重度かつ慢性の精神障害者に対する包括的支援に関する政策研究-関連研究班の統括・調整研究

文献情報

文献番号
201817029A
報告書区分
総括
研究課題名
重度かつ慢性の精神障害者に対する包括的支援に関する政策研究-関連研究班の統括・調整研究
課題番号
H29-精神-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
安西 信雄(帝京平成大学大学院 臨床心理学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮田 量治(地方独立行政法人山梨県立北病院)
  • 木田 直也(国立病院機構琉球病院)
  • 岩田 和彦(地方独立行政法人大阪精神医療センター)
  • 吉川 隆博(東海大学健康科学部看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
1,270,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新規入院患者を「重度かつ慢性」に至らせることなく早期に退院させることができる、また「重度かつ慢性」の基準を満たす精神障害者でも入院から地域に移行できるための包括的支援ガイドラインを開発することが目的である。統括調整班は5つの研究班が協力して調査を実施できるように、各班共通のアンケート調査の実施と検討の幹事役を担う班である。
研究方法
1)第一次アンケートとして、好事例二次医療圏に属する病院および2014-5年度調査の協力病院の合計315病院を対象に2016年4月1日時点で入院期間が1年を超過していた患者(主診断が認知症を除く)のうち、2017年3月31日までに退院した患者について、診断や年齢性別、入院期間、入院が長期化した理由とともに、退院先、退院に資した主な治療、利用した制度などを調査した。2)これまでに実施した全国の病院や地域のヒアリング結果と第一次アンケート結果を踏まえて好事例病院の基準を設定した。3)好事例病院とその他の病院を比較し、好事例の要因を抽出した。4)これらの結果をもとに好事例に関する第二次アンケートを作成し、好事例病院に各要因の実施状況の評価を依頼した。5)薬物療法班とクロザピン班では独自の調査を行った。6)「重度かつ慢性」に関する8つの典型例のケースビネットを作成し好事例病院に属する経験豊富な医師から回答を得た。⑦これらの結果にもとづき、実践ガイドを作成した。
結果と考察
(1)好事例病院の基準を下記のAを満たし、BとCのどちらか(または両方)を満たす病院とした(A. 新規入院患者の1年後までの退院率が高い(全国中央値89.3%以上)、B. すでに1年を超えて在院している患者の1年後までの居宅系退院率が高い(参考値8.4%以上)、C. 在院患者中の1年を超える患者の占める率が低い(全国中央値61.4%以下))。第一次アンケートに回答をいただいた52病院のうち20病院が好事例に該当した。そこで好事例20病院とその他の30病院を比較検討した。
(2) 52病院から回答された約1000人のうち「病状等が重症または不安定であった」ため1年以上在院したのち退院した患者は797人(在院5年以上が46.4%)であった。これらの患者について好事例病院とその他の病院を比較したところ、クロザピン療法実施率や地域移行加算取得率などで好事例病院の方がその他の病院より有意に実施率が高かった。
(3)好事例に関連すると考えられる要因を第2次アンケートにまとめ、好事例20病院で実施状況を調査した。
(4)「重度かつ慢性」の典型例8類型のケースビネットを作成し、好事例病院に所属する経験豊富な医師にアセスメントと治療/支援方法の回答を得た。
(5)好事例病院での実施率の高いものを好事例に関連する要因と考え、「重度かつ慢性」患者への包括支援実践ガイドをまとめた。
長期在院患者の中に「重度かつ慢性」患者が概ね60%程度存在することが示されているが、それらの患者に必要な治療や支援は明らかにされていなかった。今回作成された実践ガイドは、これらの患者の退院と地域移行のための実行可能で効果的な方策を示したものと考えられた。
結論
好事例病院とその他の病院を対比して検討し、好事例にむすびつく可能性のある様々な要因が見いだされた。好事例病院での実施状況の調査と各班での調査結果等を踏まえて「重度かつ慢性」患者への包括支援実践ガイドを作成した。今回作成された実践ガイドはわが国の精神科病院での実施状況を踏まえたものであり、現場で実践可能な効果的なものと思われるので、この実践ガイドの普及・活用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2019-08-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2019-08-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201817029B
