥当性と信頼性の存在することが示された。

公開日・更新日

公開日
2019-08-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201817042C

収支報告書

文献番号
201817042Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,286,000円
(2)補助金確定額
4,286,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,337,841円
人件費・謝金 1,142,204円
旅費 507,272円
その他 309,683円
間接経費 989,000円
合計 4,286,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-06-09
更新日
-