高次脳機能障害の障害特性に応じた支援マニュアルの開発のための研究

文献情報

文献番号
201817036A
報告書区分
総括
研究課題名
高次脳機能障害の障害特性に応じた支援マニュアルの開発のための研究
課題番号
H30-精神-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院 臨床研究開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 平山 信夫(東京都心身障害福祉センター)
  • 浦上 裕子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 今橋 久美子(藤田 久美子)(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 上田 敬太(京都大学医学部附属病院 精神科神経科)
  • 青木 美和子(札幌国際大学 人文学部心理学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
4,540,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高次脳機能障害者が各種障害福祉サービス利用時における対応について、実態調査及び分析を行い、事業者向けの支援マニュアルを作成し、適切な支援につなげることがこの研究の目的である。
研究方法
1)全国の高次脳機能障害支援拠点機関の調査(今橋):103機関を対象に、質問紙調査を実施。2)相談支援事業所の調査(平山):東京都全62区市町村に対し、管内の指定特定相談支援事業所・指定障害児相談支援事業所に、質問紙調査票を配布するよう依頼、53区市町村より803事業所に調査票を配布。3)就労系福祉サービス事業所の調査(青木):札幌市内の就労継続B型事業所337カ所を対象に、質問紙調査を実施。4)生活訓練、入所系支援および生活介護等に関する調査(上田);同機能を持つ京都市地域リハビリテーション推進センターにおける平成29年度の高次脳機能障害に関する新規相談248件について分析。5)高齢高次脳機能障害者に関する調査(浦上):国立障害者リハビリテーションセンター病院外来通院中の、発症時40~70歳、発症から1年以上経過する患者52名に聞き取り調査を実施。
結果と考察
1)50個所より回答。障害福祉サービスの利用が困難だった事例は167件あり、就労継続支援B型が39件と最多、自立訓練(28件)、就労移行支援(21件)と続き、訓練等給付に関する課題が主。2)267ヶ所より回答。平成29年度に高次脳機能障害児・者に相談支援を提供した事業所は141個所で、利用者は1,213人、うち診断をうけている者は888人。計画相談支援を提供した高次脳機能障害児・者は632人で、うち診断をうけている者は452人。利用開始した障害福祉サービスは就労系が44.5%、訪問系34.6%、自立訓練27.7%。児童は放課後等デイサービスが81.5%。ニーズはあったが、障害福祉サービス利用につながらなかった事例は139件で、就労系サービス32件が最多。事業所が配慮、工夫している点は「本人・家族へのわかりやすい説明、確認」「易疲労性への配慮」「本人・家族の障害認識、現状認識の把握」など。課題は「利用できる事業所の少なさや地域間格差」「事業所等への普及啓発の促進」「相談支援事業所対象の研修」など。3)141カ所から回答。高次脳機能障害の利用者がいる事業所は51カ所(36.2%)で利用者数は112名。作業における問題点としては、注意障害に関する点が多く挙げられたが、それぞれの事業所が配慮や環境調整を工夫。また社会的行動障害に関する対応に多くの事業所が苦慮。課題として「支援・対応方法についてなどの学習の機会」を最多に挙げ受け入れを検討する条件として「高次脳機能障害に関する知識・情報の取得」が最多。4)相談者は65歳未満が196件(79%)。介護保険対象者は133件。入所施設利用時の問題点として、重度身体障害事例への対応、施錠など記憶障害事例への対応など。5)障害者手帳は44名が取得、障害者雇用で一般就労が8名、就労移行支援1名、就労継続B型4名。2名が行動援護を利用。介護保険は20名が申請、通所介護11名、施設入所2名、居宅介護3名が利用。障害福祉サービス、介護保険サービスの両方を利用せず在宅生活を送る者が10名。
結論
高次脳機能障害の支援について、全都道府県に支援拠点機関が設置され制度上の整備は進んだが、その調査により運用面において障害福祉サービス利用困難な事例が多くいることが明らかとなり、今後も集積・分析し、現行制度拡充が必要である点を明らかにしたい。相談支援事業所調査で、高次脳機能障害児・者の相談があった事業所は52.8%である。区市町村レベルの相談体制づくりで先進的である東京都においても、いまだ半数の事業所が相談を受けてないことは大きな課題である。来年度は滋賀県で同様の調査を行う。高次脳機能障害児・者の利用があった就労継続B型事業所は36.2%であり、2009年調査(10.1%)より増加している。来年度は就労移行、継続A型事業所調査を行う。京都市地域リハビリテーション推進センターの新規相談および国立障害者リハビリテーションセンター病院外来患者の実態調査では、社会参加に向けて障害福祉サービスと介護保険サービスの利用に関する課題が明らかになった。来年度はさらに大規模な当事者調査を予定している。

公開日・更新日

公開日
2019-08-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-09-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201817036Z