報告書区分
総合
研究課題名
重度かつ慢性の精神障害者に対する包括的支援に関する政策研究-関連研究班の統括・調整研究
課題番号
H29-精神-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
安西 信雄(帝京平成大学大学院 臨床心理学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮田 量治(山梨県立北病院)
  • 木田 直也(国立病院機構琉球病院 精神科)
  • 岩田 和彦(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪精神医療センター)
  • 吉川 隆博(東海大学 健康科学部看護学科)
  • 井上 新平(社会医療法人北斗会 さわ病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新規入院患者を「重度かつ慢性」に至らせることなく早期に退院させることができる、また「重度かつ慢性」の基準を満たす精神障害者でも入院から地域に移行できるための包括的支援ガイドラインを開発することが目的である。統括調整班は5つの研究班が協力して調査を実施できるように、各班共通のアンケート調査の実施と検討の幹事役を担った。
研究方法
1)各班で病院や地域のヒアリングを実施して好事例要因を検討。2)第一次アンケートとして、好事例二次医療圏に属する病院および2014-5年度調査の協力病院の合計315病院を対象に2016年4月1日時点で入院期間が1年を超過していた患者(認知症を除く)のうち、2017年3月31日までに退院した患者について、診断や年齢性別、入院期間、入院が長期化した理由とともに、退院先、退院に資した主な治療、利用した制度などを調査。3)ヒアリング結果と第一次アンケート結果を踏まえて好事例病院の基準を設定。4)好事例病院とその他の病院を比較し、好事例の要因を抽出。5)これらの結果をもとに好事例に関する第二次アンケートを作成し、好事例病院に各要因の実施状況の評価を依頼。6)薬物療法班とクロザピン班では独自の調査を実施。7)「重度かつ慢性」に関する8つの典型例のケースビネットを作成し好事例病院に属する経験豊富な医師から回答を得た。8)これらの結果にもとづき、実践ガイドを作成した。
結果と考察
1)5つの研究班で計190箇所の病院や地域のヒアリング調査を実施して好事例要因を検討した。2)第一次アンケートとヒアリング結果等を踏まえて検討し、好事例病院の基準を下記のAを満たし、BとCのどちらか(または両方)を満たす病院とした(A. 新規入院患者の1年後までの退院率が高い(全国中央値89.3%以上)、B. すでに1年を超えて在院している患者の1年後までの居宅系退院率が高い(参考値8.4%以上)、C. 在院患者中の1年を超える患者の占める率が低い(全国中央値61.4%以下))。3)第一次アンケートに回答をいただいた52病院のうち20病院が好事例に該当した。52病院から回答された約1000人のうち「病状等が重症または不安定であった」ため1年以上在院したのち退院した患者は797人(在院5年以上が46.4%)であった。これらの患者について好事例病院とその他の病院を比較したところ、クロザピン療法実施率や地域移行加算取得率などで好事例病院の方がその他の病院より有意に実施率が高かった。
4)好事例に関連すると考えられる要因を第2次アンケートにまとめ、好事例20病院で実施状況を調査した。
5)「重度かつ慢性」の典型例8類型のケースビネットを作成し、好事例病院の経験豊富な医師に治療や支援等の回答を得た。
6)好事例病院での実施率の高いものを好事例に関連する要因と考え、「重度かつ慢性」患者への包括支援実践ガイドをまとめた。
長期在院患者の中に「重度かつ慢性」患者が概ね60%程度存在することが示されているが、それらの患者に必要な治療や支援は明らかにされていなかった。今回作成された実践ガイドは、これらの患者の退院と地域移行のための実行可能で効果的な方策を示したものと考えられた。
結論
好事例病院とその他の病院を対比して検討し、好事例にむすびつく可能性のある様々な要因が見いだされた。好事例病院での実施状況の調査と各班での調査結果等を踏まえて「重度かつ慢性」患者への包括支援実践ガイドを作成した。今回作成された実践ガイドはわが国の精神科病院での実施状況を踏まえたものであり、現場で実践可能な効果的なものと思われるので、この実践ガイドの普及・活用が期待される

公開日・更新日

公開日
2019-08-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-08-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201817029C

収支報告書

文献番号
201817029Z